COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年7月31日月曜日

【文献紹介】骨盤傾斜と変形性股関節症

本日紹介させいていただく文献は骨盤の傾斜角と股関節 OAとの関連について検討された文献です。


貞松俊弘他:骨盤傾斜と変形性股関節症.整形外科と災害外科(40)2:599-603,1991


対象は股関節OA患者275例。
恥骨結合を中心としたX線撮影を行なっています。
検討された項目は年齢、症例数、臼蓋形成不全、骨頭変形に起因しない変形、骨頭破壊のOAの有無です。
骨盤傾斜角は骨盤腔が正円に近いほど大きく、横長の楕円であるほど小さいと表現されています。
結果は骨盤傾斜角が小さい症例は平均年齢が高く、臼蓋形成不全・骨頭変形に起因していない、骨頭が破壊されていくタイプのOA changeを認めました。
筆者は骨盤傾斜角小さいと荷重部分が正常ないちと比較して前方に移動し、前方臼蓋形成不全の状態にあると述べています。
前方臼蓋形成不全はOA changeを助長させることは以前に報告されています。
これらのことから骨盤傾斜角が小さい症例のOA chngeの背景には前方臼蓋形成不全の病態が存在している可能性があると考察しています。
limitationとして無荷重位であること、脊椎病変や股関節拘縮が考慮されていないことが述べられています。


股関節OAの症例において背景に何があるのかを推察することは運動療法を行う上で重要である思います。X線を見る際に骨盤腔の形は確認しますが、骨盤腔が正円に近い症例に関しては臼蓋形成不全を予測できましたが、骨盤腔が楕円である症例に関して前方臼蓋形成不全が背景にあることは予測できていませんでした。
これらの背景から拘縮やメカニカルストレスを予測し、運動療法に生かしていきたいと思います。

2017年7月24日月曜日

第3回整形外科リハビリテーション学会 滋賀支部・京都支部共済ベーシックセミナー「肩関節拘縮における機能解剖学的評価と触診」

本日、第3回整形外科リハビリテーション学会 滋賀支部・京都支部共済ベーシックセミナー「肩関節拘縮における機能解剖学的評価と触診」が開催されました。
本日は5人の先生方にレクチャーしていただきました。








今回は112名とたくさんの先生方にご参加いただきました。
基本的な解剖や文献的な報告から拘縮肩をどのように考えていくべきか、治療するためにはどこに着目すべきかわかりやすかったです。
本日のセミナーは実技の時間を多くとっていただき丁寧に触れていくことができました。
また講師の先生も15人おり、認定グレードをお持ちの先生方に直接触診を教えていただく貴重な時間でした。
今回のセミナーの時間練習しただけでは正確には触れることができないため、再度解剖学的な位置関係、運動による位置変化などを踏まえた上で触診の練習をしていきたいと思います。



次回の京都支部定例会は8月19日です。
当院の為沢一弘先生による「膝OAにおける歩行時痛の解釈」です。
定員は24名です。先着順になりますのでお早目にお申し込みください。


2017年7月19日水曜日

【文献紹介】肩関節挙上運動における回旋運動の分析

本日紹介させていただく文献は肩関節挙上時の回旋について検討された文献です。



中川照彦他:肩関節の挙上運動における回旋運動の分析−屍体肩甲上腕関節を用いて−.整形外科バイオメカニクス12:165−169,1990

対象は6屍体10関節で、残存組織は関節包靭帯、烏口肩峰靭帯、烏口上腕靭帯、上腕二頭筋長頭腱です。計測方向は前方挙上、肩甲骨面挙上、側方挙上、45°後方挙上、伸展の5方向です。肩甲骨は固定され、肩甲上腕関節のみで計測されています。

結果は挙上可動域は側方挙上、肩甲骨面挙上、前方挙上、45°後方挙上、伸展の順で大きくなり、外旋可動域は側方挙上、肩甲骨面挙上、前方挙上、伸展、45後方挙上の順で大きくなりました。
骨頭の向きは内外側上顆を結ぶ線は約13°内旋しており、上腕骨頭は約20後捻しているため、約33°後方を向いていました。
肉眼で関節包靭帯を観察すると下垂位では前下方と後下方を比較すると前下方にゆとりがありました。さらにそこから挙上に伴う外旋運動を観察すると前下方にrollingしながらglidingしていました。
筆者は挙上に伴う外旋運動はrollingとglidingが生じる骨形態と関節包靭帯の緊張により生じると考察しています。

この文献から挙上には外旋可動域が必要なことがわかり、肉眼的観察から前下方へ骨頭が移動できる組織のゆとりが必要なことがわかります。今回は関節包靭帯、烏口上腕靭帯、烏口肩峰靭帯のみ組織が残存した状態で検討されていますが、これらの組織だけで見ると前下方に移動できるだけの前下方の関節包靭帯のゆとりと、下垂位の状態で後下方がtightになりすぎていないことが挙上には必要であると考えられました。
拘縮肩の治療を行う際の参考にしたいと思います。




2017年7月11日火曜日

【文献紹介】外側円板状半月を伴った大腿骨外側顆離断性骨軟骨炎の一例

 今回は、外側円板状半月板に加え、大腿骨顆部での離断性骨軟骨炎を受傷された症例について報告された文献を紹介させていただきます。



水光正裕他:外側円板状半月を伴った大腿骨外側顆離断性骨軟骨炎の一例.整形外科と災害外科.64(4).651~656.2015


 今回の文献では外側円板状半月板を伴った離断性骨軟骨炎に対し、モザイクプラスティを施行されていました。術後経過は良好であったと報告されています。



 離断性骨軟骨炎の発生要因には、外傷や血行障害、軟骨骨化などの他にも、様々な誘引が挙げられます。しかし、大腿骨外側顆に生じる離断性骨軟骨炎には、外側円板状半月板の有無が関与しているという報告が見受けられます。この機序として考えられるのは、膝屈曲時に円板状半月板が運動に伴って後方への移動が制限され、大腿骨外側顆部に正常よりも多い剪断力が生じてしまい、軟骨部に亀裂や損傷が生じてしまうことが考えられます。


 外側円板状半月板に対して、切除術を行った後の患者様の理学療法を経験する機会が最近増えており、その年齢は小学生から成人と幅広くなっております。患者様から頂く質問に共通していることは、「この切除はした方がいいのか?」ということです。

 確かに、半月板損傷に対する縫合術や切除術の有無は、どの報告を拝見しても、様々な報告がされています。円板状半月板に関しても、年月の経過により、中心部が損傷し、正常半月板に形態が近づくケースもあるという報告があるように、同様の考え方が出来ると思われます。
 しかし、円板状半月板を残存させることにより、上記した離断性骨軟骨炎の発症が考えられることに加え、早期でのOA changeの可能性なども考えられます。このようなことを患者様に説明させていただいています。

 では術後理学療法ではどのようなことが重要になるのか。私の考えは他の疾患と変わらず、軟部組織がどのように機能することが、関節にかかるストレスを軽減できるかを考え、それに対してアプローチしていくことではないかと考えています。患者様にはこのようなこともしっかりと伝え、術後の再発を防ぐ努力を共に行っていただいています。


 今回の疾患以外でもそうですが、なぜ手術を行い、その後の理学療法では何に注意して行うのか。これを患者様に説明するには、適切な病態把握や適切な期間・強度・頻度を理解しておくことが重要であると、再度認識することができました。


投稿者:高橋 蔵ノ助
 





2017年7月9日日曜日

【第15回下鴨整形疾患フォーラム】

本日は京都下鴨病院主催で15回目を迎えた下鴨整形疾患フォーラムに参加してきました。



講演Ⅰ「2020年東京オリンピック・パラリンピックに際して集団災害医療対策について」

東京医科歯科大学大学病院救急災害医学分野 教授 大友康裕先生


講演Ⅱ「アスリートのACL再建術-現状と問題点」

大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究所 教授 堀部秀二先生



私自身、ACL再建術後患者さんの理学療法を担当させて頂く機会があり、今回を通じて整形外科医との連携と共通認識の重要性を改めて感じることが出来ました。

フォーラムを通して得た知識を今後の臨床に活かしていきたいと思います。

2017年7月5日水曜日

【文献紹介】肘関節LCLの解剖について

本日は肘関節外側側副靭帯(以下LCL)の解剖について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。




浦田ら:肘関節外側側副靭帯の解剖について 整形外科と災害外科,45(2)526-528,1996.


この文献では屍体35(3、右2)を解剖し、LCLの付着部、走行および靭帯切離時の関節不安定性について観察されています。

LCLは外側上顆に付着していますが、その付着部では伸筋群の筋腱と一緒に付着しており分離させることは困難であった。
靭帯の走行を抹消へ辿ると前方は輪状靭帯へ付着し、後方は回外筋稜に付着するが、回外筋腱と一部癒合して付着する様子が観察された。
観察した5肘すべてに後方繊維を確認できたが、前方繊維ほど明確には確認できなかった。
前方繊維まで靭帯を切離するとある程度の安定性が保たれていたが、後方繊維まで切離すると著明な不安定性が観察された。
以上がこの文献で報告されているものです。

この文献からLCLの付着部の形態、走行を確認できた。
靭帯は筋と違い、収縮はしないので付着部、走行からどの肢位で伸張されるのか考えることが重要かと思います。
関節の安定性について、前方繊維と後方繊維の両方を切離したことで不安定性が著明に出現したと報告されていますが、後方繊維のみの切離は報告されていません。このことについては今後勉強していきたいと思います。




投稿者:天鷲翔太

2017年7月4日火曜日

【文献紹介】関節運動の変化が関節軟骨・半月板に及ぼす影響

 今回は、関節の動態変化が関節軟骨にどのような影響を及ぼすかを述べた文献について紹介したいと思います。



村田健児他:関節運動の変化が関節軟骨・半月板に及ぼす影響.理学療法.2477832017


 本研究は、メカニカルストレスとなり得る膝関節の運動学的異常が軟骨及び半月板に与える影響を検証しています。

 対象は6ヶ月齢のラット40匹を用いられ、ACLを外科的に損傷させ、前方引き出しが過剰に生じている群(以下ACLT群)、同じく外科的損傷後、脛骨の前方引き出しを制動した群(CAJM)、通常飼育群(CTR)の3群に分類されています。
 これらの3群を、術後12週目に関節軟骨と半月板の変性について組織学的分析を行われていました。



 結果は、術後12週ではACLT群で関節軟骨厚の減少や関節軟骨の変性、表層のフィブリン化が他の2群と比較し、著しく重症化していました。
 半月板の接触エリアと非接触エリアで比較すると、ACLT群とCAJM群の2群では双方のエリアで変性を認め、大腿骨側と脛骨側両方で変性が認められました。また、半月板自体の変性も同様に、ACLT群とCAJM群がCTR群と比較して有意に構造的破壊を認めていました。


以上のことから、膝関節の不安定性がある場合、関節軟骨や半月板に正常よりもメカニカルストレスが負荷となり、変性の重症化を招くことが分かります。


今回の研究では、ラットを用いて、ACL損傷による脛骨前方引き出しが制動されない膝関節を想定し、関節軟骨や半月板の変性がどう生じるのかを検討されていました。

 ACLは膝関節内靱帯であり、膝関節の安定性の多くを担っています。関節の安定性は靱帯のみではなく、筋や腱、関節包など多くの軟部組織によって関節の安定性は保たれています。このメカニカルバランスが、生体内の組織(今回の研究では関節軟骨や半月板)が機能しやすい環境を整えていると言っても過言ではないと思います。


 しかし、軟部組織の損傷や機能不全、筋の滑走不全やtightnessが存在した場合、本来の関節運動から逸脱した運動を行い、組織の損傷に繋がることが考えられます。


 私たちが理学療法を提供させていただく方には、術後の方だけでなく、保存療法を選択された方に対しても理学療法を提供させていただきます。
 opeによる介入が行われない患者様の理学療法では、軟部組織のバランスを整えることが重要となります。問題となる軟部組織を特定する評価や、それらに対しての治療技術など、さらなる技術向上や知識の積み重ねが必要となることが、改めて感じられました。


投稿者:高橋 蔵ノ助







【文献紹介】ラット膝における軟骨下骨支配神経の特性

おはようございます。本日は軟骨下骨支配神経についての文献を紹介させていただきます。
 変形性膝関節症(膝OA)において、軟骨がすり減り軟骨下骨まで変形が進んでいくと骨髄性の疼痛が生じることはよく言われています。そこで今回は、軟骨下骨について調べてみました。
河漕孝治:ラットにおける軟骨下骨支配神経の特性.日本運動器疼痛学会雑誌(5):132−138,2013



本文献は、軟骨下骨を支配するDRG(後根神経節)細胞を逆行性神経トレーサーを用いて標識し、その神経科学的特性(CGRPNGF受容体(TrkA)、NF200IB4の発現)や脊髄高位分布、DRG細胞の大きさを明らかにすることを目的に行われており、さらに、軟骨下骨支配神経と膝関節内組織支配神経の違いを比較検討されています。



方法は3週ラットを用いて大腿骨遠位骨端外側に骨孔を作成し、Fast BlueFB1.5μlを膝関節腔にDil 10μl注入後、14日目にL1~6DRGを摘出し、FBによる軟骨下骨を支配するDRG神経細胞の変化、Dilによる膝関節内組織を支配するDRG神経細胞の変化を蛍光顕微鏡を用いて観察。各脊髄高位でFBおよびDilで標識される細胞数をカウントし、DRG細胞断面積を計測しました。また、免疫組織化学染色を行い、FBおよびDilで標識されるDRG細胞のうち、CGRPTrkANF200IB4の発現の割合を計測しました。



結果の一部を紹介させていただきます。

各脊髄高位での細胞数の結果では、FB標識細胞(軟骨下骨支配神経)の60%がL3に局在し、有意に多くのFB細胞を認めました。また、Dil標識細胞(膝関節内組織支配神経)の67%がL3L4に分布しており、L3,4L1およびL6と比較して有意に多くのDil標識細胞を認めました。この結果から、筆者らは骨壊死が限局した痛みを訴える場合が多いのに対して膝OAでは限局のはっきりしない痛みを訴える一因となっていると考察しています。



 DRG細胞の神経科学的特性では、CGRP(炎症性疼痛と関係する細胞)およびTrkA陽性はFB標識細胞で多く、NF200(有髄神経線維(A線維)を有する細胞)陽性はDil標識細胞で有意に多かった。一方、IB4(神経因性疼痛と関係する細胞)陽性はFBおよびDil標識細胞でほとんど存在しませんでした。また、CGRPおよびTrkA陽性細胞の割合では、軟骨下骨支配神経の方が膝関節内組織より有意に多い結果となりました。

CGRPSubstancePを含むpeptidergie neuronは神経性炎症を生じさせる働きがあると言われており、筆者らは、研究の結果から軟骨下骨は炎症性疼痛に鋭敏であると考察しています。


今回調べていく中で、軟骨下骨由来の痛みを理解することが出来ました。膝OAでは軟骨下骨由来の痛みだけでなく軟部組織由来のものもあるため、軟部組織と骨の問題を区別していくために必要となる画像の勉強もしていきたいと思います。

投稿者:鷲見 有香

2017年7月2日日曜日

【文献紹介】夜間痛を伴う肩腱板断裂の臨床的特徴に関する検討

本日紹介させていただく文献は夜間痛を生じる症例の所見について検討されています。


岩下哲他:夜間痛を伴う腱板断裂の臨床的特徴に関する検討.東日本整形災害外科学会雑誌26(1):55−58,2014

対象は鏡視下鍵盤修復術を施行された114肩です。
夜間痛あり群となし群で検討しています。
検討項目は患者因子、外傷歴、喫煙歴、糖尿病の有無、自動可動域、断裂形態、罹患期間、インピンジメント徴候です。
結果は、夜間痛の呈したのは56/114肩でした。
2群間で有意差を認めたとはインピンジメント徴候と内旋可動域であったと報告しています。
これら2つで有意差を認めたことについて肩峰下圧の上昇を述べていましたが、健常者においても上肢挙上時に肩峰下圧は上昇することから、筆者は物理的刺激以外の要因を考察しています。
インピンジメント徴候は肩峰下滑液包炎により、滑液包内の血流が増加したこと、これにより炎症反応の侵害刺激により筋スパズムを生じさせるため、内旋制限をもたらしたと考察しています。
加えて、筋組織の虚血状態により発痛物質の生成も夜間痛の一要因であると考察しています。

患者因子に有意差を認めたと報告している文献や、内旋だけでなく、内外旋可動域や伸展可動域に有意差を認めたなど、夜間痛については様々な報告がされています。
夜間痛を認めている要因が炎症などであれば運動療法の適応にはなりませんが、その炎症を引き起こす因子や、夜間痛そのものの要因が軟部組織性の因子であれば運動療法で改善ができます。
夜間痛についていくつも報告がある中で、自分が担当させていただいた患者さんは何によって夜間痛が引き起こされているのか見極める必要があると感じました。

投稿者:堀内奈緒美


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