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2015年8月15日土曜日

アスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術


今回はアスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術についての文献を紹介します。


亀井ら:アスリートの関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨細胞移植術 臨床スポーツ医学:vol 30.No4(2013-4)


 関節軟骨は血管、神経やリンパ管を欠き、また細胞密度が低いため、通常の組織修復機転が起こりにくく、自己修復能力がきわめて乏しい組織です。現在の関節軟骨損傷に対する治療としては骨穿孔術(drilling法、microfracture法)、骨軟骨柱移植術などが一般的な方法として広く行われています。しかし、各方法にはそれぞれ問題点が指摘されており骨穿孔術は線維性軟骨での再生であり、将来的に再び変性が進んでくることが挙げられています。また骨軟骨柱移植は、本来の硝子軟骨で被覆することが可能ですが、軟骨修復部の曲率がことなること、採取部が限られ広範囲の軟骨損傷には適応しにくいなどが挙げられています。これらの問題点から関節軟骨を確実に硝子軟骨で修復することは困難であると考えられてきましたが、近年の組織工学や再生医療の進歩により、自家培養軟骨細胞移植術(以下ACI)が注目されています。ACIは非荷重部の関節軟骨より分離した軟骨細胞を培養により増やし、その培養軟骨(以下JACC)を骨膜にてパッチした軟骨欠損部に移植するという手技です。

 今回の文献ではこのACIについてスポーツ選手に行った治療成績を手術手技、患者因子、有症状期間、損傷部位・範囲の各項目で現在まで報告されている成績を紹介しています。治療成績のみに着目するとACIによる治療が最も有効であると考察していますが、過去の報告の中には、ACI後の移植部は12ヶ月では線維軟骨様であり、平均19.5ヶ月で硝子軟骨様組織になるため経過とともに移植部が成熟していくと述べられています。以上の報告を踏まえるとスポーツ復帰には1~2年以上の期間が必要であるため、早期復帰を望むスポーツ選手には適用の決定に難渋するのではないかと考えられます。

 当院においてもJACCを用いたACI術後の患者さんを担当する機会が増えてきていますので、手術手技や特徴を理解することはとても大切であると感じています。また運動療法を行う上で気をつけなければならないことや組織の修復過程に合わせた思考を持つためにも、これまでの運動療法においての報告を読み、臨床に還元していきたいと感じました。

投稿者:服部隼人

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