COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2015年12月24日木曜日

膝後外側支持組織の付着部について

本日は膝後外側支持組織の付着部について報告された文献を紹介します。

LaPrade RF et alThe Posterolateral Attachments of the KneeAm J Sports Med vol.31 no.6854-8602003

本文献では、検屍体10膝を対象に外側側副靭帯、膝窩筋、腓腹筋外側頭、膝窩腓骨靭帯の、4つの組織の付着部について詳細に述べられています。

起始部について、大腿骨外側上顆の位置を基準にした場合、外側側副靭帯はわずかに近位後方部に。膝窩筋はわずかに遠位前方に。腓腹筋外側頭は外側側副靭帯よりも近位後方部に平均して付着しているようです。筆者らは、これら膝後外側支持組織の解剖学的な付着部の理解が、膝後外側回旋不安定性を呈する症例の解剖学的修復術や再建術に不可欠であると述べています。

また膝窩筋腱溝を走行する膝窩筋について、およそ膝屈曲112°を境にして、伸展に伴い膝窩筋腱は膝窩筋腱溝から前方に亜脱臼すると述べられています。膝窩筋腱の損傷が疑われる際には、摩擦による疼痛が生じ得る角度かもしれないと感じました。

本論文で学んだことを頭でイメージして、明日からの触診練習や臨床に励みたいと思います。


投稿者:竹下真広

2015年12月21日月曜日

THA後方アプローチにおける軟部組織インピンジメントが可動域に及ぼす影響


 今回は日本人工関節学会誌からTHA後方アプローチ後の軟部組織インピンジメントに着目し、可動域とどのような関係があるのかについての文献を紹介します。


 中村ら:THA後方アプローチにおける軟部組織インピンジメントが可動域に及ぼす影響 日本人工関節学会誌 第43巻 57-58

 人工股関節全置換術(以下、THA)におけるインピンジメントは易脱臼性、磨耗の増大、原因不明の疼痛など多くの原因となりうると報告されています。THAにおけるインピンジメントの中でもインプラントインピンジメントや骨性インピンジメントについての報告は散見されますが、軟部組織インピンジメントについての報告は少ないです。

 THAにおける後方アプローチは他のアプローチと比べると後方脱臼のリスクがやや高いですが、後方の軟部組織の修復により脱臼率は低下するため、よく用いられる手技の一つです。筆者らは後方アプローチの際に臼蓋を展開において、前方関節包の存在を見落としやすいと懸念しており、前方関節包よる軟部組織インピンジメントがTHAの可動域にどのように影響するのか検討しています。

 結果としては、前方関節包切除が特に屈曲内旋方向に平均6-7°最大20°の可動域をもたらすことが明らかになり、一方で伸展外旋角度や下肢牽引時の関節離開距離には影響を及ぼさないと考察されています。

 今回の文献では術中に関節包の可及的全切除を行う際に前方関節包の見落としが可動域に影響を及ぼすとの報告であり、骨性およびインプラントインピンジメントがないのにもかかわらず、後方脱臼傾向がある場合は前方関節包の残存による軟部組織インピンジメントを疑う必要があると考察しています。THA後の運動療法を行う際には、脱臼のリスクを最小限に抑えた中で可動域をはじめとした股関節機能を高めていかなければいけません。術式や軟部組織の修復過程を考慮することはもちろんのこと、脱臼が起こりうる原因についての知識も必要であると感じました。

投稿者:服部隼人

2015年12月17日木曜日

論文紹介:上腕二頭筋長頭腱障害の組織について

本日は障害された上腕二頭筋長頭筋腱の変性を組織学的に研究した論文を紹介します。


吉川玄逸ら:腱板断裂に伴う上腕二頭筋長頭腱障害の組織学的検討.肩関節25(2)249-2522001

 上腕二頭筋長頭は関節上結節と上方関節唇に起始しており、関節鏡においては12時のランドマークとなります。上腕二頭筋長頭腱は腱板筋群が損傷されると上腕骨頭の上方化を防ぐDepressorとして代償的役割を果たすされています。
 本文献は、術中所見で肉眼的にLHBの明らかな変性が存在した症例より採取したLHBを対象とされています。結果は膠原線維の変性や血管増生を伴う肉芽組織が認められていますが、炎症所見や腱の肥厚化を呈した症例は認めなかったと述べられています。
 本文献より、腱が肥厚していなかったことより変性の進んだ上腕二頭筋長頭腱は上腕骨頭のDepressorとして機能は弱くなることが考えられ、棘上筋など上方の腱板が損傷されている症例は骨頭が上方偏位しやすいことが考えられました。

 腱板が損傷されていても理学療法により骨頭の上方偏位が改善する症例を経験することから、どの組織が原因で骨頭が上方偏位するのか、Depressorとして機能するのかを疑問に感じた論文でした。

投稿者:京都下鴨病院 中井亮佑

2015年12月14日月曜日

整形外科リハビリテーション学会シンポジウム


昨日は名古屋で平成27年度整形外科リハビリテーション学会シンポジウムに参加しました。京都下鴨病院からはBasic Symposiastとして一志有香先生が「足関節底屈制限」について、Advance Symposiastとして小野志操先生が「FAI」について発表されました。







午前のBasic Symposiumでは足関節、午後のAdvance Symposiumは股関節をテーマに8名の先生方が解剖・評価・治療を紹介され、その後の総合討論では熱い討論が行われました。

画像所見からどう考えていくか、どういった評価でどのようなことが考えられるかなど、各先生のお話すべてが勉強となりました。
知らないこともたくさん出てきて、多くの刺激を受けた一日となりました。
今以上に向上心を持って、知識・技術の向上を目指したいと思います。

小野先生・一志先生をはじめ発表された先生方、準備を行っていただいたスタッフの方々、本当にお疲れ様でした。

投稿者:吉田雄大

2015年12月10日木曜日

文献紹介:上腕回旋動脈の解剖学的知見について

本日は上腕回旋動脈の解剖学的知見について述べられている文献を紹介します。


 
魚水ら:前・後上腕回旋動脈の起始、走行、分布に関する解剖学的知見.肩関節373):911−9132013

 本日は上腕回旋動脈の解剖学的知見についてです。上腕回旋動脈は腋窩動脈から分枝する前上腕回旋動脈と後上腕回旋動脈からなり、上腕骨頭や肩関節を栄養しています。前上腕回旋動脈は夜間痛との関連している事や骨頭壊死が後上腕回旋動脈損傷との関連している事など臨床との関わりも深いです。本論文は上腕回旋動脈の走行、分布を肉眼解剖の手法を用いて解析することを目的としています。
 臨床上、上腕骨近位端骨折の症例を経験する事があるため、関連があるとされる後上腕回旋動脈について着目してみると、起始は腋窩神経から直接出るものや前上腕回旋動脈との共同枝から出るものなど個体差があるが、動脈の末端は三角筋に停止すると報告されています。
 このことから、三角筋は後上腕回旋動脈により栄養されており、動脈が損傷されると三角筋に特徴的な所見を認めるのではないかと考察しました。X線所見からも後上腕回旋動脈の損傷が予測できるため併せて評価を行い、臨床で生かしていきたいと思いました。


投稿者:中井亮佑

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