本日は、JOSKASの学会誌から紹介します。
『高度な痛みを伴った広範囲肩腱板断裂に対し、上方関節包再建術を行った2症例』
真生会富山病院整形外科 太田 悟先生が書かれた論文です。
大腿筋膜を用いた上方関節包再建術(以下、ASCR)は本邦の三幡先生らが開発した術式
1)
Arthroscopic Superior Capsular Reconstruction Restores Shoulder Stability and Function in Patients with Irreparable Rotator Cuff Tears May 2011Volume 27, Issue 5, Supplement, Pages e36–e37
であり、一次修復困難な大・広範囲断裂に対する修復を適応としています。
広範囲腱板断裂の病態から上下・前後方向の不安定性をきたし、その結果、骨頭上昇となり、cuff tear arthropathy に至るケースがあるが、その過程において、易出血性により関節血症に至る場合や、反応性滑膜炎を繰り返し関節水腫を引き起こすと考えられます。
今回紹介する論文では、上記の原因で関節血腫や関節水腫が引き起こされ疼痛が生じていた2症例に対してASCRを実施し、良好な結果を得たとされています。不安定性が原因で疼痛のコントロールが困難な症例であれば、骨頭上昇を防ぎ関節を安定化させる本術式が、よい適応になるのではないかとされています。
肩関節障害を考える上で、骨頭上昇によるインピンジメントが痛みを引き起こしている場合、その原因となっているものが腱板断裂によるものか、拘縮によるものか、肩甲上腕関節以外の要素なのか、、、考えないといけないことが色々あります。理学療法士も、機能解剖学的に病態を把握し治療をしていくことが大切だと思います。