本日紹介させていただく文献は変形性股関節症患者における股関節と腰椎の可動域の関係についてです。
田島ら:整形外科と災害外科 56:626~629,2009
本研究では変形性股関節症患者における股関節と脊椎の前屈時の動作関係を明らかにするために、立位中間位および座位前屈位の単純X線側面像を用いて股関節可動域と腰椎可動域を測定されています。
対象は初回人工股関節全置換術(THA)を受けた40~88歳(平均62歳)の変形性股関節症の女性患者164例です。腰椎可動域は仙骨上縁と第2腰椎上縁のなす角度の中間位と前屈位における差で、股関節可動域は仙骨上縁と大腿骨軸のなす角度の中間位と前屈位における差と定義されています。これらから腰椎可動域と股関節可動域の相互関係、年齢との関係を比較されています。
結果
腰椎可動域は4~85°(平均44°)で、高齢者ほど可動域は小さく、年齢との有意な負の相関を認めたと報告されています。
股関節可動域は8~126°(平均64°)で、前屈時の可動域が小さい症例(30°以下)は全例65歳未満の中高年者であったと報告されています。
各可動域の関係性については股関節可動域の小さい症例では腰椎可動域が大きく、逆に股関節可動域が大きい症例では腰椎可動域が小さく、有意な負の相関がみられたと報告されています。
本研究結果から、高齢者では前屈動作を主に股関節で行っており、原因とすると腰椎の変性により可動域制限が生じていることが挙げられます。逆に股関節の可動域制限があると腰椎で代償しようとするためover useによる疼痛が生じる可能性があります。
これらのことから、前屈制限がある者に対して何由来の可動域制限なのか、どの関節が動いていて制限されている関節がどこなのかを確実に評価し、見極める必要があることを再確認しました。
投稿者:小林 駿也
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
人気の投稿
-
本日は、 TKA 施行時の Lateral release と膝蓋大腿関節(以下 PF 関節)の関係について書かれた文献について紹介させていただきます。 近藤 桂史他:人工膝置換術時の Lateral release と膝蓋大腿関節 Gap との関連性.整...
-
本日は、肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響を検討した論文を紹介させていただきます。 高橋康弘、振甫 久ら 他:肩関節周囲炎による夜間痛が関節可動域の予後に及ぼす影響 第 51 回日本理学...
-
本日の文献紹介は、以前京都支部でも症例検討として相談させていただいた腓骨筋腱脱臼に対する手術方法についての書かれている文献です。 Du Vries : Surgery of the foot . Mosby . Jan 1986 腓骨筋腱脱臼を整復する方...
-
今回は肩甲下筋腱断裂に対する関節鏡下 Suture-bridge 法についての文献を紹介させていただきます。 酒井忠博ら:肩甲下筋腱断裂に対する関節鏡下 Suture-bridge 法 JOSKAS. Vol40. No1. 2015 ...
-
前足根管症候群に類似した症状がある症例を経験したため調べています。 レビュー論文になりますが紹介させていただきます。 解剖 深腓骨神経は、足の上3分の1では、深腓骨神経は長趾伸筋と前脛骨筋の間に位置し、下3分の1では長趾伸筋腱の下を通る。前脛骨動脈の外側で、足関節のすぐ近位で長母...