本日紹介させていただく文献は拘縮肩症例に対してマニピュレーションを実施し、その術後成績を見た文献です。
田畑四郎他:拘縮肩のマニプレーション−成績と成績影響因子−.肩関節18(2):405-409,1994
夜間痛などの激しい痛みと著しい運動制限を示す症例に対して非観血的マニプレーションを行なっています。その成績と成績に与える背景因子について後顧的解析を行ったものを報告されています。
対象は可動域は挙上90°、外旋20°、内旋L5以下のいずれかを示し、関節造影にて特徴的な拘縮の像を示す54例55関節としています。
対象の発症原因は誘引なし:35関節、軽微な外傷や交通事故:20関節でした。
拘縮の様式は、初発症状は疼痛が最初で可動域制限が生じた:40関節、可動域制限が生じてから疼痛が出現:8関節、疼痛と可動域制限が同時に出現した:7関節です。
結果は術後ほとんどの症例でJOAスコアが90点以上になり、疼痛軽減しています。
マニピュレーション前後で腋窩陥凹と前内側関節包に拡大しました。
初期の目的に適う成績を挙げることができない症例も見られました。
これらの症例の背景因子を見ると、術前の症状のトリガーが外傷であったことが有意に関与していたと報告しています。
マニプレーション後に腱板断裂を認める症例がいたが、変性断裂であり、マニプレーションによって生じたとは考えにくいと述べています。
マニピュレーションによる疼痛軽快の理由として腋窩陥凹と前内側関節包が拡大をあげています。
疼痛の強い症例は内圧が下げにくいことが挙げられるとしているが、今後の解明が必要であると筆者は述べています。
今回の対象となった症例と同程度の拘縮がある症例においては腋窩陥凹、前内側の関節包の関与が大きいことが考えられました。
対象となった症例と同程度拘縮があっても保存療法で治療する症例は多いと思います。マニピュレーションによって腱板損傷がないことからも腋窩陥凹や関節包へのアプローチが非常に重要であることがわかりました。
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
2018年10月15日月曜日
人気の投稿
-
文献紹介 大腿骨転子部骨折において後外側支持欠損が lag screw sliding に与える影響 (徳永真己・他 : 骨折 第35巻、98-102、2013) 大腿骨転子部骨折をshort femoral neck (SFN) で...
-
今回は小胸筋腱について述べられている文献の紹介をさせていただきたいと思います。 臨床で肩関節拘縮の患者さんの評価をしているとRotator interbalの拘縮を呈している方は多いと感じています。RIの拘縮を改善することは必要なことだと考えていますがなかなか難し...
-
本日は Bertolotti症候群について紹介させて頂きます。 Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提唱した症候群であり,最尾側の腰椎横突起が肥大し仙骨との 間に関節を形成,あるいは骨癒合した症例に腰痛が生じる症候群とされています。 ...
-
市川耕一ら:上腕二頭筋長頭腱断裂が広範囲腱板断裂肩に及ぼす影響.関節外科. Vol31 . No7 . 64-69 , 2012 上腕二頭筋長頭腱( LHB )の損傷や腫脹は腱板損傷と併発し、臨床においても肩関節周囲炎の方でよく見られます。本日は、 LHB ...
-
今回は、撓骨遠位端骨折に対してロッキングプレート固定が施工され、術後に長母指屈筋腱(以下 FPL )が断裂した症例について検討されている文献を紹介させていただきます。 三原惇史他:撓骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート固定術後の長母指屈筋腱断裂.整形外科と災害外科. ...