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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年10月15日月曜日

【文献紹介】肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証

今回は健常肩と拘縮肩で肩甲胸郭関節の運動パターンと筋活動を比較、検討した文献を紹介させていただきます。


長谷川聡他:肩甲胸郭関節を中心とした肩甲帯の運動パターンと機能改善の質的検証.理学療法学41(2):86-87,2014


本研究は筋電図と3次元動作解析装置を用いて運動パターンを解析されています。
対象は健常人17名と拘縮肩症例15名で、方法は4秒で上肢を挙上する運動を連続で5回行い、その時の肩甲骨の運動と筋活動を測定し、上肢挙上10°毎に肩甲骨の角度と平均筋活動を算出しています。
測定筋は、僧帽筋上部線維、僧帽筋下部線維、前鋸筋です。
拘縮症例においてはリハビリを施行し、3ヶ月と6ヶ月に肩甲骨の運動パターンと筋活動について再評価しています。

結果は健常群が挙上初期では肩甲骨は前傾し、その後挙上角度が増加するのに伴い、後傾していき、挙上100°で後傾位となり、その後も大きく後傾方向へ大きく運動する結果となりました。上方回旋に関しては30°120°において直線的に増加しました。
筋活動は僧帽筋上・中部線維、前鋸筋は上肢挙上に伴い、直線的に増加し、挙上110°付近から僧帽筋上部線維はプラトーになり、下部線維と前鋸筋に関しては活動が急激に高まる結果となりました。

拘縮群における肩甲骨運動パターンは肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋、後傾運動の欠如が多くの症例で認めました。
筋活動パターンは僧帽筋上部線維の過剰な筋活動、下部線維と前鋸筋の筋活動の低下を認めた症例を多く認めました。
また、拘縮群に対して肩甲骨機能のトレーニングを集中的に実施した結果、初回に認めた僧帽筋上部線維の過活動と僧帽筋下部線維の低活動が6ヶ月後には僧帽筋上部線維の活動は抑制され、下部線維の活動が増加しました。

筆者は健常者の結果から上肢挙上初期〜中盤にかけて肩甲骨上方回旋を担う僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋をバランスよく働かせる必要があり、上肢挙上最終域の獲得には下部線維と前鋸筋の十分な筋力活動が必要であると述べています。
また、2群を比較すると各挙上角度において僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋の活動パターンが異なり、上肢挙上に必要な肩甲骨の上方回線がスムーズに行えていないことが分かったと述べています。


この文献から拘縮症例において上方回旋、後傾運動の欠如を認め、筋活動においては僧帽筋上部線維の過活動、下部線維と前鋸筋の低活動であることがわかりました。今回はこれら肩甲骨周囲筋に対してトレーニングを施行することで筋活動を正常に近づけ、上方回旋可動域を獲得しています。この文献を読んで、まず肩甲骨の上方回旋、後傾可動域を獲得し、その上で僧帽筋下部線維と前鋸筋の筋活動を高めていく必要があると感じました。

実は私も1ヶ月ほど前にバイク事故にて肩甲骨骨折を受傷し、現在もリハビリの最中です。上肢挙上はかなりできるようになってきましたが、やはり肩甲骨の上方回旋がスムーズに行えず、まだまだ頑張っていかないといけないと感じております。

肩関節における関節拘縮の原因は多くありますが、やはり肩甲帯の動きは重要であることがこの文献や自身の経験にて再認識できました。

投稿者:高橋蔵ノ助


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