本日は肩関節外転運動での生体3次元、関節上腕靭帯の機能長評価についての文献を紹介させて頂きます。
この論文では、mid range motionにおける生体内での関節上腕靭帯の変化を調査することを目的にされています。
方法は、生体内3次元動態解析システムおよび関節上腕靭帯の解剖研究から、肩関節外転運動における上肢自重下での関節上腕靭帯の3次元距離を計測し、動態に伴う距離変化を評価されています。
結果ですが、肩関節外転0°から60°まではSGHLが機能し、外転60°から90°ではMGHL、外転90°以上ではAIGHLが関節安定性に寄与していたとされています。
この論文の結論としては、mid range motionにおいては、各GHLが連動しながら、これら3つのGHLが異なる外転肢位でそれぞれが機能し肩甲上腕関節の安定性に寄与すると述べています。
この論文では肩関節不安定症に焦点を当てて、関節包靭帯の研究をされていますが、肩関節拘縮の症例を考える際にも必要な情報であると感じました。
上肢を挙上する際には骨頭が下方に下がる必要があり、この動きを制限する一つの組織としてIGHLが考えられますが、このIGHLが拘縮しており外転90°までの可動域を獲得できていなければ骨頭の下方への動きは制限されます。そのため、外転90°をいかに肩甲上腕関節で獲得出来るかは挙上に必要な要素であると考えています。
肩関節症例では評価・治療に難渋することが多く、解剖学的背景をもとに治療プランを立てていくことがより良いアプローチにつながることは日々実感させられます。今後も治療につながる幅広い知識、技術を日々の臨床から身につけていきたいと思います。
投稿者:小林 駿也