COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年10月29日月曜日

第7回 関西支部合同全国研修会申込受付開始ご案内

第7回整形外科リハビリテーション学会関西支部合同全国研修会
案内ポスター

プログラム
第7回整形外科リハビリテーション学会関西支部合同全国研修会が2019年3月2日(土)・3日(日)の2日間開催されます。

参加申込受付開始は2018年11月1日(木)からとなっています。

参加申込受付は整形外科リハビリテーション学会研修会参加申込専用ホームページより

研修会詳細

第7回関西ブロック全国研修会
「膝関節周囲の機能解剖学的触診(palpation)と治療」

会期:2019年3月2日(土)・3日(日)の2日間

会場:西はりま地場産業センター (JR姫路駅前)

東海・関東から著名な先生をお招きし,関西支部の世話人で充実した研修会を運営します。

治療講義内容
1.膝関節周辺組織の超音波画像描出〜LIVE〜
 岸田敏嗣先生 (株)運動器機能解剖学研究所
2.膝伸展制限に対する評価と運動療法
 小野志操先生 京都下鴨病院
3.膝蓋骨骨折に対する評価と運動療法
 松本正知先生 桑名市総合医療センター
4.変形性膝関節症の歩行時痛に対する評価と運動療法
 八木茂典先生 東京関節外科センター昭島整形外科

参加費:22,000円(学会会員) ・ 25,000円(非会員)
定員:90名

申込受付期間:2018年11月1日-12月31日
定員に達し次第、申込受付を終了します。
*添付ファイルを送付しますので,メールアドレスはなるべくPCアドレスをご記入下さい。

その他:B検定を1日目(3月2日)の午前中に実施します。
会員でB検定を受検予定の先生は,自動返信メールの内容をご確認のうえ,改めてメールでのお申し込みをお願いいたします。なお,B検定申込者多数の場合は抽選になりますので,ご了承ください。

最新情報は神戸支部のBlog(http://seikeireha-kobe.blogspot.com/)からご確認ください。

2018年10月28日日曜日

【文献紹介】結合組織の創傷治癒より見た肩関節周囲炎の病態と治療

本日紹介させていただく文献は修復過程と肩関節拘縮の病期とを比較し、肩関節周囲炎の病態について検討されている文献です。


青木光広:結合組織の創傷治癒より見た肩関節周囲炎の病態と治療.肩関節29(3),2006:621-624

臨床病期に相当する肩関節包の病理を文献的に検討し、結合組織の創傷治癒との関連性を見出すことを目的としています。
文献的検討を行っています。

痙縮期
関節包の充血と浮腫が発生しており、関節包内に肉芽組織を形成します。創傷治癒では急性炎症期に当たります。
拘縮期
関節包の線維化と肥厚が生じ、関節包の容量が減少し、疼痛が持続し可動域制限が進行
創傷治癒ではリモデリング期に相当します。
この時期に過度なストレスをかけると瘢痕内の膠原線維が断裂し、新たに炎症を惹起することになります。
緩解期
慢性炎症が消退し疼痛と可動域制限が緩解します。
創傷治癒ではリモデリング成熟期に相当し、線維芽細胞と毛細血管が退縮し、膠原線維の架橋結合が増加し柔らかく強い膜様瘢痕を構成します。
拘縮の病期と治癒過程とを比較していくと上記の様になったと述べています。
肩関節周囲炎の治療を行うにあたり重要な点は、関節包に新たな損傷刺激が加わらない様に関節を保護し、血流を改善することが重要であると考察しています。
理学療法においても外傷を与えない適度なストレスを関節包に与えることでリモデリングを促していくことが必要であると述べています。

組織修復を考慮した理学療法を展開することは非常に重要であると感じています。肩関節拘縮においても理学療法開始時、治癒過程のどの時期にあるのか、可動域拡大を図って積極的に動かしていくべきなのか、急性炎症期で安静を要するものなのか考えて行う必要性を改めて感じました。

第128回京都支部定例会

本日第128回京都支部定例会が行われました。
今回は京都下鴨病院の中井 亮佑先生に「投球障害肩」についてレクチャーしていただきました。









投球障害肩といっても肩関節のどの部位が壊れるかで病態が異なります。本日はその中でも関節唇、特に上方関節唇がはがれる上方関節唇損傷(SLAP lesion)に焦点をあててレクチャーしていただきました。













投球障害肩には様々な病態がありますが、投球動作の何が肩関節障害を起こすか、投球障害肩の治療においては解剖学的修復のみならず機能的改善が必要となるため、それらに対する評価や運動療法のポイントについて実技を交えて解説していただきました。

今回、学んだ知識・技術を明日からの臨床に活かして行きたいと思います。



次回の定例会は11月24日です。
内容は「投球障害肘」についてです。定例会の参加には事前申し込みが必要になります。
申し込みは11月1から始まります。
定員に達し次第申し込みを終了とさせていただきますので,下記URLより、お早めにお申し込みください。

https://seikeigeka.blogspot.com/


投稿者:大渕篤樹


2018年10月26日金曜日

【文献紹介】肩関節拘縮に対する保存療法

本日紹介させていただく文献は、肩関節拘縮に対して保存療法の適応を検討された文献です。


君塚康一郎他:肩関節拘縮に対する保存療法の検討.肩関節30(3):515-518,2006

肩関節拘縮に対して保存療法の適応を明らかにすることを目的として、保存療法のみを行い、治療成績とそれに影響を及ぼす因子について検討しています。
可動域制限と疼痛を訴えて受診した患者のうち、MRIおよび肩関節造影にて腱板断裂がない、頸椎疾患がない、全身性疾患を有さず、肩関節拘縮と診断できた68例68肩としています。保存療法の方法は、関節造影時にjoint distension、ヒアルロン酸ナトリウム溶液の関節内注射、PTのよるリラクセーションと可動域訓練、cuff exercise、自主トレーニング指導、激しい肉体労働やスポーツを制限としています。
検討項目はrotational glide群とprelotational glide群の2群に分類、他動可動域score,疼痛scoreJOA score、年齢、性別、他動可動域、発症から初診までの期間、外傷の有無です。
さらに6ヶ月後にpostrotational glideまで改善した群を改善群、そうでなかった群を不良群とし比較しています。
結果はrotational glide群よりprerotational glide群は有意に外傷歴のある症例が多い結果となりました。また保存療法にてrotational glide群は全例6ヶ月以内にpostrotational glideまで改善しました。prerotational glide群の改善群が32肩、不良群が16肩であり、有意差を認めたのは発症から初診までの期間と外傷歴でした。
今回の肩関節拘縮の定義で評価するとrotational glide群は全例症状が改善しており、保存療法が有効であることがわかったと考察しています。
prerotational glide群は発症から初診までの期間が長い症例や外傷歴の無い症例が症状改善していたことから、保存療法が有効であるとわかったと述べています。これに対して筆者は発症から初診までの期間と外傷の有無との間に関係性はなく、期間が長い症例緩徐に拘縮が進行し、短い症例においては急速に進行したことを示していると述べています。


発症から初診までの期間が長い症例は癒着以外にも軟部組織の短縮や柔軟性の低下といった病態が混在しているため、保存療法にて良好な成績が出たのではないかと考えられました。一方発症から初診までの期間が短い症例に関しては強い炎症により癒着していることが成績不良の原因ではないかと思いました。拘縮肩症例においてリハビリ開始までの期間の聴取は大まかな病態把握に有用である感じました。

2018年10月24日水曜日

【文献紹介】CCL再建術後のX線画像評価について

本日はCCL再建術後の骨孔のX線画像評価について書かれている文献を紹介させていただきます。






新関ら:鎖骨遠位端骨折におけるZip Tightを用いた烏口鎖骨靭帯再建術の骨孔についての術後X線評価 骨折 第40巻 No.3 2018

この文献ではZip Tightを用いた烏口鎖骨靭帯(CCL)再建術を行い、術後半年以上経過観察可能であった鎖骨遠位端骨折6例を対象に観察されています。
X線評価は永井ら(2012)を参考に骨孔の大きさを以下の様に評価されています。
→ほぼ閉鎖:grade1、縮小:grade2、ほぼ同等:grade3、拡大:grade44段階で評価

最終経過観察時の骨孔の大きさはgrade12例、grade31例、grade43例で、grade43例は半年までに骨孔が拡大し、以降はプラトーとなっていた。
また、grade12例は術後半年頃から骨孔が縮小傾向を示していたと報告しています。
最終経過観察時の肩鎖関節は骨孔が拡大した3例に軽度の亜脱臼を認めたとも評価しています。

この文献の症例では術後3週間の三角筋固定が行われていますが理学療法の介入やROMの記載等はありませんでした。
今回の報告を見ていると術後半年までに骨孔が拡大したのは3例でした。
またその3例の詳しい経過を見ていると骨孔が急激に大きくなるのは術後2カ月までで、その後は少しずつ拡大していく様子を確認出来ました。
このことからも術後2カ月、骨癒合がしっかり得られるまでは鎖骨骨折部にストレスをかけないようにしていく必要があるのではないかと思いました。
他の術式や報告も参考にし、臨床に活かしていきたいと思います。




投稿者:天鷲 翔太

シンポジウムのお知らせ

おはようございます。
最近は空もすっかり秋模様になってきましたね。

この時期になると待っているのが、12月に行われる本学会のシンポジウムではないでしょうか。毎年様々なテーマで当学会の認定グレードA以上を所持されている先生方が臨床成績を向上させるための考え方や工夫点などについて熱く討論されています。
詳細はこちらです。



日時:平成30129日 9301230
会場:吹上ホール(学術集会が行われた場所です)
参加費:会員・学生 2,000円 非会員 5,000



今回のテーマは超音波エコーの活用法です。臨床上でも病態把握に用いられる先生は多いのではないでしょうか?最新の知見や自身のエコーに対する知識の再認識をできるとてもいい機会ではないでしょうか?

事前申し込み等は不要です。まだ少し日程は先ですが、今から予定を空けておくといいですね!


投稿者:高橋 蔵ノ助

2018年10月21日日曜日

第8回KKCM、第2回肩の看護研究会に参加して来ました

10/20に大阪で行なわれました第8回KKCM、第2回肩の看護研究会に参加して来ました。
今回のテーマは「肩のトータルケアを目指して」でした。




各施設のDr、Nsが各部署で志している事、徹底していることなどを講演して下さり、チーム医療として患者様一人一人が満足した医療を受ける為に重要な事を学ぶ事が出来ました。
講演後のディスカッションもDr同士のレベルの高い討論、他職種との関わりについての討論もとても勉強になることばかりでした。





もっとチーム医療としてより良い医療が提供できるよう他職種との連携をとっていく必要があると感じました。


投稿者:小林 駿也

第45回日本肩関節学会・第15回肩の運動機能研究会に参加しました。


2日間にわたって大阪で開催された第45回日本肩関節学会、第15回肩の運動機能研究会に参加させていただきました。臨床で多くの肩関節疾患を担当させていただく機会があり、今回初参加であることも相まってより気合を入れて臨みました。複数の会場で膨大な演題数があり、かなり迷いましたが今回はリバース型人工肩関節やエコーのお話を中心に聞くことができました。どのお話も充実した内容で最新の知見、ドクターの考え方、臨床で役立つ情報など多くの事を学ぶことができました。また、理解力、知識量、伝え方など自分の能力不足も痛感しました。

 当院からは永井教生先生が主題で「結帯動作時の烏口腕筋と上腕二頭筋短頭の形態変化と弾性との関係」を発表され、シンポジストも務められました。わかりやすい発表と質疑に対する適切な応答は完璧で勉強させていただきました。






 学会で得た情報を臨床に活かすとともに今回は参加のみでしたので、次回は学会発表も挑戦しようと思います。

 

投稿者:佐々木拓馬

2018年10月20日土曜日

【文献紹介】腱板断裂に伴う上腕二頭筋長頭腱障害の組織学的検討について


本日は腱板断裂に伴い障害を生じた上腕二頭筋長頭腱(LHB)の組織学的性状を検討された論文を紹介します。


対象は腱板完全断裂と診断され、術中所見にてLHBの扁平化を認めて腱固定術に至った55肩から採取したLHB5標本です。標本として採取されたLHBは結節間溝入口部から関節内にかけての部分であり、最も扁平化の著しい部分を中心に腱の断面を長軸方向に切り出して組織学的検討が行われています。

 結果では扁平化したLHBに膠原繊維束の肥大は認めず、膠原繊維の断裂や波状構造の消失、粘液変性などが認められ、また膠原繊維束の間隙に毛細血管の増生を伴う肉芽組織もあったと報告されていました。著者らは結果に対して機械的ストレスあるいは組織の損傷に対する修復反応であると考察されており、メカニズムとして肩峰下腔でのインピンジメントなどによる直接損傷が原因ではないかと予測されていました。

 今回の報告からLHBの損傷メカニズムは腱板断裂後に生じる骨頭上方化による機械的張力ストレスよりもインピンジメントなどの直接損傷の可能性があることがわかります。臨床の中でLHBに痛みを訴える症例をよく経験するので画像所見と理学所見を照らし合わせて病態解釈が正確にできるよう努力していきます。

 

投稿者:佐々木拓馬

2018年10月17日水曜日

【文献紹介】超音波診断装置を用いた外側広筋の動態について

本日は超音波診断装置を用いて観察された外側広筋の動態について書かれている文献を紹介させていただきます。







中村ら:超音波診断装置を用いた膝屈曲自動運動時の外側広筋の動態観察 愛知県理学療法学会誌 第27巻 第1号 2015


この文献では成人男性1020肢を対象に超音波診断装置を用いて外側広筋(VL)の動態観察をされています。
測定はBモードで、測定部位は大腿骨外側上顆から大転子までの距離の遠位30%の位置でVLと大腿二頭筋、大腿骨が同一画面上に表示される部位にプローブを当てて短軸像を撮影されています。
被験者は伸展位から90度屈曲位までの膝関節屈曲自動運動を行っています。

伸展時の画像から屈曲までの間にどのようにVLが変化しているのかを見るために伸展時の画像からVLが動いた距離を測定され、膝関節屈曲角度との関係を観察されました。

膝関節屈曲に伴い、VLは平均10.9mm後内側に偏位していることが観察されたことを報告しています。


この文献からは膝関節伸展位から屈曲90度までのVLの動態が分かりました。
このことから膝関節屈曲動作を行う際にVLが後内側に動けるだけのゆとりが必要となることが考えられます。
また、今回はVLの一部を観察されていますが他の組織との筋間や他の部位での動態も勉強して臨床に活かしていきたいと思いました。



投稿者:天鷲 翔太

【文献紹介】胸腰椎圧迫骨折の臨床経過と予後予測

今回は胸腰椎圧迫骨折の予後不良因子を検討された文献を紹介させて頂きます。



久芳昭一他:胸腰椎圧迫骨折の臨床経過と予後予測.整形外科と災害外科.59(2)3683712010


対象は胸腰椎圧迫骨折を受傷した男性15例、女性28例、平均年齢は73歳であり、VAS 50%以上の痛みの有無、最終観察時の椎体圧潰新効率30%以上の有無、後弯進行が10°以上の有無により2群化し、MRI(中野分類)にて後壁損傷の有無や年齢、性別、受傷時椎体圧潰率、受傷時後弯度との関連を検討されています。

結果は、疼痛持続郡と椎体圧潰進行群は後壁損傷を有する例と男性で有意差を認めていました。
後弯進行郡は後壁損傷を有する例で有意差を認めていました。
これらの他に、胸腰椎以降部の損傷はその他の部位での圧迫骨折に比べ優位に圧潰進行率が高く、疼痛持続郡においては有意に椎体圧潰進行率、後弯進行度が高かったと述べています。


腰椎圧迫骨折の受傷起点は様々ですが、臨床上よく目にするのは、高齢者の転倒や交通外傷などではないでしょうか。
観血的治療においては、椎体形成術や近年ではBKP(Balloon Kyphoplasty)などが行われています。保存療法の場合、コルセット装着による運動制限を設け、骨癒合を促すということになります。


保存療法を患者様が選択された場合、今回の文献での情報が予後経過観察の一つの指標になるのではないかと考えられました。


投稿者:高橋 蔵ノ助

2018年10月16日火曜日

【文献紹介】手根管症候群手術中に見られた横手根靭帯・正中神経・指屈筋総腱滑液鞘の変化

今回は手根管症候群に関する文献について述べられた文献を紹介させて頂きます。



松崎昭夫:手根管症候群手術中に見られた横手根靭帯・正中神経・指屈筋総腱滑液鞘の変化手根管症候群発症メカニズムの一考察,整形外科と災害外科,59(2)231-2342010


この文献では実際に手根管開放術を施行された305例の術中所見を元に、手根管症候群にみられる特徴的な所見や、手根管症候群の発症する原因について考察し、述べられています。

手根管症候群は横手根靭帯の肥厚や正中神経との癒着、滑膜の肥厚、屈筋腱鞘の肥厚や癒着などにより生じるとされています。


その中でも、手根管断面は手根管入り口部から22.5cmの部分で最も狭くなるとされており、横手根靭帯は第3中手骨底近位と有頭骨遠位部で最も膨隆しているとされ、両部はおおよそ同じ位置であると述べられています。
正常でもこのような構造をしていることに加え、横手根靭帯の肥厚により神経を圧迫するリスクが増大することも予測されます。また、この横手根靭帯肥厚部では、その深層に正中神経が存在し、さらにその深層には示指・中指の浅指屈筋、さらに深指屈筋が順に配列しています。

横手根靭帯による表層からの圧迫に加えて、浅指屈筋の過緊張状態での指や手関節の屈曲による深層からの度重なる圧迫が正中神経を絞扼する原因として最も多いと述べられています。
また、症例によっては、正中神経のすぐ横に長母指屈筋や虫様筋が存在し、それらが神経を圧迫する要因のひとつであるとも述べられています。


正中神経の保存療法では、手根管内圧を減少させること、神経の圧迫を緩和すること、神経との癒着を剥離することが重要であるとされていますが、この文献から、手指の屈筋の緊張を緩和することも正中神経への圧迫を軽減することにつながると考えられ、機能的な神経絞扼による手根管症候群では理学療法が有効であることが示唆されることが考えられました

投稿者:高橋蔵ノ助

【文献紹介】膝蓋骨可動性が前額面上回旋角度の変化に及ぼす影響

本日は、立位での膝関節屈曲運動が膝蓋骨可動性に及ぼす影響とその変化量について文献紹介します。

方法
開始肢位:体幹垂直位で膝関節屈曲0°位
屈曲角度0°~60°までの各10°ごとの膝蓋骨回旋角度を6箇所計測しています。
※計測に関してはレントゲンを用いて、大腿骨軸と膝蓋骨上端-下端を結んだ直線がなす角度を膝蓋骨回旋角度としています。

 結果
膝関節屈曲角度の増大に伴い外旋角度は増大傾向にあった
屈曲0°と比較し40°~60°で有意な増加を示したと報告しています。
また、変化量は屈曲0°~10°での外旋角度の増大が最大であったと報告しています。

膝関節は屈曲・伸展運動時において膝蓋大腿関節では膝蓋骨が大腿骨顆間溝上を滑走するとともに、膝蓋大腿関節の適合性を保つために前額面上で回旋運動が生じる膝関節屈曲運動に伴い、膝蓋骨は前額面上で7°の外旋、水平面上で11°の内旋運動を行うことが知られています。前者はFrontal Rotation、後者はCoronary Rotationと呼ばれています。徒手的に膝蓋骨の運動を促す際には非荷重での操作が多かったですが、荷重時での運動を考えなければならない事もたくさんあります。膝蓋骨の運動を評価する際には、荷重時・非荷重時と条件を変えた中での膝蓋骨の運動にも着目して行く必要があると感じました。

2018年10月15日月曜日

【文献紹介】肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証

今回は健常肩と拘縮肩で肩甲胸郭関節の運動パターンと筋活動を比較、検討した文献を紹介させていただきます。


長谷川聡他:肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証.理学療法学41(2):86-87,2014


本研究は筋電図と3次元動作解析装置を用いて運動パターンを解析されています。
対象は健常人17名と拘縮肩症例15名で、方法は4秒で上肢を挙上する運動を連続で5回行い、その時の肩甲骨の運動と筋活動を測定し、上肢挙上10°毎に肩甲骨の角度と平均筋活動を算出しています。
測定筋は、僧帽筋上部線維、僧帽筋下部線維、前鋸筋です。
拘縮症例においてはリハビリを施行し、3ヶ月と6ヶ月に肩甲骨の運動パターンと筋活動について再評価しています。

結果は健常群が挙上初期では肩甲骨は前傾し、その後挙上角度が増加するのに伴い、後傾していき、挙上100°で後傾位となり、その後も大きく後傾方向へ大きく運動する結果となりました。上方回旋に関しては30°120°において直線的に増加しました。
筋活動は僧帽筋上・中部線維、前鋸筋は上肢挙上に伴い、直線的に増加し、挙上110°付近から僧帽筋上部線維はプラトーになり、下部線維と前鋸筋に関しては活動が急激に高まる結果となりました。

拘縮群における肩甲骨運動パターンは肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋、後傾運動の欠如が多くの症例で認めました。
筋活動パターンは僧帽筋上部線維の過剰な筋活動、下部線維と前鋸筋の筋活動の低下を認めた症例を多く認めました。
また、拘縮群に対して肩甲骨機能のトレーニングを集中的に実施した結果、初回に認めた僧帽筋上部線維の過活動と僧帽筋下部線維の低活動が6ヶ月後には僧帽筋上部線維の活動は抑制され、下部線維の活動が増加しました。

筆者は健常者の結果から上肢挙上初期〜中盤にかけて肩甲骨上方回旋を担う僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋をバランスよく働かせる必要があり、上肢挙上最終域の獲得には下部線維と前鋸筋の十分な筋力活動が必要であると述べています。
また、2群を比較すると各挙上角度において僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋の活動パターンが異なり、上肢挙上に必要な肩甲骨の上方回線がスムーズに行えていないことが分かったと述べています。


この文献から拘縮症例において上方回旋、後傾運動の欠如を認め、筋活動においては僧帽筋上部線維の過活動、下部線維と前鋸筋の低活動であることがわかりました。今回はこれら肩甲骨周囲筋に対してトレーニングを施行することで筋活動を正常に近づけ、上方回旋可動域を獲得しています。この文献を読んで、まず肩甲骨の上方回旋、後傾可動域を獲得し、その上で僧帽筋下部線維と前鋸筋の筋活動を高めていく必要があると感じました。

実は私も1ヶ月ほど前にバイク事故にて肩甲骨骨折を受傷し、現在もリハビリの最中です。上肢挙上はかなりできるようになってきましたが、やはり肩甲骨の上方回旋がスムーズに行えず、まだまだ頑張っていかないといけないと感じております。

肩関節における関節拘縮の原因は多くありますが、やはり肩甲帯の動きは重要であることがこの文献や自身の経験にて再認識できました。

投稿者:高橋蔵ノ助

【文献紹介】拘縮肩のマニプレーション

本日紹介させていただく文献は拘縮肩症例に対してマニピュレーションを実施し、その術後成績を見た文献です。


田畑四郎他:拘縮肩のマニプレーション−成績と成績影響因子−.肩関節18(2):405-409,1994

夜間痛などの激しい痛みと著しい運動制限を示す症例に対して非観血的マニプレーションを行なっています。その成績と成績に与える背景因子について後顧的解析を行ったものを報告されています。
対象は可動域は挙上90°、外旋20°、内旋L5以下のいずれかを示し、関節造影にて特徴的な拘縮の像を示す54例55関節としています。
対象の発症原因は誘引なし:35関節、軽微な外傷や交通事故:20関節でした。
拘縮の様式は、初発症状は疼痛が最初で可動域制限が生じた:40関節、可動域制限が生じてから疼痛が出現:8関節、疼痛と可動域制限が同時に出現した:7関節です。
結果は術後ほとんどの症例でJOAスコアが90点以上になり、疼痛軽減しています。
マニピュレーション前後で腋窩陥凹と前内側関節包に拡大しました。
初期の目的に適う成績を挙げることができない症例も見られました。
これらの症例の背景因子を見ると、術前の症状のトリガーが外傷であったことが有意に関与していたと報告しています。
マニプレーション後に腱板断裂を認める症例がいたが、変性断裂であり、マニプレーションによって生じたとは考えにくいと述べています。
マニピュレーションによる疼痛軽快の理由として腋窩陥凹と前内側関節包が拡大をあげています。
疼痛の強い症例は内圧が下げにくいことが挙げられるとしているが、今後の解明が必要であると筆者は述べています。

今回の対象となった症例と同程度の拘縮がある症例においては腋窩陥凹、前内側の関節包の関与が大きいことが考えられました。
対象となった症例と同程度拘縮があっても保存療法で治療する症例は多いと思います。マニピュレーションによって腱板損傷がないことからも腋窩陥凹や関節包へのアプローチが非常に重要であることがわかりました。

2018年10月10日水曜日

【文献紹介】膝窩筋の機能解剖について


本日は膝窩筋の機能解剖について書かれている文献を紹介させていただきます。





渡辺ら:膝関節後外側支持機構の機能解剖 整形外科バイオメカニクス Vol.131991


対象は屍膝115膝で、膝関節屈伸時の膝窩筋各部の伸縮を測定する目的で新鮮膝5膝を用いられています。
膝窩筋の筋腱付着部前端、後端、腱中央部前端、後端、筋腹遠位端の最下部、最上部にマーカーを装着されています。

膝関節屈曲に伴い膝窩筋腱前方線維は緊張し、脛骨に外旋ストレスを加えると強調され、内旋ストレス下で減弱したと報告されています。
膝窩筋腱後方線維は膝関節屈曲に伴い弛緩し、内外旋ストレスを加えてもほぼ不変であったことも報告しています。
筋腹に関しては膝関節の屈曲角度に関わらず、ほぼ一定の長さであったことを報告されています。

この文献から膝関節屈曲時の膝窩筋の伸張・弛緩の動態が分かりました。
また、今回は紹介していませんが膝窩筋の付着部の違いについて、屍体を用いて観察されていました。
組織の形態や運動時の動態を学び、日々の臨床に活かしていきたいと思いました。



投稿者:天鷲 翔太

2018年10月9日火曜日

【文献紹介】等張性収縮における小殿筋筋活動と中殿筋筋活動の比較

今回、紹介する文献は等張性収縮における小殿筋筋活動と中殿筋筋活動の比較についてです。

室伏祐介他:等張性収縮における小殿筋筋活動と中殿筋筋活動の比較.理学療法科学.31(4).597-600.2016


 小殿筋は股関節深層に位置しており、関節の安定性に関与しています。日常生活動作の中では片脚立位や歩行後に中殿筋よりも小殿筋の方が高い筋活動を認めたという報告も散見されます。その小殿筋の筋力強化に関しては等尺性外転運動において股関節伸展10°と外転20°での低負荷運動により小殿筋の収縮率が高いと過去に報告がありますが、今回の文献では等張性運動における小殿筋の筋活動に着目されています。

 対象は健常成人14名(平均年齢24.4歳)であり、方法としては小殿筋と中殿筋にワイヤ電極を留置した状態で側臥位にて股関節外転から20°までの運動を5回実施しています。負荷量の設定には最大筋力の20%40%、60%で計測しています。

 結果は負荷量20%と60%で小殿筋の方が有意に筋活動量が高く、特に負荷量20%で筋活動量が高くなったと報告しています。低負荷での等張性外転運動で小殿筋の筋活動量が高くなった理由としては、小殿筋の作用でもある骨頭を求心位に保持する働きが関わっていると考察されています。


 今回の報告から動作における小殿筋の働きを向上させるためには等尺性運動だけではなく、関節運動を伴う等張性運動において低負荷で行うことの重要性を確認できました。


投稿者:高橋蔵ノ助

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