今回はCR型TKAにおける大腿骨コンポーネントの回旋設置角と軟部組織の関連性について検討された文献を紹介させて頂きます。
屋良卓郎他:大腿骨コンポーネント回旋設置角が屈曲位軟部組織バランスに及ぼす影響;後十字靭帯温存型人工膝関節全置換術における検討.整形外科と災害外科.63(3).450-454.2014
17例20膝を対象に行われ、術中の軟部組織バランスの調整はMeasured resection法※によって行われております。
※大腿骨上顆軸などの解剖学的指標を基準として回旋アライメントを決定した後に、軟部組織バランスを調整する方法
コンポーネントはEncore社製Foundation Kneeを使用されており、術後可動域は伸展-2±3°、屈曲124±8°でした。
測定指標はそれぞれX線画像を用いて、
大腿骨および脛骨コンポーネントの冠状面設置角度→MFA、MTA
全下肢アライメント→HKA angle
大腿骨コンポーネントの回旋設置角度→CEA
を測定されております。
軟部組織の評価はテロスにて膝関節屈曲10°(伸展位と仮定)と80°(屈曲位と仮定)位で内外反ストレスをかけた状態で関節面の開き角を計測し、それぞれの数値で相関があるかを検討されております。
結果はCEAでは屈曲・伸展位双方で正の相関を認めていました。
また、大腿骨コンポーネントをCEAに平行に設置した場合には外側に3°緩くなり、内外反開き角の差を0°にした場合にはCEAに対して約6°外旋する傾向を認めていました。
TKAにおけるCR型コンポーネントは皆様御存知の通り、PCLを温存し、より解剖学的な膝関節の構造に近づけることが目的で使用されています。
本研究では大腿骨コンポーネントの回旋設置角度を軸として術後の軟部組織バランスを検討されており、コンポーネントの回旋設置角度を把握しておくことで術後どのような傾向になるかが推測されることが本研究で理解できました。
この他にも術後のコンポーネントのGapやFTAの矯正角度など、TKA術後症例の軟部組織状態の推測は可能です。さらに、術前の軟部組織の状態も把握しておくことで、術後どの軟部組織が可動域制限の因子になり得るかも容易に検討できますね。
※定例会のお知らせ
先週行われた第129回をもちまして、本年度の定例会は全行程を終了させていただきました。来年度の定例会内容の詳細は未定となっておりますが、決定次第当学会京都支部のホームページやFacebook等で宣伝告知させて頂きます。
来年も宜しくおねがいします。
投稿者:高橋蔵ノ助