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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2019年3月6日水曜日

【文献紹介】腰痛と画像所見との関連性

本日は腰痛と画像所見との関連性について一部紹介します。





この論文では、2002年度福島県南会津郡舘岩村(現南会津町)の総合検診を受診した65歳以上の高齢者を対象に、問診により腰痛の有無、腰椎X線撮影により腰椎変性所見を評価し、それらの関連性を検討されています。
その結果、腰痛の有無との間に有意な関連が認められたのは腰椎前弯角とすべりの有無であったが、相関関係は低かったと報告されています。腰痛の有無に影響を及ぼす因子として腰椎変性の関与は小さく、この事実は器質的要因以外の因子が腰痛に関与している可能性を示唆していると述べられています。


腰痛と腰椎MRl所見との関係を明らかにすることを目的とした検討においても、MRI上で認めた形態学的異常は必ずしも症状に直結しないと報告されています。

岡大三朝分院研究報告 72, 66-70, 2002-02-01 腰痛症患者における腰椎MRI画像所見の検討


腰痛、坐骨神経痛、または神経性の間欠性跛行を経験したことがない67名の健常者に対して脊椎のMRI検査を行った研究では被験者の約3分の1が実質的な異常を有することが判明しています。60〜80歳の被験者のうちの1人を除く全員において、少なくとも1つの腰椎レベルの椎間板の変性または膨隆がみられたと報告されています。


J Bone Joint Surg Am. 1990 Sep;72(8):1178-84.
Abnormal magnetic-resonance scans of the cervical spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation.



このように無症候で腰椎の変性を認める症例は多く、画像所見と腰痛との関連に関する報告は様々であり一定の見解が得られていないのが現状だと思います。

私自身、腰痛症例に対する理学療法を行っていく中で画像所見上著名な変性を認めていても症状とマッチングしない症例を多く経験することがあります。
脊柱管の著名な狭窄を認めていても間欠性跛行症状がない症例、重度のすべり、大きなヘルニアや椎間板変性を認めていても下肢症状や腰痛を認めない症例なども多く経験します。また、腰椎の変性を認めていなくても強い腰痛を訴える症例も多く経験します。

腰痛症例を担当させていただく中で私自身感じていることは腰痛も他の関節と同様で、安定していればメカニカルストレスが少なく、不安定であれば正常な動きから逸脱するため何かしらのメカニカルストレスが生じ症状が出やすいと考えます。

変形膝関節症で考えるとKL分類グレードⅠでも強い膝痛を訴える症例もいれば、KLグレードⅣで変形が重度であっても痛みがない症例もいます。腰も特別なものとしてみるのではなく膝と考え方は一緒だと考えます。

変性が軽度で強い腰痛を訴える症例は構造上異常を認めていなくても何かしらのメカニカルストレスがかかる要因があるため痛みが出ていると考えます。このような症例ほど理学療法士がしっかりみていかないといけないと思います。

画像上異常を認めないため非特異的腰痛に分類されるのが現状ですが、機能を改善する理学療法士の目線で画像をみると画像所見の中に評価の一助となるヒントがたくさんあることに気づくことがあります。

投稿者:大渕篤樹


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