本日は牽引療法について研究されている文献を紹介させていただきます。
小川大輔他:超音波画像を用いた正常膝関節の牽引に伴う理解距離の解析―関節角度と牽引強度の違いが及ぼす影響について―.理学療法学.39(2).102−109.2012
健常成人の膝関節18膝を対象とし、膝関節屈曲角度7項目(0°、25°、35°、45°、55°、70°、90°)と牽引強度2項目(100N、200N)の計14項目とされています。
対象者は背臥位をとり、大腿部を固定し下腿を牽引装置にて10秒間牽引されています。
離開距離に関しては超音波画像診断装置を用い、膝関節内・外側裂隙にプローブを当て、牽引前後の静止画にて測定されています。この離開距離と屈曲角度、牽引強度の指標を用いてTukey法による多重比較検定を行われました。
結果は以下の通りです。
・100Nでの牽引では55°屈曲位では離開距離が0°より有意に大きかった。
・200Nでは25°、35°、45°、55°屈曲位が0°よりも有意に大きく、45°と55°に関しては90°屈曲位より有意に大きかった。
・100N、200Nのどちらに関しても最大離開距離となる肢位は51°屈曲位であった。
関節牽引は、関節拘縮症例になどを対象に行われる治療であり、膝関節だけでなく、様々な関節に対して行われており、私も拘縮症例などに対しては持続伸長などと使い分けることもあります。
牽引療法を行う際は、
・どの軟部組織を対象にして行うのか。
・強度はどの程度が症例に適しているか。
などのことを考察した上で行い、持続伸長でも同じだと思います。
今回の文献から、膝関節に対して有効な牽引角度などを知ることができましたが、あくまでも本症例は主に関節包などの関節構成体をターゲットに行っており、全症例にこの角度や強度が適応ではないことが考えられました。
どの症例には本研究で証明され方法が適応するのかどうかを考察した上で治療に役立てようと思います。
※定例会のお知らせ
来月(9月)は整形外科リハビリテーション学会学術集会が開催されるため、京都支部定例会はお休みとさせていただきます。
次回は10月27日開催予定となっております。
参加申し込みを開始した際は追って当ホームページにて報告させていただきます。
投稿者:高橋蔵ノ助