COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年8月24日金曜日

Femoroacetabular Impingement患者の術前後における筋力変化の特徴

今回紹介させていただく文献はFemoroacetabular Impingement患者の術前後における筋力変化の特徴についてです。


Femoroacetabular Impingement患者の術前後における筋力変化の特徴
高橋  誠、佐伯  覚、内田 宗志、宇都宮 啓ら:第48回日本理学療法学術大会(名古屋)


本研究ではFAI 手術前および術後の筋力状態と、術後の筋力変化を調査し、現在のリハビリプロトコールの問題点を明らかにすることを目的とされています。

対象はFAI と診断され、手術前後の測定が可能であった14 名( 性別: 男性9 名、女性5 名; 年齢31.6 ± 18.7 歳; 体重 63.5 ± 11.3kg)を対象とし、除外基準は、FAI 両側例、臼蓋形成不全、滑膜性骨軟骨腫症、外傷例とされています。術後3 ヶ月以上経過した患者に筋力測定を実施し、筋力測定はHandheld dynamometer(パワートラックⅡMMTコマンダー、日本メディック社)を用いて両側股関節の屈曲・伸展・外転・内転の等尺性筋力を測定し、それぞれ体重比(N/kg)を求めておられます。なお、測定の再現性を高めるとされる固定用ベルトを使用されており、術前後での股関節機能として、Modified Harris Hip Score(MHHS)を指標とされています。

結果は術前の健側と患側の股関節筋力を比較すると、屈曲(P=0.004)、伸展(P=0.01)、外転(P=0.02)、内転(P=0.03)のいずれの方向においても患側が有意に低下。術後では伸展、外転、内転の健患差はなく、屈曲のみ患側が有意に低下(P=0.02)。患側における術前後での股関節筋力の比較では、外転(P=0.03)、内転(P=0.02)の術後筋力が術前より有意に改善。MHHS は術前 65.2 ± 19.9(点)、術後 90.5 ± 12.0(点)へと有意に改善していた(P<0.01)とのことです。

本研究の結果から、1. FAI 患者の術前股関節筋力は健側と比較して、屈曲、伸展、外転、内転のいずれにおいても低下していること、2. 手術および術後のリハビリによって、伸展、外転、内転の筋力は統計学的に有意差がなくなること、3.患側の外転および内転筋力は、術前と比較して有意に改善すること、4. 術後の股関節屈曲筋力は依然、健側と比較して有意に低下していること示されました。

このことから、筋力だけを考えると術前の屈曲以外の筋力は手術・リハビリによって改善することがわかります。これは術前の状態に関わらず、術後の進め方が大きく関与することがわかり、間違えた解釈をしリハビリを進めると症状が再発する恐れがあります。
今回の研究は筋力に着目されてますが、FAIの病態が慢性的なストレスが股関節唇に掛かり続けることを考えると、術前の拘縮が大きく関与します。関節唇のどこに破綻があるのか、そのストレスを逃がすためにどの軟部組織の拘縮を取るべきなのかを考えなければいけないことを再認識しました。


投稿者:小林 駿也

人気の投稿