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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年4月4日火曜日

【文献紹介】肩関節最大等尺性収縮時の筋活動変化

本日は筋力低下の部位の違いにより肩関節の筋活動がどのように変化しているのかを実際の症例を通して検証された文献を紹介します。



井尻朋人ら:筋力低下の部位の違いによる肩関節最大等尺性収縮時の筋活動変化―開始肢位からの変化量に着目して―、関西理学1533-37,2015

対象は有疾患者2名で、1(症例1)は肩関節脱臼の診断であり、肩甲上腕関節(以下GHJ)を中心に筋力低下が認められるが、著明な関節可動域の制限がない症例。もう1(症例2)は上腕骨骨頭骨折の診断で、観血的骨接合術を施行されており、GHJの筋力よりも肩甲胸郭関節(以下STJ)の筋力の低下がみられる症例です。2名とも疼痛はなく、受傷から半年以上経過しており、症状は安定していたと報告されています。この2肩と症例2の非受傷側、1肩を正常肩として、測定、分析されています。

筋力測定を行う動作としては、肩関節屈曲、1st外旋、1st内旋の3つの運動で、筋電計を用いて筋力を計測されています。計測した筋は先行研究をもとにしたGHJSTJの動作筋で、屈曲は三角筋前部、前鋸筋、僧帽筋上部、中部、下部で、外旋は棘下筋、僧帽筋上部、中部、下部、内旋は大胸筋、前鋸筋とされています。

結果はGHJの筋に注目すると症例1は症例2、健常肩に比べ、開始肢位に対する抵抗負荷時の相対値が小さい傾向にあり、STJの筋に注目すると症例2、健常肩に対して、症例1では小さい値を示す結果となっています。症例2と健常肩の比較では著明な差はみられなかったが、筋力低下が生じている筋では症例2が小さくなる傾向にあったと報告されています。

筆者らは症例1ではGHJで肢位が保持できず、外力はSTJにまで伝達できなかったと考え、症例2ではGHJで肢位が保持できており、隣接関節であるSTJにまで外力が伝わり、筋力が発揮できたと考察しています。
この研究から筋力が低下している部位の違いにより筋力発揮の際のSTJにおける筋活動に差異がみられていたとも考えられています。

肩関節は筋をはじめ、軟部組織を中心に安定している関節であり、運動する関節が安定していない状態では筋力が発揮しづらいことが考えられます。臨床においても腱板断裂、肩関節脱臼など関節の不安定性がみられる症例は少なくないかと思います。自分自身、そのような症例で、どの組織が不安定性の原因となっているのかを評価し、安定させるためにどのようなアプローチをするか悩むことも少なくありません。GHJSTJの評価をし、考察していくことが大切だと改めて感じました。
また、今回は外力に対しての筋活動であり、自発的に筋力を発揮させているものではないこと、疾患の異なる2症例で検討していることも含め、他の文献も参考にして臨床に活かしていこうと思います。


投稿者:天鷲翔太

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