本日紹介させていただく文献は膝蓋下滑膜ヒダ障害に対してMRIと関節鏡所見を用いて病態の検討をされたものです。
相澤哲他:膝滑膜ヒダ障害における膝蓋下滑膜ヒダのMRIと関節鏡所見の検討57(1).北海道整形災外外科学会雑誌:110-113,2015
滑膜ヒダ障害において膝蓋下滑膜ヒダがどのような病態を有しているのか明らかになっていません。今回膝滑膜ヒダ障害の手術症例において膝蓋下滑膜ヒダのMRI所見と関節鏡所見について検討しています。
対象は9症例11膝、平均年齢25歳です。疼痛に関してはNRSとJKOMを用いて評価し、X線・MRI所見・関節鏡所見に関して検討しています。
膝蓋下滑膜ヒダの大きさは大腿骨顆間窩線からACLまでの距離を膝蓋下滑膜ヒダ厚として計測しています。
結果は術前後でNRS:6.9→1.1、JKOM:37.8→9.5点nと改善しています。
関節鏡所見:Vertical型4例、Separete型3例、Fenestra型2例、Absent型2例で、膝蓋下滑膜ヒダ分類と膝蓋下滑膜ヒダ厚との有意差はありませんでした。
今回の研究での手術を行った滑膜ヒダ障害の患者の症状としては、長期間の膝関節伸展時の違和感、膝前面痛が特徴的でした。
滑膜ヒダ障害は膝蓋骨と大腿骨によるメカニカルストレスによって炎症を起こすことが疼痛や違和感の原因になるとされています。
一方で、膝蓋内側滑膜ヒダや膝蓋下滑膜ヒダが存在する膝蓋下脂肪体部の滑膜が関越内で最も疼痛の感度が高い部位であると報告されています。
すなわち、膝蓋下滑膜ヒダに軽度の炎症が生じても持続的な膝前面痛の原因になりうると筆者は考察しています。
今回の検討では膝蓋か滑膜ヒダ厚と関節鏡所見との間に有意差は認めませんでした。
このことから膝蓋下滑膜ヒダ厚は膝蓋下滑膜ヒダの大きさ自体に左右されるのではなく、膝蓋下脂肪体部の滑膜えんによって前面痛が生じ、伸展制限を表していると考えられると述べています。
臨床で膝前面痛を訴える症例を多く経験します。IFPが原因の症例も多く経験しますが、IFPの拘縮と考え治療していることが多いです。
今回この文献を読んで、IFP内に存在している滑膜ヒダまで考えが及んでいませんでした。
本当に柔軟性が低下していること自体が痛みを出しているのか、滑膜炎であるのかしっかり見極めて治療して行く必要があると感じました。
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