この論文では腰椎単純x線での分節不安定性と腰椎MRIでの椎間板変性、椎間関節輝度変化との関係を調査されています。
立位での屈伸機能的撮影で5 mmを超えるすべり、または10°を超える角度の変化は不安定性を示すと報告されています。これらの基準を用いて不安定群と安定群の2群に分け、不安定性と腰椎MRI axialでのT2強調画像上の椎間関節内輝度変化との関連を調査されています。
結果、機能的撮影では63人(67%)の患者は腰椎不安定性を有することが確認され、31人(33%)の患者は不安定性を有さなかった。63人の患者のうち55人の安定群ではMRIT2強調画像で椎間関節内に高い信号強度を示したが、31人の安定群では4人のみが高信号を示し、残りの27名は輝度変化を示さなかったと報告されています。
結果からMRIにおける腰椎椎間関節高輝度像の存在と単純x線機能的撮影で検出された分節不安定性の存在との間に正の関連を示しているため、MRIで椎間関節高輝度を示す症例は腰椎不安定性の疑いを高める必要があると述べられています。
画像所見にて不安定性の評価を行うことは重要と考えます。実際の臨床でも単純x線機能的撮影にて不安定性を生じる症例ではMRIT2強調画像で椎間関節に高輝度像を認め、臨床症状とマッチングする症例を多く経験します。
しかし不安定になる要因は様々です。そのため理学所見など機能的所見をあわせて病態を解釈する必要があると考えます。
例えば、本来可動すべき椎体が拘縮などにより不動の場合は、その上下椎体で過剰な運動が強いられ不安定性を伴いやすくなります。関節構成体や靭帯などの静的支持機構に問題があっても不安定となります。隣接関節の影響を大きく受けるため胸椎や股関節などその他様々な評価も重要と考えます。
つまり不安定性が生じる要因は様々であり病態も異なります。何故そこが不安定になっているのか、その要因を考えなくてはならないと思います。病態によって治療方針は異なるため、どうするかの前にどこを治すか決めていくための評価が重要と考えます。
投稿者:大渕篤樹