投球する上でインナーマッスルの筋力強化は重要である、とあらゆるところで耳にされるかと思います。果たしてインナーマッスル(腱板筋群)の“筋力強化”が必要であるのでしょうか。
いくつかの文献に、障害肩は健側より回旋筋力の低下を認める、と報告されています。しかし、この解釈として、単純に筋が萎縮していることによる筋力低下なのか、筋攣縮による筋力低下なのか、それ以外なのか、という点に疑問がありました。
筋の萎縮に関してはMRIを用いて筋の筋体積を測定し評価する方法が、様々な部位で行われています。この方法を用いて、野球投手の筋体積を比較した論文を本日は紹介します。
長谷川伸ら:野球投手の回旋腱板筋(rotator cuff muscles)と三角筋のMRI法による筋力分析とその筋力特性.体力科学53:483-492,2004
この論文の中に、投手の投球側と非投球側の腱板筋群の筋体積をMRIを用いて評価し比較されています。結果ですが、両者の筋体積に差はなかったとされています。
この結果から投球障害肩における回旋筋力低下の原因として筋萎縮は関連していないことが示唆されるかと思います。この論文の著者も同様の考察をしています。
また、解釈の仕方のひとつでもあります筋攣縮に関しては、臨床において腱板筋群に圧痛を認める症例を経験することから、回旋筋力の低下の1要素ではないかと考えています。
このことから、投球障害肩の回旋筋力低下に対する理学療法として筋力強化より筋リラクセーションを優先する必要があるのではないでしょうか。さっそく、明日からの臨床に生かしていこうと思います。
投稿者:中井 亮佑