松村ら:鎖骨短縮変形が肩甲骨運動に及ぼす影響-どの程度の短縮が許容されるのか?-:屍体肩を用いた研究.骨折 第33巻NO.1 2011
この文献では献体6体、12肩を用いられています。
創外固定器を用いて0%、5%、10%、15%、20%の鎖骨短縮変形モデルを作製されています。
30°~120°までの肩関節屈曲および外転運動における肩甲骨運動を観察し、鎖骨短縮0%をコントロール群とし、他の4群(5%、10%、15%、20%)と比較されています。
10%以上の鎖骨短縮により肩甲骨の外旋運動は減少したと報告しています。
また、鎖骨短縮に伴い、肩甲骨は内方へと傾斜していく。鎖骨短縮と肩関節挙上が増加するほど肩甲骨後方傾斜が障害されることも報告されています。
鎖骨短縮により唯一障害されなかったものとして肩甲上腕リズムが挙げられています。
この文献から鎖骨の短縮変形により肩甲骨運動がどの程度障害されるのかが分かりました。
10%以上(14-20mm以上)の鎖骨短縮により肩甲骨運動に異常が生じるとされていることから臨床上稀かもしれないですが画像所見、既往歴の確認などする必要もあるのかと思います。また、当然ではありますが、骨折部位の転位、離開に気を付け、どのようなメカニカルストレスにより骨折したのか考えて理学療法を行う必要があると再認識しました。
今回は鎖骨の短縮変形について調べられていましたが、骨折部位の回旋変形など他の変形による影響は含まれていません。また、屍体を用いていることから筋など軟部組織の影響もなく実際の症例では異なる状態になる可能性があるかと思います。
三次元的に解剖学を捉え、考えていく必要があると思いました。