本日は股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の機能について書かれた文献を紹介させていただきます。
松木ら:股関節肢位の違いによる股関節外転筋群の筋電図学的解析 理学療法学 第31巻第1号、9-14貢(2004年)
中殿筋、大腿筋膜張筋、大殿筋上部繊維は股関節外転運動に関与すると共に、立位や歩行などの荷重時には骨盤の安定に寄与すると言われています。これら3つの筋は股関節外転作用を有しており、Kapandjiはこれら外転筋群を”deltoid of the hip”として協同して外転運動に関与することを報告しています。しかし、股関節肢位や、股関節外転張力の強度と各外転筋の筋活動との関係は明らかにされていないことから、股関節肢位(非荷重位)の違いが各筋に与える影響について検討されています。
中殿筋各繊維、大腿筋膜張筋については股関節最大外旋位で有意に低下、中間位で最も大きな張力が得られたと報告しています。また、股関節屈曲角が増加するにつれ、張力が低下したとも報告されています。
大殿筋上部繊維に関しては股関節肢位の変化による張力の有意な変化はみられなかったとしています。
股関節外転筋筋力は下肢免荷中や手術侵襲により低下しやすく、歩容にも影響を与えることが多いです。この文献では背臥位で股関節中間位での張力が最も大きいことを報告していることから、股関節の肢位は評価やトレーニング時に考慮すべき点ではないかと考えます。
また、大殿筋の上部繊維については非荷重位での張力は小さく、股関節肢位による影響がほとんどないと報告しています。荷重位と非荷重位での筋活動の違い、アライメントによる筋長の違いから筋の機能の変化がみられるということを念頭に置き、今後の治療・評価に役立てていきたいと思います。
投稿者:小林 駿也