本日紹介させていただく文献は夜間痛を生じる症例の所見について検討されています。
岩下哲他:夜間痛を伴う腱板断裂の臨床的特徴に関する検討.東日本整形災害外科学会雑誌26(1):55−58,2014
対象は鏡視下鍵盤修復術を施行された114肩です。
夜間痛あり群となし群で検討しています。
検討項目は患者因子、外傷歴、喫煙歴、糖尿病の有無、自動可動域、断裂形態、罹患期間、インピンジメント徴候です。
結果は、夜間痛の呈したのは56/114肩でした。
2群間で有意差を認めたとはインピンジメント徴候と内旋可動域であったと報告しています。
これら2つで有意差を認めたことについて肩峰下圧の上昇を述べていましたが、健常者においても上肢挙上時に肩峰下圧は上昇することから、筆者は物理的刺激以外の要因を考察しています。
インピンジメント徴候は肩峰下滑液包炎により、滑液包内の血流が増加したこと、これにより炎症反応の侵害刺激により筋スパズムを生じさせるため、内旋制限をもたらしたと考察しています。
加えて、筋組織の虚血状態により発痛物質の生成も夜間痛の一要因であると考察しています。
患者因子に有意差を認めたと報告している文献や、内旋だけでなく、内外旋可動域や伸展可動域に有意差を認めたなど、夜間痛については様々な報告がされています。
夜間痛を認めている要因が炎症などであれば運動療法の適応にはなりませんが、その炎症を引き起こす因子や、夜間痛そのものの要因が軟部組織性の因子であれば運動療法で改善ができます。
夜間痛についていくつも報告がある中で、自分が担当させていただいた患者さんは何によって夜間痛が引き起こされているのか見極める必要があると感じました。
投稿者:堀内奈緒美
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
2017年7月2日日曜日
人気の投稿
-
本日は、半膜様筋-内側側副靭帯にある滑液包(STBと略す)について述べられた文献を紹介します。 Christopher P.et al.:AJR 1996;166:875-877 STBは逆U字型をしており、その深層部は内側半月板後節に隣接し、半膜様筋腱と脛骨内側顆の間に...
-
本日は腰痛診断のpitfallとなりやすい上・中殿皮神経の絞扼 ついて紹介させて頂きます。 殿皮神経の絞扼性神経障害は疾患概念が認知されておらず、MRIでも描出されません。また腰椎疾患に類似した紛らわしい症状を呈することもあり、診断上pitfallとなりや...
-
本日は、腰椎神経根分岐の破格に関する報告を一部紹介させていただきます。 J Bone Joint Surg Br. 1984 May;66(3):411-6. 腰椎椎間板ヘルニアにより障害される神経根は一般的である傍正中ヘルニアでは罹患椎間の1高位尾...
-
James A. Tom,et al:Diagnosis and Treatment of Triceps Tendon Injuries:A Review of the Literature Clin J Sport Med.vol.24,number 3,May 201...
-
今回はTHA術後の脱臼リスクについての文献を紹介させていただきます。 川那辺圭一:THA後の脱臼.関節外科,Vol.31,No.2:32-37,2012 THA術後の脱臼は、THA術後患者全体の2〜10%と報告されています。 脱臼の原...