今回はACL再建術(BTB法)後における、骨孔内での移植腱の治癒過程について文献を紹介します。ACL再建術後のリハビリにおいて大切なことは、骨孔が安定する期間がどのくらいなのかということではないでしょうか。再建靭帯の強度を含め、これらの安定性を考慮した理学療法を実施する事が理学療法の内容を決める上で、大切になってきます。今回の文献では骨孔がどれくらいの期間で安定するか、再建靭帯がどのくらいの期間で強度を増すかなどが述べられています。
対象
雑種成犬18匹で、BTBを用いてACL再建術を施行
術後1週、3週、6週、12週において4匹ずつ再建膝を試料として用いる。
また、正常のACLと膝蓋腱の骨付着部の観察のために残りの2匹を使用する。
骨孔内の評価項目は以下の5項目となっています。
①移植腱骨片と骨孔の壁との境界面
②移植腱内付着部
③移植腱の腱部分と骨孔壁との境界面
④骨孔内死腔
⑤骨孔内腱実質部
結果
① 術後1週にて移植腱は壊死しており破骨細胞が観察され、術後3週では骨芽細胞が観察され境界面部の結合
が進行していたと報告している。
②正常のACLおよび膝蓋腱骨付着部は、腱(靭帯)、非石灰化線維軟骨層、石灰化線維軟骨層、骨となってお
り、ACL再建術後においてもこの構造は保たれていたと報告されている。
③術後1週にて境界面に線維組織層がみられ経時的に進行し、12週にてはシャーピー線維が観察されたと報告
されている。
④術後1週にて死腔に線維組織が存在し、術後12週時点では線維組織は骨孔の長軸方向に位置する
配列となり腱実質と類似する構造に成熟していたと報告されている。
⑤術後1週にて壊死し、6週まで線維芽細胞の増殖がみられたと報告されている。
以上のことより移植腱と骨孔は術後3週より固定性が上昇し、腱は12週から強度が獲得されていくことが考えられる。移植腱の固定性や強度はBTB・STG法双方のリハビリの際の運動療法の負荷・内容に影響すると考えられており、日々の理学療法を進めていく中で重要になってくると感じました。
これらの知識を再確認し、日々の業務にあたりたいと思います。
長野 正憲・他:骨付き膝蓋腱による成犬膝前十字靭帯再建術後の骨孔内の治癒過程の組織学的検討.日関外誌17(4):315-322,1998.
長野 正憲・他:骨付き膝蓋腱による成犬膝前十字靭帯再建術後の骨孔内の治癒過程の組織学的検討.日関外誌17(4):315-322,1998.