本日は、荷重による大腿骨下端部に生じる回旋トルクについて報告されている文献を紹介させていただきます。
高柳雅欣ら:下肢変形に及ぼす大腿骨負荷の影響についての実験的検討. 臨床バイオメカニクス,Vol.37,2016.
この研究は大腿骨に対する鉛直方向荷重が下肢変形に及ぼす影響を実験的に検討することを目的に行われており、モデル大腿骨の骨頭に対して鉛直方向に荷重を与える圧縮試験を実施し、大腿骨下端部に生じる回旋トルクを計測した結果について報告されています。
方法は、大腿骨モデルを使用し、矢状面から見た際に大腿骨内穎を結んだ線が鉛直になるように設定した線を基準として、後傾0°、10°、20°となるように設定しています。圧縮荷重は大腿骨頭に鉛直方向に最大100Nを5回ずつ行っています。
結果の一部を紹介させていただきます。各固定位におけるトルクは、すべての固定位において内旋トルクが検出され、大腿骨後傾角度が大きくなるにつれてトルクも増大したと報告しています。
測定器で検出された内旋トルクは、大腿骨に作用しているトルクの反力としてのトルクであるため、大腿骨近位には外旋トルクが生じていることになり、著者らは、これらの結果より、長期間にわたる回旋トルクは大腿骨の外旋化を引き起こすなど、膝OA発症の要因の一つであると考えています。
自分自身、膝OA患者さんを担当させていただく機会が多く、一つの要因で解決することは少ないと日々の臨床にて感じています。今回、調べていく中で、膝OA患者さんに対して疼痛を訴える部位に対する評価だけでなく、まずはアライメント評価を行い全体を捉えてから局所に着目していく大切さを改めて感じました。
投稿者:小林 駿也
投稿者:小林 駿也