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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2019年1月6日日曜日

【文献紹介】神経根性腰痛について

あけましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いいたします。
本日は神経根性腰痛の病態について一部紹介させていただきます。




神経根性腰痛は、腸骨稜よりも頭側の傍正中部に比較的限局した片側性腰痛で、 神経根障害による下肢痛を合併しているのが特徴とされています。神経根性腰痛は単一椎間の神経根ブロックで消失することから、その発生や伝達経路はブロックされた神経根に集約されていると考えられています。

腰部脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアなどの腰仙椎部変性疾患による腰下肢痛を有する症例に対し、罹患神経根の神経根ブロックにより、下肢痛のみならず腰痛も消失する場合があり、腰痛のみの症例に対して神経根ブロックを行うと腰痛が消失する症例が存在すると報告されています。これらの事実は,神経根自体が腰痛の発生源になっている可能性を示唆しているということになります。

神経根性腰痛の存在を示唆する解剖学的背景としては、洞脊椎神経と脊髄神経後枝の存在があげられます。洞脊椎神経は、椎体後方の靭帯や椎間板の最外層の線維輪に分布して椎体や椎間板の知覚を司っています。また、脊髄神経後枝は、椎間関節、腰椎背筋群に分布して、それらの支持組織の異常を腰痛として伝達する役割があるとされています。後肢外側枝は、髄節性に存在する多裂筋に分布していることから、脊髄神経後枝の障害により髄節性の腰痛が出現する可能性があるとされています。

神経根性腰痛は、症候学的に類似点を有する椎間関節性腰痛や椎間板性腰痛との鑑別が必要です。まず、椎間関節性腰痛と神経根性腰痛を比較すると、両者には「片側性で傍正中部に限局した痛み」という類似点があります。 しかし、椎間関節の神経支配は2髄節支配であるといわれていることから、椎間関節性腰痛に対して単一神経根のみをブロックしただけでは疼痛の伝達がすべて遮断されることはないと考えられます。一方、椎間板性腰痛については、下位腰椎の椎間板の神経支配は洞脊椎神経が両側性に存在することや最近の研究で中枢への伝達経路が神経根経由と交感神経幹経由であることが判明しています。
これらの理由から、椎間板性腰痛は片側の神経根部ブロックのみでは椎間板由来の疼痛の伝達を遮断することはできないと考えられます。

理学療法士がブロックを行うことはできませんが、医師が行ったブロックの情報は重要とな所見となります。そのため初回評価に入る前には必ずチェックするよう心がけています。医師がブロックをしても腰痛が改善せず、病態が明確でないまま運動療法の指示が出るケースも多く経験します。腰痛症例をみていくには理学療法士の立場からも医師に対して「このような所見があり、○○由来の腰痛が考えられるためここにブロックをしてほしい」と言えることも重要と考えます。そのためには信頼関係も必要となるため、もっと勉強して、医師とも積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思います。


投稿者:大渕篤樹

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