本日の論文は、1次修復を行った棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱の術後の腱板修復状態と臨床成績、骨頭上昇、transverse force coupleの関係について調査されています。
対象は鏡視下腱板修復術後の症例。3腱完全断裂例のうち1次修復可能で2年以上経過観察が行えた30例です。上記の各項目を術前と術後で比較されています。
以下に結果の一部を抜粋しました。
①棘下筋腱の修復ができていない場合に肩峰骨頭間距離の改善が認められなかった。
②肩甲下筋腱の修復が維持された症例ではtransverse force coupleがほぼ良好であった。
③術後、棘上筋腱の再断裂群と再断裂なし群では臨床成績に有意差を認めなかった。
これらの結果から筆者は肩峰骨頭間距離の保持には棘下筋腱の機能が、transverse force coupleの維持には肩甲下筋腱の機能が重要であると考察されています。また、症例数が少ないですが棘上筋腱の修復の有無は臨床成績に大きく影響しない可能性があることも述べられていました。
骨頭を求心位に保持するための各腱板の機能を理解するのに役立つ論文でした。どの腱板が損傷することで骨頭がどの位置に変化しやすいのか、骨頭周囲の軟部組織の状態など、画像所見や理学所見と照らし合わせてより正確な病態の把握ができるよう日々精進していきます。
投稿者:佐々木拓馬