Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提唱した症候群であり,最尾側の腰椎横突起が肥大し仙骨との 間に関節を形成,あるいは骨癒合した症例に腰痛が生じる症候群とされています。
Bertolotti症候群と診断するためには次に述べる4 項目を満たす必要があるとされています。
①単純X線の正面像,CTで移行椎を認める。
②移行椎関節形成部周辺の圧痛 があり,伸展にて痛みが増強する。
③CT,MRIにて腰椎椎間板変性,椎間板ヘルニア,分離症を認めない。
④病変部の局所注射で直ちに疼痛が消失する。
この論文では、保存的治療に抵抗する腰痛がある、2例(28歳女性と64歳女性)に対して横突起切除を行い症状改善が得られたと報告されています。
単純x線、CTでは片側性に横突起と仙骨翼での関節形成がみられています。
横突起切除術後
Bertolotti症候群については様々な報告があります。
Quinlanらの報告では腰痛患者のMRIを調査したところ769例中35例Bertolotti症候群が存在すると報告しています。さらにそのうち30歳以下の患者においては11.4%の症例にBertolotti症候群がみられたため,若年者の腰痛患者の鑑別診断に含めるべきであると述べています。
(Quinlan, J.F., Duke, D., Eustace, S (2006) Bertolotti’s syndrome a cause of back pain in young 40 people. J. Bone Joint Surg. Br., 88 : 1183-1186.)
林らはスポーツをきっかけとして 発症したBertolotti症候群についての症例報告をしており,その患者たちが実施しているスポーツが腰椎 伸展運動を多く必要とするスポーツであることからスポーツ時の腰椎伸展運動による度重なる負荷が関節形成部の炎症反応を引き起こしているのではないかと述べています。
(林二三男,酒井紀典,西良浩一ほか (2009) スポーツをきっかけとして発症したBertolotti症候群.日 臨スポーツ医会誌.17(1)71-75)
自分の臨床の中でBertolotti症候群のような病態の腰痛症例を経験したことはありませんが
知識として念頭においておこうと思いました。
実際に脊椎疾患や腰痛患者さんの画像所見をみているとL5 椎体、横突起から仙骨翼周囲に変性を認める症例が多く、理学療法の一助となる情報が得られることも経験します。
L4、L5横突起には腸腰靭帯が付着しており、その下をL5神経根が走行しています。腸腰靭帯を切除することによりL5神経症状改善が得られたという報告から、for out syndromeとの関連も報告されており、見落としてはならない所見の1つであると感じました。
投稿者:大渕篤樹