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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2018年11月20日火曜日

【文献紹介】大胸筋と小胸筋の筋線維の走行からみた運動療法

今回は大胸筋と小胸筋の筋束の構成について検討された文献を紹介させて頂きます。



荒川高光:大胸筋と小胸筋の筋線維の走行からみた運動療法.理学療法学37(4):203206,2010

解剖屍体を用いて大胸筋と小胸筋の筋束構成を支配神経とともに詳細に観察し、さらに大胸筋と小胸筋の筋束構成を骨格模型上にゴム紐を張って再現し、上肢の肢位を変えた際の筋束構成の変化を調べられています。
結果は以下の通りです。
・大胸筋
鎖骨部線維:鎖骨内側前面から外下方へ走行し、大結節稜の最も遠位に付着している。
胸肋部線維:鎖骨部線維の深層を外側へと走行。胸肋部線維の中でも下から起始する筋束が上から起始する線維よリ後方かつ近位へと停止している。
腹部線維:腹直筋鞘前葉から外側上方へと走行し、後面に折り返る構造をし、筋束がポケット状になっていた。そして、肩関節90°屈曲すると大胸筋の鎖骨部線維と胸肋部線維の間にあったねじれ構造が消失し、腹部線維はほぼ全ての筋束が平行に並んだ。
・小胸筋
小胸筋を貫いている神経を境に上部筋束と下部筋束に分け、発達度や重なり方から見て2つのタイプに分類されています。
Type1
下部筋束が主体となり、上行して烏口突起へと停止する。上部筋束は比較的外側へと走行し、下部筋束の停止腱へと付着しており、ねじれ構造は見られなかった。
Type2
上部筋束は下部筋束の前へと重なり、下部筋束の停止腱の表面を走行し、下部筋束よりも外側へと停止し、ねじれ構造を呈していた。
骨模型でType2の筋束を再現し、ねじれ構造が消失するポジションを探した結果、肩甲骨の上方回旋、前方突出で消失していた。

ねじれ構造が消失した肢位である90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出、上方回旋位は臨床においても多くみます。スポーツ動作時では、その後に大胸筋と小胸筋を強く使用することを必要とする肢位もあり、肩関節90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出・上方回旋位をとり、そこからすべての筋線維の収縮力を動員して、その後の活動を行っているのかもしれないと筆者は考察しています。


90度屈曲位かつ肩甲骨前方突出で大胸筋・小胸筋のねじれ構造が消失し、かつ伸張されることから90°程度の可動域制限の位置要因としてねじれ構造の消失に至っていないことが予測できます。これが可動域制限であった場合、どのような所見が取れるのか機能解剖を踏まえて考えていく必要があると感じました。

投稿者:高橋蔵ノ助

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