先日、肩鎖関節脱臼のtype3を呈した症例の術後理学療法を担当することになり、鎖骨が上方へ偏位することで軟部組織がどのように損傷されるのか、という点に興味を持ちました。靭帯の損傷はRockwood分類で判断されるものの、筋の損傷は手術所見にて判断されるかと思います。筋の損傷はADLに影響する因子となりますので、着目するべき点かと思います。また、Rockwood分類を見ると、type3と5は転位の程度によって分けられます。Type3と5で筋の損傷に差があるのか疑問に思いました。
そこで、本日紹介する文献はRockwood分類の解剖学的検討についてです。
本文献は献体遺体を用いて、靭帯を切離し鎖骨の遠位端を持ち上げることで、三角筋、僧帽筋、大胸筋の損傷状態を研究されています。また、鎖骨の脱臼に応じた損傷の変化も見られています。
Type3よりType5の方が、三角筋、僧帽筋ともに大きく損傷されており、さらに大きく脱臼すると大胸筋の線維の一部も損傷を認めたとのことでした。
Type3は、観血的治療か保存治療かの判断が要されます。もし、type3の症例で保存療法の適応となったものの筋損傷を認めた場合、伸張ストレスが加わる事や筋が収縮する事は禁忌となるかと思います。また、機能低下が残存する可能性が考えられます。
肩鎖関節脱臼のType3の保存療法の適応となった症例に関しては、超音波画像診断装置等を用いて筋の損傷程度を把握する必要性を感じた論文でした。