本日紹介させていただく文献はX線を用いて腱板断裂症例における骨頭の位置を検討したものです。
山口拓嗣他:肩腱板断裂における上腕骨頭位置の解析.肩関節18(1),1994:95-98
腱板断裂が骨頭支持及び安定化機構としての役割を明らかにすることを目的としています。
対象は腱板断裂が診断された45例46肩、コントロール群として健常成人56例56肩としています。
方法はX線撮影は内外旋中間位と45°外旋位でY viewを撮影します。各座標を定め解析しています。(A:臼蓋中心、B:骨頭中心、C:骨頭頂点、D:烏口突起先端、E:肩峰先端、F:肩峰角、G:肩甲棘と烏口突起基部の交点)
結果はコントロール群では中間位から外旋位で後方やや下方へ移動し、腱板断裂群では単純に下方へしており、移動量は少ない結果となりました。また、DE(CAアーチ)から骨頭中心、EF(肩峰下面)から骨頭中心まで距離を計測すると、中間位、外旋位ともに断裂群のほうが値が小さく、距離が短くなる結果となりました。
腱板は骨頭の求心位を保持する役割があるが、大胆列でも骨頭の上昇、後方移動が見られない症例も多数いました。
断裂群を断裂の大きさで2群に分けて比較すると、棘上筋断裂ではコントロール群と近似した分布を示し、大断裂では分散した結果となりました。
さらに他動挙上90°可否にて2群に分けて検討すると拘縮症例にて有意に上方へ偏位していました。
安静下垂位の状態で腱板が作用しているとは考え難いと述べており、安静位下垂位で骨頭が上方偏位している症例位は、断裂した状態で活動を繰り返すこと後上方拘縮した症例だけが骨頭の上方例として見られると考察しています。つまりAHIを下垂時で検討しているものは断裂そのものよりもそれに引き続き起こる拘縮を見ていることになると述べています。
臨床上、画像所見より肩峰骨頭間距離を確認することは非常に多いと思います。今回紹介させていただいた文献から下垂位の状態ですでに骨頭が上方に偏位している症例においては拘縮が疑われることが分かりました。
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2018年12月24日月曜日
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