COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年11月28日水曜日

【文献紹介】大内転筋の形態的特徴と支配神経について

本日は大内転筋の形態的特徴と支配神経について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。






滝澤ら:大内転筋はなぜ大きいか?-筋の形態的特徴と支配神経からみた大内転筋の分類と機能- 日本臨床スポーツ医学会誌,Vol.19 No.32011 


この文献では献体77肢を用いて肉眼解剖され、大内転筋を4つの筋束に分けて観察されています。
AM1は第1貫通動脈より上方にある筋束。
AM2は第1貫通動脈と第2貫通動脈間にある筋束。
AM3AM2の下方で内転筋裂孔より上方外側に存在する筋束。
AM4は内転筋裂孔より下方内側に存在する筋束とされています。

大内転筋は周囲に軟部組織が多くあることからAM4のみ表在から確認することができます。
AM1AM2の間には筋周膜が発達しているため分離は容易で、AM2AM4の近位は共通腱膜から分岐しているため分離は困難であることが報告されています。
AM1AM2が閉鎖神経後枝、AM3は閉鎖神経後枝と脛骨神経の二重神経支配、AM46例が脛骨神経、1例は閉鎖神経後枝と脛骨神経の二重神経支配であったことも報告されています。


この文献から大内転筋各線維の筋の形態、走行、支配神経について理解することが出来ました。
大内転筋は観察された通り表在からは他の軟部組織が被り、確認しにくい組織です。
しっかり筋の走行、形態を確認して触診、評価する必要があると改めて思いました。
また、支配神経も一部二重神経支配となるので評価の際は参考にしたいと思います。
本文では触れませんでしたが筋の体積や筋長についても述べられています。
他の文献も読み、理解を深めていきたいと思います。



投稿者:天鷲翔太

2018年11月27日火曜日

【文献紹介】大腿骨コンポーネント回旋設置角が屈曲位軟部組織バランスに及ぼす影響;後十字靭帯温存型人工膝関節全置換術における検討

今回はCRTKAにおける大腿骨コンポーネントの回旋設置角と軟部組織の関連性について検討された文献を紹介させて頂きます。


屋良卓郎他:大腿骨コンポーネント回旋設置角が屈曲位軟部組織バランスに及ぼす影響;後十字靭帯温存型人工膝関節全置換術における検討.整形外科と災害外科.63(3)450-4542014



1720膝を対象に行われ、術中の軟部組織バランスの調整はMeasured resectionによって行われております。
※大腿骨上顆軸などの解剖学的指標を基準として回旋アライメントを決定した後に、軟部組織バランスを調整する方法
コンポーネントはEncore社製Foundation Kneeを使用されており、術後可動域は伸展-2±3°、屈曲124±8°でした。
測定指標はそれぞれX線画像を用いて、
大腿骨および脛骨コンポーネントの冠状面設置角度→MFAMTA
全下肢アライメント→HKA angle
大腿骨コンポーネントの回旋設置角度→CEA
を測定されております。
軟部組織の評価はテロスにて膝関節屈曲10°(伸展位と仮定)と80°(屈曲位と仮定)位で内外反ストレスをかけた状態で関節面の開き角を計測し、それぞれの数値で相関があるかを検討されております。


結果はCEAでは屈曲・伸展位双方で正の相関を認めていました。
また、大腿骨コンポーネントをCEAに平行に設置した場合には外側に3°緩くなり、内外反開き角の差を0°にした場合にはCEAに対して約6°外旋する傾向を認めていました。


TKAにおけるCR型コンポーネントは皆様御存知の通り、PCLを温存し、より解剖学的な膝関節の構造に近づけることが目的で使用されています。
本研究では大腿骨コンポーネントの回旋設置角度を軸として術後の軟部組織バランスを検討されており、コンポーネントの回旋設置角度を把握しておくことで術後どのような傾向になるかが推測されることが本研究で理解できました。
この他にも術後のコンポーネントのGapFTAの矯正角度など、TKA術後症例の軟部組織状態の推測は可能です。さらに、術前の軟部組織の状態も把握しておくことで、術後どの軟部組織が可動域制限の因子になり得るかも容易に検討できますね。



※定例会のお知らせ
先週行われた第129回をもちまして、本年度の定例会は全行程を終了させていただきました。来年度の定例会内容の詳細は未定となっておりますが、決定次第当学会京都支部のホームページやFacebook等で宣伝告知させて頂きます。
来年も宜しくおねがいします。


投稿者:高橋蔵ノ助

2018年11月26日月曜日

上肢の機能解剖学的ストレッチング

昨日、当学会の常任理事を勤めています鵜飼建志先生の勉強会にアシスタントとして当院の中井亮佑先生と参加させていただきました。
今回の勉強会は作業療法士を対象にした「上肢の機能解剖学的ストレッチング」についての勉強会でした。





本日の勉強会を通して3次元的に筋の走行を理解しておくこと、ストレッチングしたい筋を明確に触れる触診技術の大切さを改めて感じました。
今回は肩関節に関わる筋の講義でしたが、基本的なストレッチングの考え方を学ぶことができたのではないかなと思います。
私自身も含め、今回受講された先生方も臨床に活かしていけたらいいなと思いました。

投稿者:堀内奈緒美

2018年11月25日日曜日

第129回京都支部定例会

本日第129 回京都支部定例会が行われました。
今回は京都下鴨病院の永井教生 先生に「投球障害肘」についてレクチャーしていただきました。





野球肘はジュニア期の野球投手に多く発生するオーバーユースに起因する肘の代表的スポーツ障害です。成長期に骨が障害されるため、適切な治療がなされない場合には肘痛のみならず将来に禍根を残す骨変形なども合併する可能性があります。


 また、リハビリを受診される患者様の野球レベルは様々であり、少年野球、草野球やレクリエーションレベルから、部活動、社会人、実業団などで全国大会を目指している方々までいらっしゃいます。そのため、投球フォームの指導も非常に難しく様々なことを考慮して指導を行わなけれななりません。

この講義では永井先生が実際に臨床で行っている投球指導の工夫やポイントについて多くの事例を通して解説していただきました。








投球障害肘の治療においては解剖学的修復のみならず機能的改善が必要となるため、それらに対する評価や運動療法のポイントについて実技を交えて解説していただきました。
今回、学んだ知識・技術を明日からの臨床に活かして行きたいと思います。




第7回整形外科リハビリテーション学会関西支部合同全国研修会が2019年3月2日(土)・3日(日)の2日間開催されます。


研修会詳細

第7回関西ブロック全国研修会
「膝関節周囲の機能解剖学的触診(palpation)と治療」

会期:2019年3月2日(土)・3日(日)の2日間

会場:西はりま地場産業センター (JR姫路駅前)

東海・関東から著名な先生をお招きし,関西支部の世話人で充実した研修会を運営します。

投稿者:大渕篤樹

2018年11月21日水曜日

【文献紹介】足関節角度が腓骨筋の筋収縮に及ぼす影響について


本日は足関節角度が腓骨筋の筋収縮に及ぼす影響について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。





川井ら:足関節角度が腓骨筋トレーニングに及ぼす影響 日本臨床スポーツ医学会誌,Vol.20 No.32012 


この文献では健常成人7名を対象にセラバンドを使用し、足関節底背屈0(中間位)からの足部外返し運動、また最大底屈位(底屈位)からの外返し運動時の長腓骨筋の筋力を表面筋電図を用いて測定されています。
表面筋電図を設置した筋は長腓骨筋、前脛骨筋、総趾伸筋です。

全例において中間位から開始した外返し運動では長腓骨筋のみでなく、前脛骨筋、総趾伸筋
の活動が観察され、底屈位から開始した外返し運動では前脛骨筋、総趾伸筋の活動はほとんどなく、長腓骨筋有意の筋活動となっていたことを報告しています。
長腓骨筋の筋活動量は中間位から開始した時よりも底屈位から開始した方が増加していたとも報告されています。

この文献から長腓骨筋がより活動しやすいのは足関節底屈位での外返し運動であるとわかりました。長腓骨筋や周囲の筋の形態、走行からも予測できるかとは思いますが実際にどの程度の違いがあるのか筋電により明らかになりました。
また、今回は割愛しましたが中間位、底屈位での筋力トレーニング後の筋力差や実際の症例でのトレーニング前後の筋力差を検証されています。
臨床での評価、運動指導の際に参考にしたいと思います。




投稿者:天鷲翔太

2018年11月20日火曜日

【文献紹介】大胸筋と小胸筋の筋線維の走行からみた運動療法

今回は大胸筋と小胸筋の筋束の構成について検討された文献を紹介させて頂きます。



荒川高光:大胸筋と小胸筋の筋線維の走行からみた運動療法.理学療法学37(4):203206,2010

解剖屍体を用いて大胸筋と小胸筋の筋束構成を支配神経とともに詳細に観察し、さらに大胸筋と小胸筋の筋束構成を骨格模型上にゴム紐を張って再現し、上肢の肢位を変えた際の筋束構成の変化を調べられています。
結果は以下の通りです。
・大胸筋
鎖骨部線維:鎖骨内側前面から外下方へ走行し、大結節稜の最も遠位に付着している。
胸肋部線維:鎖骨部線維の深層を外側へと走行。胸肋部線維の中でも下から起始する筋束が上から起始する線維よリ後方かつ近位へと停止している。
腹部線維:腹直筋鞘前葉から外側上方へと走行し、後面に折り返る構造をし、筋束がポケット状になっていた。そして、肩関節90°屈曲すると大胸筋の鎖骨部線維と胸肋部線維の間にあったねじれ構造が消失し、腹部線維はほぼ全ての筋束が平行に並んだ。
・小胸筋
小胸筋を貫いている神経を境に上部筋束と下部筋束に分け、発達度や重なり方から見て2つのタイプに分類されています。
Type1
下部筋束が主体となり、上行して烏口突起へと停止する。上部筋束は比較的外側へと走行し、下部筋束の停止腱へと付着しており、ねじれ構造は見られなかった。
Type2
上部筋束は下部筋束の前へと重なり、下部筋束の停止腱の表面を走行し、下部筋束よりも外側へと停止し、ねじれ構造を呈していた。
骨模型でType2の筋束を再現し、ねじれ構造が消失するポジションを探した結果、肩甲骨の上方回旋、前方突出で消失していた。

ねじれ構造が消失した肢位である90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出、上方回旋位は臨床においても多くみます。スポーツ動作時では、その後に大胸筋と小胸筋を強く使用することを必要とする肢位もあり、肩関節90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出・上方回旋位をとり、そこからすべての筋線維の収縮力を動員して、その後の活動を行っているのかもしれないと筆者は考察しています。


90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出で大胸筋・小胸筋のねじれ構造が消失し、かつ伸張されることから90°程度の可動域制限の位置要因としてねじれ構造の消失に至っていないことが予測できます。これが可動域制限であった場合、どのような所見が取れるのか機能解剖を踏まえて考えていく必要があると感じました。

投稿者:高橋蔵ノ助

2018年11月18日日曜日

【文献紹介】足の生体力学

本日は文献の中の距腿関節の接触面積について述べられている部分を紹介させていただきます。


君塚葵:足の生体力学.日本関節外科学会誌Ⅳ(1),1987:75〜85

新鮮切断肢を用いて検討されています。
中間位での荷重時接触面積を測定しています。
その結果、前方部分と外側部分が接触し、内後方は接触しないことがわかりました。
圧センサーシートを用いて圧分布を測定した検討では、最大応力は中央付近にあることがわかりました。
距骨が転位した状態の接触面積についても述べられています。
過去の報告ではRiedeは距骨が1mm内方あるいは外方に転位するか、1°内反あるいは外反すると接触面積は50%以上減少、Martinekは腓骨骨折のわずかな転位でもAnkle mortiseを変化させ、関節面の3mm以上の転位では50%以上接触面積が減少すると報告しています。
関節軟骨はfunctional stress部で厚さが増すとされているが、距骨滑車面では前方部と中央部で最も厚いことがわかり、内外側で比較すると前方と中央部では内側が後方部では外側が厚い傾向にあると報告しています。
距骨滑車面の肉眼的観察では粗造化、ビードロ状化、欠損を前方と内側により多くに認めると述べています。

今回紹介させていただいた文献から中間位では距腿関節は前方と内側にて軟骨面が接触していることがわかりました。
これは立位時に接触する軟骨面の状態とも関わることが考えられ、天蓋部分での骨折や距骨軟骨損傷などにおいて荷重を行うときに念頭に置いておきたい知識であると感じました。
また小さな転位でも距腿関節面の接触が50%以上減少することがわかりました。骨折による転位以外でも、距腿関節の不安定性が生じると軟骨の接触面積は変化してくることが考えられ、OA changeさせないためにも関節の安定性の獲得は重要であると再認識しました。

【文献紹介】非特異的腰痛について

本日は非特異的腰痛について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。


 最近では腰痛に関する論文をみていると、非特異的腰痛が85%という数字が一人歩きして腰痛のほとんどが原因不明ということが臨床や世間一般にも拡がっている印象をもちます。

この論文では、2015年4~5月に山口県内の整形外科を受診した腰痛患者320人(男性160人、女性163人、平均年齢55.7歳)を対象として、神経症状も画像上の異常もない腰痛患者に対し、詳細な診察に基づき想定される病態に対する局所麻酔剤を用いたブロックを行うことにより、従来であれば非特異的腰痛と診断された患者の実に78%は「椎間関節性腰痛」「筋・筋膜性腰痛」「椎間板性腰痛」「仙腸関節障害」などのいずれかに分類可能であったと報告されています。


そもそも非特異的腰痛とは米国の内科医であるDeyoが提唱したものであり、整形外科医が症例ごとに神経所見を含めた身体所見を把握し、適応を考慮しつつ保存療法・手術的治療を考え使い分けている実情とは異なるという意見もあります。

 筋などの損傷や炎症はX線の検査では見つけにくく、画像所見だけでは見逃しやすいため、これらの腰痛が非特異的腰痛として扱われていた可能性が高いとも述べられています。

 つまり、今まで非特異的腰痛といわれた腰痛患者に対して丁寧に理学所見をとるとことで診断がつくケースがあるということです。
病態が明確になれば、それに応じた適切な治療方針が立てられ、有効な治療を行うことが出来ると考えます。

実際に画像上明らかな異常所見を認めない腰痛症例を多く経験していますが、理学所見を抽出することで、ある程度病態分類することは可能であると感じています。
画像所見上明らかな病変は示さなくても、その画像の中に糸口になるような情報がたくさんあるようにも思えます。

今後も安易に非特異的腰痛と諦めることなく、腰痛の原因追求する努力を続けなければならないと思いました。


投稿者:大渕篤樹

2018年11月14日水曜日

【文献紹介】Lisfranc靭帯の関節制動について

本日はLisfranc靭帯の関節制動について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。






早稲田ら:第1・第2中足骨間における靭帯性制動の分析 日本臨床バイオメカニクス学会誌,Vol.191998 


この文献では新鮮凍結切断肢を4肢用いて観察されています。
また、①非切離群、②Lisfranc靭帯の表層を切離する群、③②に加え中間層を切離する群、④③に加え深層を切離する群の4群に分け、足部肢位と圧負荷を加え動態を観察されました。
測定されている骨間距離については内側楔状骨-第2中足骨間距離(C1M2)、第1-第2中足骨間距離(M1M2)を測定されています。


4群ともC1M2M1M2共に足部肢位の変化、圧負荷の有無による有意差はなかったと報告されています。
また、各群間での比較では足部肢位、圧負荷の有無に関わらず、表層切離群と中間層切離群との間でC1M2M1M2共に有意な変化がみられたことも報告しています。

この文献から靭帯性の制動が最も大きいのが中間層の靭帯であることが分かりました。
しかし、今回の検討では骨間距離のみの測定でアーチの高さはみられていません。また、圧負荷も30kgと小さいので実際に荷重している状態と同じではありません。
臨床で活かしていけるよう勉強していきたいと思います。


投稿者:天鷲翔太

2018年11月13日火曜日

【文献紹介】骨軟骨移植術における移植軟骨の力学的特性

今回は骨軟骨移植術における移植軟骨の力学的特性について研究された文献を紹介させて頂きます。



中路教義、藤岡宏幸ほか:骨軟骨移植術における移植軟骨の力学的特性.中部整災誌2005.48267-268


 骨軟骨移植術後の荷重時期については移植した軟骨が生着するまでは慎重に行うべきというものや骨軟骨骨片の安定性が得られるので早期に荷重できるというものまで様々な報告があります。そこでこの文献では移植された骨軟骨骨片の力学的特性と組織学的解析を行っています。

 方法は日本白色家兎12匹に対し骨軟骨移植を行い、術直後および術後1,3,8週に硬度測定装置を利用した力学的解析を行った後、HE染色し組織学的に解析をしています。

 結果は、力学的解析では術直後は健常軟骨より硬度が増すが、術後18週までは健常部より統計学的に有意に低値であったとしています。しかし、術後8週では3週と比較して増加に転じていたとのことです。また、組織学的解析では、術後3週で軟骨下骨での骨癒合が確認され、術後8週で関節軟骨部での連続性を認めたと報告しています。まとめると術後3週では軟骨下骨において骨癒合は認められますが、硬度に関しては力学的に十分強固なものではないということです。


 骨軟骨損傷ではInternational Cartilage Repair Society(以下、ICRS)分類が治療法の選択においても有用とされています。その中でもICRS分類の期にあたるものに対し、軟骨欠損が小さい場合は自家骨軟骨移植術、大きい場合は自家培養軟骨細胞移植術が施行されます。今回の文献は前者をモデルとして行われた研究であるため、自家培養軟骨細胞移植術に対しても、この報告が適用となるのかは疑問が残ります。どちらに対しても理学療法を展開していく際には、軟骨移植部位の位置、圧迫力を考慮し、運動角度に配慮することが大切です。また荷重時期に関しては主治医と相談をした上で進めていくことが重要であると思います。

投稿者:高橋蔵ノ助

2018年11月12日月曜日

【文献紹介】橈骨遠位端骨折においての前腕回外制限因子について

本日は橈骨遠位端骨折などにおいて超音波動態考察で前腕回外制限の因子について文献紹介をさせていただきます。
橈尺骨骨幹部骨折や橈骨遠位端骨折など、前腕や手関節の外傷後、前腕回内外の制限は多くみられますが、前腕の回旋制限に対する理学療法を実施する際は、その制限因子を明確にしたうえでの運動療法が必要不可欠となります。
回旋制限の要因として、
橈尺骨の骨性アライメント異常、近位及び遠位の橈尺関節の不適合、橈尺骨間をつなぐ軟部組織の瘢痕によるものなどが考えられます。前腕回外運動時の尺骨頭の動態を観察し回外の制限因子となる軟部組織を検討されています。関節の動作に伴う周囲の組織の動態を知ることは、制限因子となる組織を明確にすることが出来ると考えます。制限因子を明確にしアプローチを行っていこうと思います。



尺骨遠位部の超音波動態観察よりみた前腕回外制限に関する一考察
日本整形外科超音波研究会会誌Vol.22 No.1 2010

【文献紹介】正常人の肩関節運動時の肩甲骨の傾き

本日紹介させていただく文献は正常人の挙上時の肩甲骨上方回旋について検討された文献です


白浜克彦他:正常人の肩関節運動時の肩甲骨の傾き.肩関節20(1),1996: 97-102

肩関節運動時の連続的な動きを測定し、肩甲骨の上方回旋角を検索することを目的としています。
対象は28〜66歳までの正常男性10例10肩です


肩甲骨の3点間の距離を算出し、検討されています。
上肢挙上角度は便宜上20°から130°まで10°ごとに肩甲骨の上方回旋の推定値を求め変化を調べています。
年齢を50歳以下と51歳以上に分けて変化を検討しています。
結果は以下の通りでした。
上方回旋角は上肢挙上20°〜130°までに平均34.9±6.9°増加しました。
肩甲上腕関節と肩甲骨の平均2.2:1.1の割合で動いていました。
しかしこれは一定の値を示していませんでした。
上肢下降時は130°〜20°までに肩甲骨の上方回旋角は43.7±9.6°減少しました。
肩甲上腕関節と肩甲骨は平均1.5:1の割合で動いていました。
これも一定の傾向を示しませんでした。
年齢べつに検索すると50歳以下では上方回旋角は20°〜130°までに平均32.0±8.1増加しました。
51歳以上では上方回旋角は平均37.8±4.8°とより多く増加していました。
上肢下降時では130°〜20°までに50歳以下では43.4±11.3°、51歳以上では44.0±8.9°減少しました。
筆者は正常肩であっても高齢になると退行性変化により肩甲上腕リズムは変わると考えられると述べています。

上肢挙上角度は同じ範囲内で運動しているにも関わらず、挙上時と下降時の肩甲上腕リズムが異なるという結果はとても興味深い結果であると感じました。
個体差はあるもののなぜそのような結果になるのかまた調べてみたいと思います。





2018年11月11日日曜日

【文献紹介】Bertolotti症候群について

本日はBertolotti症候群について紹介させて頂きます。





Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提唱した症候群であり,最尾側の腰椎横突起が肥大し仙骨との 間に関節を形成,あるいは骨癒合した症例に腰痛が生じる症候群とされています。

Bertolotti症候群と診断するためには次に述べる4 項目を満たす必要があるとされています。
①単純X線の正面像,CTで移行椎を認める。
②移行椎関節形成部周辺の圧痛 があり,伸展にて痛みが増強する。
③CT,MRIにて腰椎椎間板変性,椎間板ヘルニア,分離症を認めない。

④病変部の局所注射で直ちに疼痛が消失する。


この論文では、保存的治療に抵抗する腰痛がある、2例(28歳女性と64歳女性)に対して横突起切除を行い症状改善が得られたと報告されています。
単純x線、CTでは片側性に横突起と仙骨翼での関節形成がみられています。



横突起切除術後




Bertolotti症候群については様々な報告があります。
Quinlanらの報告では腰痛患者のMRIを調査したところ769例中35例Bertolotti症候群が存在すると報告しています。さらにそのうち30歳以下の患者においては11.4%の症例にBertolotti症候群がみられたため,若年者の腰痛患者の鑑別診断に含めるべきであると述べています。
(Quinlan, J.F., Duke, D., Eustace, S (2006) Bertolotti’s syndrome a cause of back pain in young 40 people. J. Bone Joint Surg. Br., 88 : 1183-1186.)


林らはスポーツをきっかけとして 発症したBertolotti症候群についての症例報告をしており,その患者たちが実施しているスポーツが腰椎 伸展運動を多く必要とするスポーツであることからスポーツ時の腰椎伸展運動による度重なる負荷が関節形成部の炎症反応を引き起こしているのではないかと述べています。
(林二三男,酒井紀典,西良浩一ほか (2009) スポーツをきっかけとして発症したBertolotti症候群.日 臨スポーツ医会誌.17(1)71-75)


自分の臨床の中でBertolotti症候群のような病態の腰痛症例を経験したことはありませんが
知識として念頭においておこうと思いました。
実際に脊椎疾患や腰痛患者さんの画像所見をみているとL5 椎体、横突起から仙骨翼周囲に変性を認める症例が多く、理学療法の一助となる情報が得られることも経験します。
L4、L5横突起には腸腰靭帯が付着しており、その下をL5神経根が走行しています。腸腰靭帯を切除することによりL5神経症状改善が得られたという報告から、for out syndromeとの関連も報告されており、見落としてはならない所見の1つであると感じました。


投稿者:大渕篤樹

2018年11月10日土曜日

【文献紹介】小円筋の形態とその神経支配の解剖学的解析

本日は、小円筋の筋繊維束の構成とその神経支配を調査している論文を紹介させていただきます。



対象は解剖実習体1020(男性8肩、女性12肩、平均年齢75)です。肉眼解剖で小円筋の筋繊維束の構成とその神経支配を調査し、組織学的調査で小円筋の筋腱移行部と上腕骨停止部を中心に組織切片から小円筋の層構造を解析されています。


結果は
①小円筋の停止は上腕骨大結節後縁下部のみでなく上腕骨外科頚まで停止している。
②棘下筋との間に腱性の筋膜組織があり筋間を分けているが、遠位では消失している。
③小円筋の筋腱移行部付近では上・下部の筋束に分かれて二頭筋をなしており、二つの筋束はねじれて起始と停止で位置関係が変化している。
④上腕骨への停止部では上部筋束の厚い腱として大結節後縁下部に楕円形上に面で停止し、下部筋束は上腕骨外科頚に垂直に線状に停止している。また、上部より下部筋束で筋繊維が多い。



今回の結果から、小円筋の付着が思った以上に下方に広く付着していること、筋束の走行、腱の構造より二つの筋束に分かれていることが確認できました。今回得た知識を参考に肩関節の運動を考える際に小円筋の動態をより詳細に捉えて臨床に活かしていきたいと思います。


投稿者:小林 駿也

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