COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年6月30日土曜日

【文献紹介】抜釘術から考える橈骨遠位端掌側ロッキングプレート治療における可動域制限の原因について

本日は橈骨遠位端掌側ロッキングプレート治療後に抜釘術を行い、どの術中操作が可動域の改善に関与したのかを報告している文献を紹介させていただきます。






石井ら:抜釘術から考える橈骨遠位端掌側ロッキングプレート治療における可動域制限の原因.骨折.39No.3 2017

近年、抜釘術により臨床成績が改善したとする報告が散見されているという背景から抜釘術のどの術中操作により可動域が改善するのかについて検証されています。

対象は男性7例、女性29例で抜釘まで平均327日、最終経過観察までは平均428日です。
抜釘術中に手関節、前腕の可動域を測定しています。
術中操作と可動域測定タイミングは尺骨側の抜釘時、橈骨の抜釘での展開後に尺側手根屈筋腱を剥離時、屈筋や屈筋腱剥離時、遠位ロッキングスクリューを抜釘するためプレート遠位を周囲組織と剥離した時、プレート近位部の剥離とプレート抜去時です。
健側比を麻酔下かつ展開前の可動域と比較し評価されています。

術中操作のうち、尺骨側の抜釘から橈骨側展開後に尺側手根屈筋腱まで展開した時のどちらも手関節可動域に変化はなかったと報告しています。
それ以降の操作では屈筋、屈筋腱の剥離により背屈可動域は有意に変化しており、掌屈可動域はプレート遠位部の剥離とプレート近位部の剥離、プレート抜去により有意に改善したとも報告されています。
前腕可動域について、回外はプレート近位部の剥離、プレート抜去により有意に改善し、回内も同様の操作で改善されているとのことでした。


本結果から抜釘術により可動域の改善がみられることが報告されていますが、プレート抜去目的に筋腱の剥離操作も行われていることがプレート抜去以外の可動域改善に大きく関与していることが考えられるかと思います。
このことから術後早期から筋腱の滑走操作、癒着・拘縮予防を徹底することの大切さを改めて感じました。
また、この文献では麻酔下での可動域のみ触れられていますが、実際に理学療法により改善すべきはアクティブでの可動域であると考えます。手術により改善された可動域を術後どのように維持していくのかが重要になると感じました。手術によりどのような操作が加えられたのかを知り、術後の理学療法に活かしていくことの重要性を再確認しました。




投稿者:小林 駿也

2018年6月29日金曜日

【文献紹介】腱板修復術後の再断裂発生時期と危険因子について

本日は腱板修復術後の再断裂発生時期と危険因子を調査された論文を紹介させていただきます。


腱板断裂の診断にて鏡視下腱板修復術を行った9092肩を対象とし、術後2週、3ヶ月、6ヶ月、1年にMRI撮影を行って評価されています。評価項目は腱板筋の筋萎縮と脂肪浸潤の程度、腱板の修復状態の3つです。

MRIの経時的な評価により再断裂発生時期を調査し、さらに大断裂・広範囲断裂例を対象として修復群と再断裂群の比較検討を行うことで再断裂の危険因子を明らかにされています。

対象(92肩)の約15%に再断裂が認められ、再断裂例のうち約70%が術後3ヶ月以内に発生し、危険因子は利き手、棘上筋の筋萎縮と脂肪浸潤だと報告されていました。

 
 修復過程や時期を念頭に置いて治療をすすめていきますが、患者さんへの指導も再断裂の予防において大切だと思います。患者さんが納得する説明ができるのも上手に治療をすすめていくために必要なスキルだと日々感じ精進しています。方法はいろいろありますが、このような研究結果を利用するのも1つの手だと思いました。


 
投稿者:佐々木拓馬

2018年6月27日水曜日

【文献紹介】鎖骨短縮変形が肩甲骨運動に及ぼす影響について

本日は鎖骨短縮変形が肩甲骨運動に及ぼす影響について報告されている文献を紹介させていただきます。





松村ら:鎖骨短縮変形が肩甲骨運動に及ぼす影響-どの程度の短縮が許容されるのか?-:屍体肩を用いた研究.骨折 第33NO.1 2011


この文献では献体6体、12肩を用いられています。
創外固定器を用いて0%、5%、10%、15%、20%の鎖骨短縮変形モデルを作製されています。
30°~120°までの肩関節屈曲および外転運動における肩甲骨運動を観察し、鎖骨短縮0%をコントロール群とし、他の4(5%、10%、15%、20)と比較されています。

10%以上の鎖骨短縮により肩甲骨の外旋運動は減少したと報告しています。
また、鎖骨短縮に伴い、肩甲骨は内方へと傾斜していく。鎖骨短縮と肩関節挙上が増加するほど肩甲骨後方傾斜が障害されることも報告されています。
鎖骨短縮により唯一障害されなかったものとして肩甲上腕リズムが挙げられています。

この文献から鎖骨の短縮変形により肩甲骨運動がどの程度障害されるのかが分かりました。
10%以上(14-20mm以上)の鎖骨短縮により肩甲骨運動に異常が生じるとされていることから臨床上稀かもしれないですが画像所見、既往歴の確認などする必要もあるのかと思います。また、当然ではありますが、骨折部位の転位、離開に気を付け、どのようなメカニカルストレスにより骨折したのか考えて理学療法を行う必要があると再認識しました。

今回は鎖骨の短縮変形について調べられていましたが、骨折部位の回旋変形など他の変形による影響は含まれていません。また、屍体を用いていることから筋など軟部組織の影響もなく実際の症例では異なる状態になる可能性があるかと思います。
三次元的に解剖学を捉え、考えていく必要があると思いました。


投稿者:天鷲翔太              

【文献紹介】撓骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート固定術後の長母指屈筋腱断裂

今回は、撓骨遠位端骨折に対してロッキングプレート固定が施工され、術後に長母指屈筋腱(以下FPL)が断裂した症例について検討されている文献を紹介させていただきます。



三原惇史他:撓骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート固定術後の長母指屈筋腱断裂.整形外科と災害外科.63(1)47-50.2014


 筆者は3症例提示されており、いずれの症例も撓骨遠位端骨折後に掌側ロッキングプレートによる固定を施工されています。術後平均17.5ヶ月後にFPLを断裂されており、それぞれに対して腱移行術(長掌筋腱or環指浅指屈筋腱)を施工されていました。3症例とも、腱移行術後の可動域改善は良好とされていました。


 FPL断裂は撓骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートによる固定術を行われた患者様の合併症として、諸家によって多数報告されています。原因としては、プレートの遠位設置や整復不良など複数の報告が散見されます。また、プレートの遠位設置は橈骨のwatershed lineより遠位に設置することで、直接FPLと接触し、疼痛を惹起するという報告も見受けられます。また、FPL断裂の前駆症状として、手関節掌側部の違和感や疼痛を訴える場合や、これらの症状を伴わない、無症候性の場合もあるとされています。


 中にはこれらに対して、骨癒合後の早期抜釘により、FPL断裂を防ぐことが可能ではないかと報告されている方もいらっしゃいます。しかし、撓骨遠位端骨折の関節内骨折の骨癒合時期は約56週という報告もあることから、理論上抜釘を行うには、少なくとも術後約2ヶ月後となることは容易に考えられます。この期間骨癒合を最優先し、何も動かさないとなると、手関節の拘縮が生じるのは目に見えています。


 以上のことから、掌側ロッキングプレートを施工された場合、FPL断裂のリスクを第一に考えると、術後のFPL拘縮予防や、周辺軟部組織との癒着は必ず行うべき理学療法だと考えられます。


 FPLは手根管内を走行し、深指屈筋や浅指屈筋、橈側手根屈筋など多くの軟部組織と密接していることに加え、筋腱移行部周辺では方形回内筋などの軟部組織とも密接しています。掌側ロッキングプレートによる固定では、これらの軟部組織にも影響が生じるため、FPLとの癒着予防も大事になってくることが考えられます。


今後も、術後に起こりうる合併症をどのようにして理学療法によって予防・改善できるのかを深く考察していきたいと思います。



投稿者:高橋 蔵ノ助

2018年6月26日火曜日

【文献紹介】変形性膝関節症における脛骨回旋可動域と屈曲・伸展可動域・疼痛・JOA scoreとの関連性について

本日は変形性膝関節症における脛骨回旋可動域と屈曲・伸展可動域・疼痛・JOA scoreとの関連性について文献紹介させていただきます。

膝関節屈曲・伸展運動時には脛骨の内旋・外旋する事は周知の事実です。また、脛骨の回旋によって関節面の適合性を高め、膝関節が安定するとも言われており、変形性膝関節症患者において下腿の回旋可動性は制限されると報告されています。しかし、下腿の内旋・外旋可動性がどの程度関節可動域に影響を与えているかは一定の見解が得られていません。今回の文献ではこれらの関連性について明らかにしていましたので紹介させていただきます。

方法
膝OA患者26名40膝(男性9例、女性17例、平均年齢75.1±4.9歳)。K-L分類に関してはgrade1が1膝、grade2が23膝、grade3が9膝grade5が5膝で行っていました。疼痛をNRSにて評価、膝関節機能評価はJOA–scoreにて評価しており、測定肢位は
①端座位にて股関節屈曲90°・内旋外旋0°膝屈曲90°にて実施
②端座位にて股関節屈曲90°・内旋外旋0°膝屈曲30°にて実施
第2趾の延長上を移動軸として回旋可動域を測定、回旋可動域と疼痛・JOA –score・膝関節屈伸可動域の相関関係について検討していました。

結果
①膝関節90°屈曲位:内旋13.3±4.9°、外旋16.8±4.4°
②膝関節30°屈曲位:内旋7.8±3.2°、外旋10.8±3.0°
膝関節30°・90°での回旋可動域、膝屈伸可動域、30°での脛骨内旋可動域とNRS、JOA– scoreに有意な相関関係を認めていました。
回旋可動域は屈曲位・伸展位どちらでも、屈伸可動域高い相関関係を示しました。膝OAの進行に伴い、関節可動域は制限されますが、脛骨回旋可動性は膝関節の遊びを反映している事が考えられ、それらの消失が可動域と関連する事が考えらえたと言えます。

今回の文献は、関節可動域制限の原因を理解し、治療を進めていく際の1つの指標になるのではないかと考えています。下腿の外旋や内旋が膝の屈伸の制限や疼痛の制限になることを理解し、病態解釈に努めていきたいと思います。

投稿者 茂木孝平

2018年6月25日月曜日

【文献紹介】加齢の伴う腱板機能のX線学的検討

本日紹介させていただく文献はX線学的に無症状の肩関節の腱板機能について検討しています。


上山元  他:加齢に伴う腱板機能のX線学的検討.肩関節20(1):127-130,1996

対象は対側に肩関節痛を有する対象:10代から50代の無症状肩50例です。
撮影方法は自然下垂位、scapuka plane45°これに3kgの重錘で負荷をかけた4方法で行なっています。
cuff indexを計測し、腱板断裂不全例の割合を算出しています。
各年代における結果です。
cuff index逸脱例がどのくらいいたのかが示されています。
10代→10%
20代→10%
30代→30%
40代→40%
50代→70%
加齢変化に伴い増加する疾患として五十肩が挙げられるます。
今回の検討の対象は対側に肩関節疾患を有しています。
活動性についてはスポーツや職業があり、加齢に伴い活動性に関しては低下しています。
cuff infdexの増加に伴いC-A archに圧迫力が加わりやすくなくなり、腱板損傷を誘起しやすくなります。。
cuff indexが増加しているにも関わらず無症状であるのは、日常生活動作の低下により関節に加わるストレスが低下していることが考えられると筆者は述べています。

画像から読み取れることはたくさんあると思います。
画像所見に関する論文を読むのはもちろん、画像をたくさん見るということも行っていく必要があると感じました。

2018年6月24日日曜日

【第126回京都支部定例会】

本日第126 回京都支部定例会が行われました。
今回は京都下鴨病院の中井 亮佑先生に「足関節捻挫・シンスプリント」についてレクチャーしていただきました。
 



シンスプリント・足関節捻挫は多くのスポーツにおいて好発するスポーツ傷害です。足関節捻挫においては再発率も高く、長期に渡る後遺症が残存しやすい傷害であり急性期での適切な治療が重要となります。それぞれの疾患について機能解剖学的な病態解釈と治療についてレクチャーしていただきました。





実技は後脛骨筋、長趾屈筋の触診とリラクセーションを行いました。
スペシャルレクチャーとして京都下鴨病院の小野志操先生、烏丸御池クリニックの永井教生先生からも実技レクチャーを行っていただきました。
 
今回、学んだ知識・技術を明日からの臨床に活かして行きたいと思います。
 

次回の定例会は8月4日です。
内容は「~肩関節不安定症(バンカーと損傷・脱臼~」です。
定例会の参加には事前申し込みが必要になります。
申し込みは7月1にから始まります。
定員に達し次第申し込みを終了とさせていただきますのでお早めにお申し込みください。
 

2018年6月23日土曜日

【文献紹介】骨盤傾斜と変形性股関節症

本日紹介させいていただく文献は骨盤の傾斜角と股関節 OAとの関連について検討された文献です。


貞松俊弘他:骨盤傾斜と変形性股関節症.整形外科と災害外科(40)2:599-603,1991


対象は股関節OA患者275例。
恥骨結合を中心としたX線撮影を行なっています。
検討された項目は年齢、症例数、臼蓋形成不全、骨頭変形に起因しない変形、骨頭破壊のOAの有無です。
骨盤傾斜角は骨盤腔が正円に近いほど大きく、横長の楕円であるほど小さいと表現されています。
結果は骨盤傾斜角が小さい症例は平均年齢が高く、臼蓋形成不全・骨頭変形に起因していない、骨頭が破壊されていくタイプのOA changeを認めました。
筆者は骨盤傾斜角小さいと荷重部分が正常ないちと比較して前方に移動し、前方臼蓋形成不全の状態にあると述べています。
前方臼蓋形成不全はOA changeを助長させることは以前に報告されています。
これらのことから骨盤傾斜角が小さい症例のOA chngeの背景には前方臼蓋形成不全の病態が存在している可能性があると考察しています。
limitationとして無荷重位であること、脊椎病変や股関節拘縮が考慮されていないことが述べられています。


股関節OAの症例において背景に何があるのかを推察することは運動療法を行う上で重要である思います。X線を見る際に骨盤腔を確認することで骨盤がどの程度傾斜しているのかは一つの指標としていましたが、骨盤腔が楕円である症例に関して前方臼蓋形成不全が背景にあることは予測できていませんでした。
これらの背景から拘縮やメカニカルストレスを予測し、運動療法に役立てていきたいと思います。
 
投稿者:小林 駿也

2018年6月22日金曜日

【文献紹介】肩関節周囲炎患者の夜間痛について

本日紹介させていただく文献は夜間痛を有する患者の夜間痛が生じる肢位と可動域との関係について検討された文献です。


烏山昌起他:肩関節周囲炎患者の夜間痛について-夜間痛出現しいの調査と可動域の比較検討-.理学療法福岡30:73-76,2017

対象は肩関節周囲炎と診断された78名84肩です。アンケートを実施し、夜間痛なし群とあり群とに訳、夜間痛が出現する肢位と可動域の測定を行っています。
可動域は屈曲、伸展、scapular planeでの内旋、下垂位外旋、結帯を測定しています。
夜間痛を呈する肢位は、患側下側臥位、背臥位、患側上側臥位、腹臥位の順で多い結果になっています。
患側下側臥位で夜間痛が生じるグループでは夜間痛なし群と比較し、屈曲可動域が有意に低下していました。
背臥位で夜間痛が生じるグループでは屈曲、伸展、内旋、外旋、結帯で有意に可動域が低下していました。
これらの結果から筆者は、夜間痛が出現する肢位の違いによって可動域にも相違があることが示唆されたと述べています。


今回紹介させていただいた文献を読んで、出現肢位によって夜間痛を引き起こす因子はことなってくるため、肢位による詳細な評価と治療を行うことが重要になってくるを改めて感じました。



2018年6月20日水曜日

【文献紹介】膝後外側複合体(PLS)の解剖学について


本日はPLS、特に膝窩筋の形態学的特徴について報告されている文献を紹介させていただきます。





三浦ら:膝窩筋を中心としたヒトposterolateral structuresの臨床解剖学的検討.第7回臨床解剖研究会記録,2003.9.20


この文献では献体8体、16膝を用いられて、肉眼解剖を行われています。

膝窩筋の形態学的特徴として
1.強靭な膝窩筋主腱は大腿骨外側顆に付着
2.膝窩筋最表層線維は弓状膝窩靭帯の内側線維束に合一
3.膝窩筋後面深層線維束は外側半月板後角に付着
4.膝窩トンネル構成線維の一部は関節包前方に発達した横走線維束を介して膝蓋骨側面に付着
5.膝窩筋下縁線維は後外側関節包に付着
6.膝窩筋下縁表層線維束は膝窩腓骨靭帯を介して腓骨頭に付着、遠位付着部は脛骨後面
以上の6つの付着形態に分けることが出来たと報告しています。

また、膝窩筋以外のPLS靭帯組織についても観察されています。
MRI3軸断面像においてPLSを構成する外側側副靭帯、弓状膝窩靭帯、ファベラ腓骨靭帯、膝窩腓骨靭帯がT2強調像にて同定が可能であったとも報告されています。

本文で考察されていますが、膝窩筋の運動機能を補佐する形でPLSの各靭帯が機能していることが考えられるかと思います。
他の文献でもPLSの靭帯がどの程度不安定性に関与するのか述べられているものは多くありますが、このように付着形態を見ているとどの靭帯組織が損傷しているのか評価して行くことが重要であると思います。
臨床ではMRIでの評価が出来るので解剖学の知識と画像評価が重要であると改めて感じました。


投稿者:天鷲翔太

2018年6月19日火曜日

【文献紹介】骨付き膝蓋腱による成犬膝前十字靭帯再建術後の骨孔内の治癒過程の組織学的検討

本日はBTBを用いたACL再建術における、骨孔内での移植腱の治癒過程について研究された文献を紹介させていただきます。


長野 正憲・他:骨付き膝蓋腱による成犬膝前十字靭帯再建術後の骨孔内の治癒過程の組織学的検討.日関外誌17(4)315-3221998


対象は雑種成犬18匹で、BTBを用いてACL再建術を行います。術後1週、3週、6週、12週において4匹ずつ再建膝を試料として用いています。また、正常のACLと膝蓋腱の骨付着部の観察のために残りの2匹を使用しています。骨孔内の評価項目は以下の5項目となっています。
移植腱端の骨片と骨孔の壁との界面
移植腱内の腱付着部
移植腱の腱部分と骨孔の壁との界面
骨孔内での死腔
骨孔内の腱実質部

結果ですが、では術後1週で移植腱端は壊死しており破骨細胞が観察され、術後3週では骨芽細胞が観察され界面部の結合が進行していたとのことです。
では正常のACLおよび膝蓋腱の骨付着部は、4層構造(腱(靭帯)、非石灰化線維軟骨層、石灰化線維軟骨層、骨)となっており、ACL再建術後においてもこの構造は保たれていたようです。
においては術後1週より界面に線維組織層がみられ経時的に進行し、12週に関してはシャーピー線維が観察されたと報告されています。
では術後1週より死腔を埋めるように線維組織が存在し、術後12週時点で線維組織は骨孔の長軸方向に位置する配列となり腱実質と類似する構造に成熟していたとのことです。
では術後1週で壊死し、6週まで線維芽細胞の増殖が確認されたと報告されています。


この文献から移植腱と骨孔の固定性は術後3週、腱の強度は12週から獲得されていくことが考えられるかと思います。移植腱の固定性や強度はBTBでのACL再建術後の理学療法を行っていく上で重要な知識となります。適切な期間での、適切な強度による理学療法を行うことが、我々理学療法士が常に考えて置かなければならないことでもあるため、このような術後組織の修復過程を知ることはかなり大切なことではないでしょうか。


投稿者:高橋蔵ノ助





【文献紹介】大腿骨前脂肪体の柔軟性と筋力・膝関節可動域の関係性について

本日は大腿骨前脂肪体の柔軟性と筋力・膝関節可動域の関係性について文献紹介させていただきます。
人工膝関節置換術(以下TKA)症例やその他の膝関節症例において可動域制限(以下ROM)や筋力低下には様々な原因が挙げられます。その際に、膝蓋下脂肪体(以下IFP)や大腿骨前脂肪体(以下PFP)などの硬化が原因となり可動域制限や疼痛が生じている事が報告されています。本文献では、IFP、PFPの柔軟性とROMや筋力低下の関係性について述べられていました。

対象・方法としてはN 群15例22膝(男性5人、女性10人、平均年齢73.1±4.0歳),TKA 群13例16膝(男性3人、女性10人平均年齢70.4±9.4歳)とし、
①膝関節伸展位90°屈曲位にてPFPの組織弾性を計測
②膝関節90°屈曲位にて膝関節伸展筋力を測定
算出したPFP柔軟性を群間比較、またTKA群におけるPFP柔軟性と膝関節屈曲・伸展ROM、膝関節伸展筋力との相関を求められていました。

結果としては
①膝関節伸展位・屈曲位では、TKA群がN群に比べて有意にPFPの柔軟性が低下
②TKA群におけるPFP柔軟性と膝ROM・膝伸展筋力との相関は屈曲位と膝伸展筋力のみ負の相関が認められ、膝ROMとPFP柔軟性には相関が認められなかった。
このことから、TKA術後症例では、膝蓋上嚢だけではなくPFPも硬化している事が明らかとなり、またPFP柔軟性の変化は屈曲位にてより柔軟性が低下している。PFP柔軟性低下により、膝蓋上嚢・膝関節筋・広筋などの収縮効率の低下が原因となって、膝伸展筋力の低下に繋がっている事が確認された。
TKA術後症例では、膝蓋上嚢だけではなく膝屈曲位でのPFPの柔軟性を改善する事が必要であると考えられた。

膝関節症例だけでなくその他の症例においてもROMや筋力低下の原因となる組織に確実にアプローチする事が患者の治療を行う上で重要になってくると思います。今回はPFPや膝蓋上嚢のみでしたがその他にも原因となる組織はたくさんあるかと思います。それらに対して確実にアプローチできるようにこれからも知識を増やしていきたいと思いました。


投稿者 茂木孝平

2018年6月18日月曜日

EPoch主催の勉強会に参加させていただきました!!

EPoch主催の勉強会に参加させていただきました!!
 
今回のテーマは
「膝関節疾患に対する機能解剖学的運動療法~変形性膝関節症とTKA術後の病態解釈と運動療法の実際」です!
 
2日間にわたり小野志操先生が講義をされ、私は実技アシスタントとして初めて参加させていただきました。
 
 

 1日目は座学で2日目は実技でした。変形性膝関節症やTKA術後に関して、機能解剖や生理学、文献的知見も加えて小野先生の理学療法の考え方を勉強させていただきました。日々の臨床で疑問に感じながらどこか整理しきれない空白の部分が埋まっていくような、病態の本質を捉え展開されていくお話に引き込まれあっという間に一日目が終わりました。受講者が期待することを把握することやプレゼンテーションのテクニックを勉強させていただいた反面、病態を解釈する上で自分の知識量の少なさをとてつもなく痛感しました。2日目ではわかりやすく伝えることの難しさ、自分の触診技術の未熟さを痛感しました。相手に上手に伝えれないということは自分自身で消化しきれていない、または理解しきれていない部分があるということです。当たり前ですが、知識と触診技術なくして患者さんをよくすることはできません!ので今回の経験から得られたことや反省点を活かして少しでも自分の成長につながるよう努力していきます。
 
 
投稿者:佐々木拓馬

2018年6月17日日曜日

【文献紹介】腰椎椎間板ヘルニアの保存療法

本日は、腰椎椎間板ヘルニアの保存療法について報告されている文献を紹介させていただきます。

           
青木 保親ら:腰椎椎間板ヘルニア. OrthopaedicsVol.28.No10:52-60.2015

この論文では腰椎椎間板ヘルニアの保存療法を行うにあたり重要と考えられる知識について大きく3つ述べられています。
 
1.椎間板が突出していても症状を引き起こすとは限らないこと。
2.椎間板ヘルニアは自然経過で退縮することがあること。
3.危険な兆候があれば手術を検討する必要があること。

 以上3点を念頭において治療を進めることが重要であると述べられています。

線維輪の断裂が起きて髄核が椎間板外に脱出してしまった状態、もしくは線維輪が非生理的に膨隆している状態が解剖学的な(形態上の)ヘルニアです。臨床においてMRI画像上では形態上のヘルニアが確認できますが無症状であることも多く経験します。また、腰痛や下肢痛、しびれを訴える患者さんでMRI画像上椎間板ヘルニアが確認できても、理学所見では画像所見とマッチングしない症例もあり、他の病態が混在しているケースも多く経験します。しかし診断は椎間板ヘルニアで理学療法の指示がでることも経験します。

このような症例を多く経験する中で、画像所見にとらわれて他の病態を見落としてしまうと運動療法に反応せず評価の重要性を日々痛感します。カンファレンスなどでご指摘頂き他の所見を見落としていることに気づかされることもあります。

当たり前のことですが、患者さんの病態に応じた運動療法が選択できる理学療法士になり、1人でも多くの患者さんをよくできるよう日々勉強していこうと思います。
 

投稿者:大渕 篤樹

2018年6月16日土曜日

【文献紹介】下肢変形に及ぼす大腿骨負荷の影響についての実験的検討

本日は、荷重による大腿骨下端部に生じる回旋トルクについて報告されている文献を紹介させていただきます。

高柳雅欣ら:下肢変形に及ぼす大腿骨負荷の影響についての実験的検討. 臨床バイオメカニクス,Vol372016

この研究は大腿骨に対する鉛直方向荷重が下肢変形に及ぼす影響を実験的に検討することを目的に行われており、モデル大腿骨の骨頭に対して鉛直方向に荷重を与える圧縮試験を実施し、大腿骨下端部に生じる回旋トルクを計測した結果について報告されています。

 方法は、大腿骨モデルを使用し、矢状面から見た際に大腿骨内穎を結んだ線が鉛直になるように設定した線を基準として、後傾0°、10°、20°となるように設定しています。圧縮荷重は大腿骨頭に鉛直方向に最大100N5回ずつ行っています。

結果の一部を紹介させていただきます。各固定位におけるトルクは、すべての固定位において内旋トルクが検出され、大腿骨後傾角度が大きくなるにつれてトルクも増大したと報告しています。

測定器で検出された内旋トルクは、大腿骨に作用しているトルクの反力としてのトルクであるため、大腿骨近位には外旋トルクが生じていることになり、著者らは、これらの結果より、長期間にわたる回旋トルクは大腿骨の外旋化を引き起こすなど、膝OA発症の要因の一つであると考えています。

自分自身、膝OA患者さんを担当させていただく機会が多く、一つの要因で解決することは少ないと日々の臨床にて感じています。今回、調べていく中で、膝OA患者さんに対して疼痛を訴える部位に対する評価だけでなく、まずはアライメント評価を行い全体を捉えてから局所に着目していく大切さを改めて感じました。


投稿者:小林 駿也
 

2018年6月15日金曜日

【文献紹介】腱板断裂症例の僧帽筋・前鋸筋・三角筋の機能について

 
本日の論文は、上肢挙上可能な腱板広範囲断裂保存症例の上肢挙上角度変化における僧帽筋、前鋸筋、三角筋の筋活動性を表面筋電図を用いて調査されています。
 


 
腱板広範囲断裂群の選定基準として、MRIより断裂腱の最大長が5cm以上かつ2腱以上の完全断裂を認めている症例で130°以上の上肢自動挙上が可能であることです。

座位で上肢挙上0°、30°、60°、90°位を各5秒間保持させた状態の僧帽筋(上・中・下部)、前鋸筋、三角筋(前・中・後部)の筋電図積分値を健常群と比較しています。

結果は上肢挙上0-30°間において前鋸筋、三角筋中部・後部線維が、30°-60°間において僧帽筋中部線維、三角筋後部繊維の筋活動が有意に高値であったと報告されていました。

 上肢挙上動作の獲得に向けて、挙上0°-60°間に各筋の筋出力が発揮しやすくなるよう肩甲骨の上方回旋や内転方向への可動域は獲得していなければならないと思いました。拘縮の改善だけでなく、同時並行に肩甲骨周囲筋の筋活動の評価・治療の重要性を再確認しました。

 
投稿者:佐々木拓馬

2018年6月14日木曜日

【文献紹介】腰椎椎間孔狭窄症の診断について

今回は腰椎椎間孔狭窄に対する診断について述べられた文献を紹介させていただきます。

            

山田 宏、吉田 宗人:腰椎椎間孔狭窄に対する診断と手術.関節外科.vol.32 No.11 36-42.2013


腰椎椎間孔狭窄症は同じ狭窄症でありながら腰部脊柱管狭窄症とは異なる特異的な臨床兆候を呈することが知られています。腰部脊柱管狭窄症では症状緩和につながる姿勢や動作が椎間孔狭窄では逆に症状を誘発したり増悪させたりすることもあります。狭窄症よりもヘルニアとよく似た臨床症状や理学所見を呈することも特徴とされており腰部脊柱管狭窄症と鑑別するうえで重要な臨床兆候と考えます。しかしすべての腰椎椎間孔狭窄症に必ずしもこの公式が当てはまらないことを認識する必要があると著者らは強調して述べられています。
 
椎間孔狭窄症の臨床症状と理学所見の陽性化率の発生頻度分布をみると感受性80%以上の数値を示すものが1つとして存在しないからです。

通常、腰部脊柱管狭窄症ではSLRテストをはじめとする各種テンションテストが陽性化することは少ないですが椎間孔狭窄では、梨状筋症候群で用いられるBonnetテスト、Freibergテストの2つの誘発テストが陽性化することが多いとされています。このメカニズムを解明するために解剖遺体を用いて実験されています。
単にSLRをするだけでは神経の圧迫は増強されないが股関節の内転を加えると腰仙椎移行部の椎間孔部で神経が前方の膨隆椎間板に強くおしつけられるのが確認されています。
著者らはこの現象が梨状筋症候群の疼痛誘発テストが椎間孔狭窄でも陽性化しやすい理由と述べられています。

 

1つの所見にとらわれず様々な所見を組み合わせることにより病態を推察し、検査の持つ意味を解剖学的に考えることの重要性を再確認できました。

投稿者:大渕 篤樹

2018年6月12日火曜日

【文献紹介】後方アプローチを用いた人工股関節全置換術前後の外旋筋力の回復率

今回は後方アプローチで行ったTHA後の外旋筋力の変化について検討された文献について紹介させていただきます。



北島将他:後方アプローチを用いた人工股関節全置換術前後の外旋筋力の回復率整形外科と災害外科.65(1):10-12.2016


 対象は平均年齢70歳の男性4股、女性18股で、徒手筋力計を用いて股関節の屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋を測定し、術前後で比較しています。

 結果ですが、THA前後では内旋筋力のみ有意な増加を認めたと報告しています。術後半年と1年の比較では、屈曲と外旋は改善傾向ではあったが、全て有意差は認められなかったと報告しています。また、外旋筋力が術前レベルまで改善した症例は、全体の58%であったと示されています。


 後方アプローチにおけるTHAでは、外旋筋群の一部を切離して展開をします。そのため、後方アプローチにおいては外旋筋群の修復が術後の脱臼率を減少させるという報告がされています。THAのリスク管理として脱臼予防は重要ですが、この文献から脱臼予防の指標として外旋筋力も参考になるのではないかと感じました。

手術方法を知ることは、術後理学療法を進めていく上で重要な知識になります。手術に対する知識の構築も重要であることが再認識できました。


投稿者:高橋 蔵ノ助

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