上殿神経は運動枝という認識でしたが、大腿外側領域に皮神経を伸ばしているという論文を拝読したので紹介します。
【目的】
上殿神経の殿部外側表面への皮膚枝について明らかにすることである。
【対象と方法】
日本人の成人屍体23体(男性15体の26側面、女 性8体の13側面)の観察を行った。臀部表面部位の解剖の際、筋膜を穿通する皮膚枝に色糸で印をつけた。筋膜を注意深く剥がし、印をつけた各枝の起始部を調べた。
【結果】
すべての献体において上殿神経からの皮神経が認められた。
臀部の皮膚神経の分布
臀部の下部と外側は後大腿皮神経の臀部枝(Nn. clunium inferiores)から、上部と背側は仙骨神経の背側枝(Nn. clunium superiores)から供給されている。上部と腹側は腸腰神経から、腹側と外側は外側大腿皮神経からの枝から供給されていた。
5本の枝が大腿筋膜張筋を穿通していた。1本の枝は、中殿筋を穿通していた。
大腿筋膜張筋内の筋内神経分布
これらの穿通性皮膚枝と大腿筋膜張筋への神経との関係を明らかにするために、神経の筋肉内分布を調べた。3本の皮膚枝のうち2本が大腿筋膜張筋を穿通していた。もう1本の枝は筋の背側縁を巻いて筋膜を穿通している。3本の枝が大腿筋膜張筋の背側縁を穿孔した。これらの枝のうち2本は、大腿筋膜張筋への神経が筋に達した直後に筋枝と皮枝に分かれている。もう1つの枝は大腿筋膜張筋への神経から生じ、筋の内側を走り、筋枝を出さずに筋の背側縁を穿通した。
皮膚枝の数
神経から大腿筋膜張筋への皮膚枝はすべての標本で観察された。右側18例中9例(50.0%)、左側21例中7例(33.3%)で1本の皮膚枝が筋背側境界を巻いていた。巻枝のある側では平均3.9本、ない側では4.4本の穿通枝が認められた。
【結論】
上殿皮神経の皮膚枝は、腸腰神経枝(頭側腹側)、外側大腿皮神経枝(尾側腹側)、後大腿皮神経臀部枝(内側背側)、腰神経背側枝(外側背側)神経に囲まれたこの部位の中央に分布している。上殿皮神経の皮膚枝についてさらに詳細な研究が必要である。
投稿者:尼野将誉