COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2015年7月31日金曜日

肩関節包の支配神経について

こんばんは。
夜分遅くに失礼します。
本日は、肩関節包を支配する神経の解剖について報告されている文献を紹介します。

佐藤達夫ら:腋窩神経と肩甲上神経.Journal of Clinical Rehabilitation 4(1),4-7;1995

 本日は、Journal of Clinical Rehabilitationに掲載されている目で見るシリーズ/臨床解剖から、腋窩神経と肩甲上神経について報告されている文献を紹介します。
 理学療法を行う上で解剖は基本であり、より詳細な解剖を理解していることが重要であると感じます。Journal of Clinical Rehabilitationの目で見るシリーズ/臨床解剖は詳細に解剖を報告されている文献のひとつです。このシリーズは、全身の解剖を実際の人体を用い、詳細な解剖学的知識とともに報告されており、臨床において重要な知識だと思います。
 本文献では、腋窩神経と肩甲上神経の走行を中心に報告されており、肩関節の関節包を支配する関節枝についても報告されています。関節包の伸張度合は上肢の肢位により変化すると報告されています。それに解剖学的特徴を踏まえると、伸張された関節包を支配している神経も刺激を受けることが考えられます。
 解剖をより深く知ることが患者さんへの適切な治療に繋がる一要因となると思います。今後のも解剖をより深く理解し、病態把握や触診、治療などに役立て臨床力を高めていきたいと思います。

投稿者:中井亮佑

2015年7月26日日曜日

膝蓋大腿関節のバイオメカニクス


今回の文献は膝蓋大腿関節のバイオメカニクスについてです。


前達雄・史野根生:膝蓋大腿関節のバイオメカニクス

関節外科 Vol.25  No.11  2006

膝関節は大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節からなり、膝蓋大腿関節は膝蓋骨関節面と大腿骨顆間溝との間の関節です。膝関節で屈曲・伸展運動が起きると、滑り運動が膝蓋骨の関節面と大腿骨の顆間溝との間で生じます。

膝蓋大腿関節は屈伸運動で大腿四頭筋筋力を脛骨に伝える役割を担っています。その際には膝蓋大腿関節にも力が加わることになりますが、大腿四頭筋の張力と膝蓋腱の張力、膝の屈曲角度、運動様態などにより加わる力は変化してきます。

今回の文献では、closed kinetic chainopen kinetic chainのそれぞれで膝蓋大腿関節に力が加わるかが記載されています。加えて、膝の屈曲・伸展に伴う膝蓋骨と大腿骨の接触面が角度ごとにどの程度変化するかも記載されています。

少しでも効果的な治療を提供できるように、しっかりとした解剖学や運動学の知識を身に付けていけるように頑張りたいと思います。

 
投稿者:吉田雄大

2015年7月25日土曜日

第6回 高槻肩と肘のリハビリ研究会に参加してきました

本日は、半休を頂きまして下鴨病院から
永井先生、団野先生、服部先生、吉田先生と私の5人で
第6回高槻肩と肘のリハビリ研究会に参加してきました!!!




☆症例検討が12例

☆藍野大学 熊田仁先生、第一東和会病院 竹田敦先生、辻外科リハビリテーション病院 中津川記代先生によるパネルディスカッション3題、

☆慶友整形外科病院スポーツ医学センター古島弘三先生による特別講演「野球障害:胸郭出口症候群、肘内惻側副靭帯損傷」

と内容盛りだくさんでした!!


パネルディスカッションでは、腱板広範囲断裂の保存療法、関節鏡視下上方関節包再建術後・リバース型人工肩関節置換術後のリハビリテーションの3題でした。
どれも腱板機能が損失している状態で、いかにして肩関節の機能を取り戻すかという内容となり、最新の知見を交えて報告して頂きとても興味深かったです。
どの先生方も、やはり肩甲帯の機能を術後早期から強化しておくことが必要だと述べられていました。

特別講演では、古島先生による野球障害の主にTOSに対する講演をして頂きました。手術中の動画を分かりやすく説明していただき理学療法をしていくうえでも重要な解剖的な内容で大変勉強になりました。また、講演の中で、術前にいくつも病院を通ったが原因不明で、最終的には精神疾患とまで言われてしまった高校生の患者様が紹介されていました。この原因をTOSと診断し、今まで挙上困難だった腕が術後2日目で痛みなく挙上できたという例を見せて頂きました。患者様とそのご家族は号泣だったそうです。先生の患者様に向かい合う気持ちが溢れた講演で、とても刺激を受けました。

当院でも、まだ症例は少ないですが上記の様な症例様を担当する機会があるため、今回の内容をもとに、より良い理学療法を提供していきたいです。

投稿者:一志有香





スクワット時の運動課題の違いによる脛骨前方引き出し力の変化について

 今回はスクワット時の運動課題の違いによる脛骨前方引き出し力の変化についての文献を紹介します。

金井章ら:スクワット時の運動課題の違いによる脛骨前方引き出し力の変化について 
日本臨床バイオメカニクス学会誌 vol 25.2004


前十字靭帯(以下ACL)再建術後のスクワット運動は大腿四頭筋とハムストリングスの共同性収縮などの要素から運動中の脛骨前方引き出し力が制限されることから重要視されています。過去の報告ではスクワット運動中の筋電図の検討や重心位置の変化による筋活動への検討が行われていますが、ACLにかかる負荷の個別の検討は行われていないことに筆者らは着目し、今回の研究ではスクワットにおける運動課題の違いによるACLの負荷に直接影響する脛骨前方引き出し力の変化について検討しています。

 運動課題は、膝関節角度、股関節角度を一定にしたスクワット姿勢で重心移動を行う静的計測と足底全体を接地した状態でのスクワットおよび、踵骨部を約1cm挙上させ母指球で体重を支持した状態での動的計測の2種類で計測されています。結果としては膝関節屈曲角度の増加と重心の前方移動により膝関節前方引き出し力が抑制された結果となっています。重心が前方へ移動することで大腿四頭筋の筋活動が減少し、ハムストリングスの筋活動が高まるために脛骨の前方引き出し力が抑制されると推察されています。今回の文献を読んで、ACL再建術後の患者様に対してスクワット運動を行う際に注意するべき重心の位置を再確認でき、臨床においても意識しなければいけないと強く感じました。

投稿者:服部隼人

2015年7月23日木曜日

鎖骨の動きについて

こんばんは。
本日紹介する文献は上肢挙上時における鎖骨の動きについてです。
宮本 俊之ら:上肢挙上時における鎖骨の動き.整災46(3):890-893,1997

 本日紹介する文献は上肢挙上によって鎖骨がどのような動態をするのか、という点について述べられています。1997年と少し前の文献となりますが、それまで三次元的な運動が分析できておらず正確な報告がなかったことから、新たな分析方法としてX線透視装置を用いて三次元的な運動分析を行っています。
 上肢の挙上に伴い鎖骨が後方回旋及び外転(挙上)するという報告をよく見かけますが、本文献では挙上角度ごとで鎖骨の動きを分析しています。このため、患者さんの上肢の動きと鎖骨の動きをイメージすることで、動作異常を評価することが可能になるかと思います。
 また、本文献において僕が気になったことは、従来の分析方法を取り入れず、新たな方法によって鎖骨の正確な動態を分析した所です。従来の方法に従うと研究を進めやすいと思いますが、何を正確に表現したいのかによって、研究方法は十分に検討するべきだと思いました。
 臨床においても研究においても本文献を参考にしていきたいと思います。

投稿者:中井亮佑

teardrop signについて

本日は、足関節の浸出液と単純X線像との関係性について述べられた文献を紹介します。
 
Richard Towbin et. al:AJR 134:985-990,May 1980
 
 
本文献では、外傷をはじめとした患者の距腿関節のレントゲン所見からわかる、貯留した浸出液の見方や、足部のfad padの解剖について報告されています。
距腿関節の関節包は、前方・後方ともにゆるく、それを補うように内側・外側から靭帯で覆われることで安定しています。外傷等により距腿関節が傷害された場合には、同部に浸出液が貯留するのですが、その形状をteardrop signと呼びます。側面から見た場合、前後方向に膨らみ広がる様子から涙のしずくに似ており名付けられたそうです。
また本論文に記載された図から、teardrop signを認めた場合、関節近傍に位置するfat pad(posterior jaxtaarticular fat pad、pretalar fat pad) の形も変容する様子が分かります。
足関節の外傷後は、この2つのfat padが拘縮に大きく関与すると思うので、注意してみていこうと思います。
 
投稿者:竹下真広

2015年7月22日水曜日

大・広範囲腱板断裂に対するDebeyre-Patte変法の短期治療とその手術適応

前回に引き続き、Debeyre-Patte変法の短期治療と手術適応について記載されている文献を紹介します。






大・広範囲腱板断裂に対しての手術はMcLaughin法、筋移行術や鏡視下パッチなどが報告されていますが再断裂が生じる危険性が高いと報告されています。
この文献では、大・広範囲腱板断裂に対してDebeyre-Patte変法を行い、術前・術中及び術後の断裂腱の評価を行い、短期治療成績について検討されています。
広範囲腱板断裂の治療成績を向上させるためには、術前の腱板断端部位とその質を評価し術中の断端の滑動性が重要だと報告されています。
Debeyre-Patte変法では、腱板の滑動性を腱全体で行うことができるメリットがあります。
今回の文献の結果では、術前腱板断端が関節窩付近であり、脂肪変性がGrade2,3であればDebeyre-Patte変法によって術後腱板修復も良好で機能的にも問題なく、術後経過は良好であったと報告されています。
前回にも記載せて頂いたのですが、Debeyre-Patte変法の考え方は腱板断裂後の症例に対する運動療法を行う上でも重要な考え方だと思います。
如何に腱板に負荷をかけずに理学療法を行えるかで再断裂が生じる危険性を減少させることができるのではないかと考えています。再断裂を生じる症例を減少させていくためにも解剖学や治療過程を考えた治療を行えるよう心がけたいと思います。

投稿者:団野翼

2015年7月18日土曜日

朝の触診勉強会

京都下鴨病院では毎週土曜日の早朝に新人の先生を対象に触診勉強会を実施しています。



膝の触診も終わり、現在は足関節の触診に移るべく、足の骨の触診に取り掛かっています。

徐々に皆、イメージもつきつつ、触診の精度も上がり、骨のトレースが上手くなってきています。

筋や靭帯を触る上で、ランドマークとなる骨を触診出来ることは大変重要な事です。ゆくゆくは治療に役立てられるよう、基礎の基礎からしっかりと積み重ねていこうと思います。


投稿者:為沢一弘

関節荷重下での膝半月板のバイオメカニクス

 今回は関節荷重下における半月板のバイオメカニクスについて述べられている文献を紹介します。
寺田ら:関節荷重下での膝半月板のバイオメカニクス 日本臨床バイオメカニクス学会誌 vol.23 2002

 膝関節の安定性には前・後十字靭帯および内・外側副靭帯が大きく関与しているとの報告が多数散見されます。しかし、それらの報告は関節に荷重を加えない状態で観察されたものが多いです。半月板は大腿脛骨顆の位置関係を保つ働きがあり、関節的に膝関節の安定化に寄与すると考えられ、今回の文献ではこのメカニズムを解明するために荷重時の膝関節の回旋による回旋の中心点と荷重時の前後引き出しを膝関節伸展位、60°屈曲位90°屈曲位の各々で測定されています。

 結果として荷重下での前後方引き出しでは、半月板の前角および後角部を切除することによって、伸展位においては前後方向への膝の動揺性は2倍程度にも増加したと報告しています。膝の回旋については、回旋中心は関節内側寄りに存在することが解剖学的に知られています。今回の荷重下での回旋中心を求める実験からは伸展位ではこの回旋中心を膝内側に保持する機能をもつのは十字靭帯よりも半月板であることが示唆され、特に内側半月板が回旋に対する抵抗力の発生に大きく関与していると考察されています。

 膝関節の安定性に関与する組織の機能に着目し、それぞれがどのように働き、動作につながっているのかを知ることで、正常から逸脱した動作を見極めることができると感じました。また治療対象となる組織の同定にも役立つので、今回のような文献に数多く触れ、知識の向上を目指していきたいです。

投稿者:服部隼人
 

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