今回は腱板断裂を認めない肩インピンジメント症候群の肩峰下滑液包(SAB)鏡視所見とMRI所見の関係性を検討されている文献を紹介させていただきます。
佐々木誠人他:肩インピンジメント症候群の肩峰下滑液包鏡視所見とMRI所見の比較検討:整形外科と災害外科:49(1).149-152.2000
対象は肩インピンジメント症候群と診断され、術前MRI検査後に関節鏡視下肩峰下滑液包除圧術を施行され、術後3ヶ月以上の経過観察を行われた治療効果が得られた男性24肩女性16肩(平均年齢49歳)です。
肩峰下滑液包鏡視所見から、筆者は以下の3つのタイプに分けられています。
・肩峰下面摩耗型(27肩)
肩峰下面を中心に鳥口肩峰アーチ下に摩耗所見があるもの
・腱板炎型(10肩)
腱板上面の摩耗や肥厚があるが肩峰下面の摩耗所見が明らかでないもの
・烏口肩峰靭帯(CAL)肥厚型(3肩)
肩峰側と腱板側で摩耗所見が明らかでないが、烏口肩峰靭帯の肥厚を認めるもの
MRIは斜位前額面と斜位矢状画像にてT2starにて評価されており、いずれかで明らかな高輝度変化が見られるものを所見ありとされ、SAB部と腱板部を調べられています。
結果ですが、SABの高輝度変化の所見があったものは全体の80%、ないものが20%であり、腱板部に関しては所見があるものが18%、ないものが82%でありました。タイプ別でみると、肩峰下摩耗型ではSABが49%でSABと腱板両方が22%であり、所見なしが27%でした。腱板炎型ではSABが80%、両方が10%、所見なしが10%であり、CAL肥厚型ではSABが100%でした。
肩峰下インピンジメント症候群は鳥口肩峰アーチとSAB・腱板との間で生じる衝突現象とNeerが提唱しており、解剖学的破綻と機能的破綻から疼痛が生じるとされています。これらの病態が根本にあることからも、本研究は病態に基づいた結果が導き出されたのではないかと思われます。また、どのタイプにおいてもSABが高輝度になっていたことから、SABへの過度なストレスが大きな原因であることもわかります。
このことから、やはり肩峰下インピンジメント症候群症例に対しては、SABへのストレスを軽減させることが治療時の第一選択になるのではないかと考えられます。そのため、SABにストレスがかからざるを得ない軟部組織の状態を評価することが重要になるため、今後の臨床では再度軟部組織の評価を事細かに行うことを再確認できました。
投稿者:高橋 蔵ノ助