今回は腰椎椎間孔狭窄に対する診断について述べられた文献を紹介させていただきます。
山田 宏、吉田 宗人:腰椎椎間孔狭窄に対する診断と手術.関節外科.vol.32 No.11 36-42.2013
腰椎椎間孔狭窄症は同じ狭窄症でありながら腰部脊柱管狭窄症とは異なる特異的な臨床兆候を呈することが知られています。腰部脊柱管狭窄症では症状緩和につながる姿勢や動作が椎間孔狭窄では逆に症状を誘発したり増悪させたりすることもあります。狭窄症よりもヘルニアとよく似た臨床症状や理学所見を呈することも特徴とされており腰部脊柱管狭窄症と鑑別するうえで重要な臨床兆候と考えます。しかしすべての腰椎椎間孔狭窄症に必ずしもこの公式が当てはまらないことを認識する必要があると著者らは強調して述べられています。
椎間孔狭窄症の臨床症状と理学所見の陽性化率の発生頻度分布をみると感受性80%以上の数値を示すものが1つとして存在しないからです。
通常、腰部脊柱管狭窄症ではSLRテストをはじめとする各種テンションテストが陽性化することは少ないですが椎間孔狭窄では、梨状筋症候群で用いられるBonnetテスト、Freibergテストの2つの誘発テストが陽性化することが多いとされています。このメカニズムを解明するために解剖遺体を用いて実験されています。
単にSLRをするだけでは神経の圧迫は増強されないが股関節の内転を加えると腰仙椎移行部の椎間孔部で神経が前方の膨隆椎間板に強くおしつけられるのが確認されています。
著者らはこの現象が梨状筋症候群の疼痛誘発テストが椎間孔狭窄でも陽性化しやすい理由と述べられています。
1つの所見にとらわれず様々な所見を組み合わせることにより病態を推察し、検査の持つ意味を解剖学的に考えることの重要性を再確認できました。
投稿者:大渕 篤樹