今回は膝蓋骨上脂肪体(以下SPF)が膝関節屈曲時にどのように変化していくのかを超音波画像診断装置を用いて観察された文献を紹介させていただきたいと思います。
豊田ら:膝関節屈曲時の膝蓋骨上脂肪体の動態観察 超音波画像診断装置を用いた膝蓋骨上脂肪体の大腿四頭筋腱側長の観察 第48回日本理学療法学術大会(名古屋) P-A運動-103
SPFは膝蓋骨上端と膝蓋上嚢前面、大腿四頭筋腱遠位後面で形成される三角形を埋めるように存在し、機能としては膝関節屈曲時の大腿四頭筋腱の滑走や伸展機構の効率を高めることや大腿骨と膝蓋骨間での膝蓋上嚢のインピンジメントを予防することとこれまでの研究で報告されているそうです。しかし、膝関節運動時のSPFの動態に関する報告はほとんどないため、観察・検討されました。
対象は健常男性10名の左下肢とし、測定肢位を背臥位としています。SPFの大腿四頭筋腱側の長さ(以下:腱側長)の測定には膝関節伸展時および屈曲90度・120度・最大屈曲・正座時の長軸像を超音波画像診断装置にて撮影されています。
文献では膝関節伸展時から90度、120度、最大屈曲、正座の順に腱側長は増加したと報告されています。また、増加率について、膝関節伸展はその他の膝関節屈曲角度、膝関節屈曲90・120度では最大屈曲・正座時、最大屈曲は正座時に有意差があったとも報告しています。
この文献の報告から膝関節屈曲角度の増加に伴い、SPFの腱側長は増加していくことが分かりました。このことから膝関節の屈曲角度を獲得するためにはSPFの柔軟性に注目していく必要があると思います。
また、SPFが充分に伸張できるように大腿四頭筋をはじめ、周囲の軟部組織の柔軟性を獲得することも重要だと考えます。
膝関節の屈曲制限の原因の1つとなる組織であると考えて、臨床に活かせたらと思います。
投稿者:天鷲翔太