【背景】
1974年にFrank JobeがTommy Johnに対して初めて尺側側副靱帯(UCL)再建術を施行して以来、この手技はアスリートを元のプレーレベルに戻すことに成功してきた。同レベル以上でのプレー復帰率は83%から95%と報告されている。にもかかわらず、再手術に要する時間は依然として相当なものである。
より新しい技術の出現と、傷害の現象に対するより洗練された理解により、UCL整復術に対す る関心が再び高まっている。Savoieら16は2008年に、アンカーを用いた修復手技の有望な結果を発表し、60人中56人が同じレベルのスポーツに復帰し、うち58人は術後6ヵ月以内に復帰した。私たちは、コラーゲンでコーティングされたファイバーテ ープ(Arthrex社製)を追加することで、修復手技を修正した。この補強は、外反ストレスに対するバックストップとして、また靭帯の治癒のための生物学的補強として機能するように設計されている。私たちは、この手技により、傷害を持つ患者において、UCL再建術と同様のプレー復帰の結果が得られ、リハビリテーションに要する時間が短縮されると仮定した。
【目的】
オーバーヘッド競技選手における、internal brace補強を伴うUCL修復の新しい手技の臨床結果を評価すること
【対象と方法】
2013年に行われた最初の手術から、当院で3人の外科医によりinterenal braceUCL修復術を受けた全患者を前向きに追跡した。アウトカムデータは、術後1年と術後2年に2つの方法で収集された。スポーツ復帰の有無、その時点で行っていたスポーツのレベル、競技復帰までの時間を確認した。さらに、Kerlan-Jobe Orthopaedic Clinic(KJOC)質問票を実施し、術後合併症の有無を記録した。
【術式】
muscle spritting approachにより展開する。(伊藤恵康先生により考案された展開方法で、内側上顆から鉤状結節を触知し総屈筋群を線維方向に縦割してUCLを展開する方法である)尺骨神経移行術を行うかどうかの判断は、術前の尺骨神経症状の有無に基づいて行われた。
次にUCLをその線維に沿って分割した。靱帯は断裂の位置と組織の質を目視で評価した。中間損傷、著しい組織の変性、および/または、UCLを結節下部または内側上顆のいずれかに再接近できないような組織欠損は、修復を進めるための相対的禁忌とされた。上記のような靭帯組織の質の術中評価に基づいて、UCLの修復術か再固定術のいずれかを行うか決定した。修復はInternalBrace(Arthrex社製)を用いて行った。オーバーヘッドスローイングのコホートでは、3.5mmのSwivelLockアンカー(Arthrex)を使用した。最初のアンカーは断裂部に留置し、コラーゲンを浸したFiberTapeと0 Fiber-Wire(Arthrex社製)を装填した。アンカーは2.7mmのドリルで留置し、アンカーのサイズに合わせてタッピングした。フリーニードルを用い、0ファイバーワイヤーをUCLにマットレス状に通した。この際、断裂した組織を内側上顆または鉤状結節のUCLフットプリントに再接近するように縛った。残りの靭帯は0 TiCron縫合糸(Medtronic社製)を用いて閉鎖した。2本目のアンカーは、コラーゲンを浸潤させたファイバーテープでゆるくテンションをかけながら、反対側の付着部位に留置した。張力をテンプレート化するため、アンカー の3本目の糸とアンカー用のドリル穴の位置が合うように、ブレースに十分な弛みを持たせた。アイレットをドッキングさせ、アンカーをドリル穴の開口部まで前進させた。肘の可動域を測定し、適切な張力を確認した。アイソメトリーを達成するために、内側上顆アンカーの始点はUCLの付着部の中心とした。結節下トンネルの中心は、関節から約6~8mm遠位で、結節下結節の隆起のやや前方に配置した。トンネルは尺骨の関節面からやや離間する方向に穿孔した。私たちの内側上顆トンネルは、UCL再建のために作製されたトンネルと同様の方向で穿孔され、内側上顆の後上方境界に向かって近位からやや側方に向けて穿孔された。
【結果】
本研究の対象となった111名のオーバーヘッド選手のうち、92%(102名/111名)が同等以上の競技レベルへの復帰を希望し、平均6.7ヵ月で復帰することができた。これらの患者の最終追跡調査時の平均KJOCスコアは88.2点であった。
【結論】
internal brace補強を伴うUCL修復術は、従来のUCL再建術よりも短期間でのスポーツ復帰を希望する、選択されたUCL損傷を有するアマチュアオーバーヘッドスローイング選手にとって、実行可能な選択肢である。
投稿者:尼野将誉