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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2019年2月27日水曜日

【文献紹介】SLRテストについて考える


Straight Leg Raising test(以下SLRテスト)は腰椎椎間板ヘルニアなど腰下肢痛を評価する有名な検査手技であり、皆さんもよくご存じだと思います。
カルテなどにSLRテスト陽性またはSLR(+)と記載していることがあります。しかし、SLRテストを行った際に疼痛が出現する部位、下肢の角度、患者の訴えも様々であり、検査結果は何を意味しているのか、どう解釈すべきが今更ながら考えさせられることが多々あります。

本日は、SLRテストの定義に関する報告をまとめた論文について一部紹介したいと思います。

      


SLRテストに関する報告を調査した結果、SLRは使用目的により疼痛評価、筋力評価、柔軟性評価に細分類され、SLR(+)の定義は評価者によりさまざまであったとされています。とりわけ、疼痛評価の場合、SLR(+)とする疼痛誘発部位は腰部、下肢、坐骨神経痛などであり、角度も70~80度以下と多様であり一定の見解が得られていません。本研究よりSLR(+)の定義は目的や疼痛部位によりさまざまであり教科書レベルでも統一された定義がないことが明らかになったと報告されています。そのため、SLR(+)の定義を明確にしていない報告の解釈には注意が必要であるとこの論文では述べられています。

SLR テストの疼痛発現機序は、臀部筋の圧迫ではなく、坐骨神経の伸張であることが解剖遺体で証明されています。
( Wertenberg R. Neurology. 1956 )( Wilkins RH, Brody IA. Arch Neurol. 1969 )

しかしSLRでは多くの関節(脊椎、仙腸関節、股関節など)の運動がおこり様々な軟部組織が伸張されるため、どの組織が痛みを拾っているのか鑑別していく必要があります。


通常、腰部脊柱管狭窄症ではSLRテストをはじめとする各種テンションテストが陽性化することは少ないですが椎間孔狭窄では、梨状筋症候群で用いられるBonnetテスト、Freibergテストの2つの誘発テストが陽性化することが多いという報告もあります。このメカニズムを解明するために解剖遺体を用いて研究された報告では、単にSLRをするだけでは神経の圧迫は増強されないが股関節の内転を加えると腰仙椎移行部の椎間孔部で神経が前方の膨隆椎間板に強くおしつけられるのが確認されています。

(山田 宏、吉田 宗人:腰椎椎間孔狭窄に対する診断と手術.関節外科.vol.32 No.11 36-42.2013)

著者らはこの現象が梨状筋症候群の疼痛誘発テストが椎間孔狭窄でも陽性化しやすい理由と述べられています。

検査の持つ意味を理解すると何が知りたいのかによって検査の目的も、捉え方も変わってくると思います。
1つの所見にとらわれず様々な所見を組み合わせることにより病態を推察していくことが大切であり、理学療法のおもしろいところだと感じます。未熟ながら勉強を続けていきたいと思います。

投稿者:大渕篤樹

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