本日は腱板断裂に伴い障害を生じた上腕二頭筋長頭腱(LHB)の組織学的性状を検討された論文を紹介します。
対象は腱板完全断裂と診断され、術中所見にてLHBの扁平化を認めて腱固定術に至った5例5肩から採取したLHB5標本です。標本として採取されたLHBは結節間溝入口部から関節内にかけての部分であり、最も扁平化の著しい部分を中心に腱の断面を長軸方向に切り出して組織学的検討が行われています。
結果では扁平化したLHBに膠原繊維束の肥大は認めず、膠原繊維の断裂や波状構造の消失、粘液変性などが認められ、また膠原繊維束の間隙に毛細血管の増生を伴う肉芽組織もあったと報告されていました。著者らは結果に対して機械的ストレスあるいは組織の損傷に対する修復反応であると考察されており、メカニズムとして肩峰下腔でのインピンジメントなどによる直接損傷が原因ではないかと予測されていました。
今回の報告からLHBの損傷メカニズムは腱板断裂後に生じる骨頭上方化による機械的張力ストレスよりもインピンジメントなどの直接損傷の可能性があることがわかります。臨床の中でLHBに痛みを訴える症例をよく経験するので画像所見と理学所見を照らし合わせて病態解釈が正確にできるよう努力していきます。
投稿者:佐々木拓馬