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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2019年3月14日木曜日

【文献紹介】腰椎前後方向への動揺性と臨床症状との関連

本日は椎体不安定性と腰痛との関連について報告されている論文を一部紹介させて頂きます。


             臨床整形外科 38巻 1号 (2003年1月) pp.23-30

この論文では、明らかな変性すべりがなく腰下肢症状を呈する810例の患者を対象にL4/5椎間におけるL4の前後方向への椎体動揺性をX線機能撮影を用いて調査され、動揺性の程度と臨床症状との関連について検討されています。
その結果、明らかなすべりのない椎間では4mm以上の椎体動揺性を呈するものは3%しか認めなかったと報告されています。臨床評価では、3mm以上の椎体動揺性を有する症例は、それ未満のものに比べて症状の改善が不良で日常生活の制限も強かったとのことです。また、3mm以上の椎体動揺性は、下肢症状のない場合には腰痛の増悪因子となり、下肢症状のある場合には臨床症状の回復阻害因子となっていたと報告されています。したがって,初診時に明らかなすべりが認められなくても、3mm以上の動揺性を有する症例には治療介入が必要ではないかと述べられています。


川原・富田らは腰椎変性すべり症の治療方針を明確にするために,腰椎変性すべり症の 病期を四肢の関節の病期分類と同様に進行性の変性関節疾患ととらえ「前期」「初期」「進行期」「末期」の 4 stageに分類されています。(図1)


すべりが3mm以下で椎間板が正常かわずかに変性のあるものを「前期」
すべりが5mm以下で椎間板の高さが2/3以上保たれているものを「初期」
すべり5mm以上10mm以下になり、椎間板の高さが1/3以上 2/3以下のものを「進行期」すべりが 10 mm以上、椎間板の高さが1/3以下になると 「末期」
というように分類されています。 




治療方針に関しては上記の病期分類を基本とし、さらに脊椎不安定性の要素を加えて決定していると述べられています。(表1)すべりの程度が極くわずかである「前期」の場合不安定性のないものには後方除圧のみ(non-fusion)の適応とし、不安定性の認められるものには PLFの 適応としていると報告されています。

手術をして構造を治す医師の立場で考えると、この分類は治療方針を決めていくうえできわめて重要と考えます。

しかし明らかなすべりが認められない「前期」の段階で強い腰痛を訴える症例は多く、私自身も経験することがあります。
このような症例は画像上明らかな異常を認めないため安静時痛やred flag signがなければ運動療法の指示がでる可能性があります。
ここで理学療法士が病態分類をして適切な治療がなされないと非特異的腰痛に分類されてしまい苦しむ症例も出てきてしまうと考えます。

画像上明らかな病変を認めなくても運動時痛があるということは何かしら
メカニカルストレスがかかる要因が必ずどこかに潜んでいると考えます。
椎体不安定性に関する研究のほとんどはレントゲン側面像で検討されています。
しかし腰椎の動きを3次元で考えた時には屈曲、伸展のみでなく側屈、回旋の要素も確認する必要があると思います。側面のレントゲン上で明らかな前後動揺を認めなくても、正面像での棘突起の変異や、斜位像で左右のjoint spaceに差を認める症例も多いです。そのような症例は片側椎間関節に何かしらのメカニカルストレスがかかっているかもしれません。

機能を改善していく理学療法士の目線で画像をみることも大切ではないかと最近は感じます。もちろん画像は一所見であり、その他の所見もあわせて病態を解釈することが大切と考えます。

投稿者:大渕篤樹

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