本日は無症状者における腰椎MRIの前向きに調査について、論文を紹介させて頂きます。
この研究では、腰痛、坐骨神経痛、または神経性の間欠性跛行を経験したことがない67名の健常者に対して脊椎のMRI検査を実施しています。スキャンは、被験者の臨床症状の有無について知識のない3人の神経放射線科医によって独立して解釈されています。
結果、被験者の約3分の1が実質的な異常を有することが判明しました。60歳未満の人のうち、20%が椎間板ヘルニア、1人は脊柱管狭窄症でした。60歳以上のグループでは、スキャンの約57パーセントで所見が異常を示していました。対象の36パーセントが椎間板ヘルニアを、21パーセントが脊椎狭窄を示しました。29〜39歳の被験者の35%、および60〜80歳の被験者のうちの1人を除く全員において、少なくとも1つの腰椎レベルの椎間板の変性または膨隆がみられたと述べられています。
無症候性の患者におけるこれらの所見を考慮して、MRI所見の異常は、手術治療が企図される前に、年齢およびあらゆる臨床的徴候および症状と厳密に相関しなければならないと結論づけています。
これは、脊椎のみにいえることではなく、その他の関節においても同じことが言えると考えます。肩では無症候性の腱板断裂、下肢では股関節唇損傷や半月板損傷などでも画像上では構造的破綻を認めますが臨床症状とマッチングしないことがあります。
画像所見は病態を推察する上で重要な情報となりますが、画像所見にとらわれて先入観をもって評価をしてしまうと隠れている病態を見落としてしまい、カンファレンスの中で指摘を受けることも多く経験します。
問診、画像所見、理学所見など様々な所見を統合し病態解釈を行っていくことを意識して毎日の臨床を大切にしていきたいと思います。
理学療法士の中では動作や姿勢を観察、分析して機能障害を推察するトップダウン評価が推奨されていることもあるそうですが、それだけでは何かを見落としてしまう可能性も考えられます。
動作をみることは重要な所見となりますが、あくまで1つの所見であり他の所見と統合し病態を推察することが重要と考えます。
投稿者:大渕 篤樹