COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2019年3月24日日曜日

【文献紹介】腱板断裂と肩関節拘縮

本日紹介させていただく文献は腱板断裂している症例の中で拘縮している症例とそうでない症例との臨床的特徴を比較検討された文献です。


平野真子他:腱板断裂と肩関節拘縮.整形外科と災害外科43(2),1994:698-702

腱板断裂症例を可動域制限のあるものとそうでないものとに分け、その臨床像および経過を比較することを目的としています。
対象は腱板完全断裂と診断され追跡可能であった55例56肩です。
これらの症例を初診時に可動域制限を認めた拘縮群と可動域制限をほとんど認めなかった非拘縮群の2群に分けています。
検討項目は外傷歴の有無、肩関節造影所見、初診時および追跡時の肩関節疾患治療成績判定基準です。
結果は外傷歴は拘縮群で有意に高値を示しています。造影所見は肩甲下包と長頭腱、関節包をみています。肩甲下包は拘縮群で縮小よりも流出の割合が多く、閉塞した症例を1例認めました。長頭腱では拘縮群で半数以上に異常所見を認めました。関節包では非拘縮群と比較するとinferior pouchの狭小化を多く認めました。
治療は保存療法を34例に行い、22例に手術療法を行っており、日整会肩関節治療成績判定基準は手術療法において追跡時には点数はほとんど差はなく、保存療法においても拘縮群と非拘縮群ともに追跡時の点数がよくなっていました。保存療法を行った群の点数を項目別に見てみると、疼痛は拘縮群と非拘縮群とで差は殆どありませんでした。ADL、総合機能においても改善がみられました。可動域については非拘縮群で悪化の傾向にあり、拘縮群では改善傾向にありました。
これら可動域をそれぞれの動きで見てみると、非拘縮群では初診時の挙上はそのまま維持されており、拘縮群では挙上と外旋はややよくなっているが、内旋は拘縮群も改善がみられませんでした。予後不良を点数別に比較すると非拘縮群では疼痛点数の不変が主な原因であるのに対して、拘縮群では筋力と可動域全体にわたり点数の悪化がみられました。
造影所見より、肩甲下包やinferior pouchの変化が拘縮群においても少なく、長頭腱の異常所見が比較的多かったことから、拘縮の主病態は関節包よりも腱板周辺および肩峰下滑液包にあることが示唆されたと述べています。
手術施行例については追跡時の日整会の点数が拘縮群、非拘縮群間で差がなかったことから拘縮の有無は術後成績に影響を及ぼさないと思われました。この結果については術前より可能な限り可動域訓練を行ったこと、術直前に関節鏡を行い、術中肩峰滑液包は癒着を剥離していたこと、外転装具は90°、術翌日より疼痛内で可動域訓練を実施したためと思われると述べています。保存療法においては内外旋の可動域低下により追跡時に点数が低下しており、これについては内外旋の自宅での訓練を十分に行えていなかった、日常診療においても経時的な推移にあまり注目していなかったことが原因と述べています。

関節鏡所見で拘縮群において関節包の所見が非拘縮群に差がなく、拘縮群の半数に長頭腱に異常所見を認めていました。非拘縮群も腱板断裂しているにもかかわらずこのような所見がありませんでした。なぜ拘縮群にはこのような所見を認めたのか、拘縮する症例には何か特徴があったのか、その他報告と合わせて検討していきたいと思いました。

【文献紹介】腰仙椎固定術後と仙腸関節障害の関連

近年、腰椎固定術後の仙腸関節障害の発生が注目されていると報告されています。
仙骨を含む固定、またLong fusion になるほど発症率が高くなることをUnokiらが報告しているため紹介させていただきます。



Spine (Phila Pa 1976). 2016 Jun;41(12):999-1005. doi: 10.1097/BRS.0000000000001409.
Fusion of Multiple Segments Can Increase the Incidence of Sacroiliac Joint Pain After Lumbar or Lumbosacral Fusion.


腰仙椎固定術後に発症する仙腸関節障害は難治例が多く、内固定を抜去して初めて治療に反応する例が少ないと報告されています。
この研究では、腰仙椎固定術後の仙腸関節障害の発症が仙骨を伴う椎体固定術の数に関連するかどうかを調査されています。

対象は2006年6月から2009年6月までに腰椎または腰仙椎固定術を受けた合計262人の患者です。術前スクリーニング検査にて仙腸関節由来の症状を示さなかった患者を対象として検討しています。これらの患者のうち、28人が術後新たに仙腸関節障害を発症したと報告されています。

結果、仙腸関節障害の発生率は1椎間の固定で5.8%、2椎間の固定で10.0%、3椎間の固定で20.0%、少なくとも4椎間の固定で22.5%であったと報告されています。したがって、発生率は少なくとも3椎間以上の固定術後に有意に高かったと報告されています。ロジスティック回帰分析を行って仙腸関節障害の発生が仙骨を含む固定と固定椎体の数、つまりLong fusion になるほど仙腸関節障害の発症が有意に高くなると報告されています。
そのため固定範囲を最小限にすることが仙腸関節障害の発症を少なくすると述べられています。

実際の臨床において腰仙椎固定術後にPSIS付近または仙腸関節付近に疼痛を訴える症例を経験することがあります。理学所見を確認すると仙腸関節由来の疼痛を疑う所見を確認することがあります。腰仙椎固定術後と仙腸関節障害の関連について考えているとこの論文と出会いました。
機能解剖学的に考えても、腰仙椎固定術後には下肢と体幹の繋ぎ目である仙腸関節には大きなshearing forceが働いていることは容易に理解できます。また、腰椎疾患を有する症例は股関節に拘縮を呈していることも少なくなく、腰椎固定術後には仙腸関節に何かしらのメカニカルストレスが生じやすいことも理解できるのではないかと思います。

腰仙椎固定術後の運動療法を行う理学療法士はこれらを念頭に置いて治療を行必要があると思います。医師は不安定な椎体間に対して究極の安定を求めて固定術後行います。しかし固定術後には上下椎体や隣接関節に負担が生じやすいため、機能を改善する理学療法士は手術のコンセプトを理解し二次的障害を予測しながら理学療法を進めていく必要があると考えます。
病態解釈し手術のコンセプトを理解すると理学療法士として何をすべきかがみえてくるのではないかと考えます。

未熟ながら勉強を続けていきたいと思います。


投稿者:大渕篤樹

2019年3月21日木曜日

【文献紹介】腰椎不安定性とMRI椎間関節内輝度変化との関連

本日は腰椎不安定性とMRI椎間関節内輝度変化との関連についての報告を紹介します。

J Orthop Surg (Hong Kong). 2017 May-Aug;25(2):2309499017718907. doi: 10.1177/2309499017718907.

多くの研究は、椎間板や椎間関節の変性は脊椎不安定性と関連していることが示されています。これらの構造の変性変化によって引き起こされる機械的不安定性は腰痛や神経障害などの臨床症状を引き起こす可能性があります。

この論文では腰椎単純x線での分節不安定性と腰椎MRIでの椎間板変性、椎間関節輝度変化との関係を調査されています。


対象は退行性変性すべりを呈する患者94名です。
立位での屈伸機能的撮影で5 mmを超えるすべり、または10°を超える角度の変化は不安定性を示すと報告されています。これらの基準を用いて不安定群と安定群の2群に分け、不安定性と腰椎MRI axialでのT2強調画像上の椎間関節内輝度変化との関連を調査されています。
     




結果、機能的撮影では63人(67%)の患者は腰椎不安定性を有することが確認され、31人(33%)の患者は不安定性を有さなかった。63人の患者のうち55人の安定群ではMRIT2強調画像で椎間関節内に高い信号強度を示したが、31人の安定群では4人のみが高信号を示し、残りの27名は輝度変化を示さなかったと報告されています。





結果からMRIにおける腰椎椎間関節高輝度像の存在と単純x線機能的撮影で検出された分節不安定性の存在との間に正の関連を示しているため、MRIで椎間関節高輝度を示す症例は腰椎不安定性の疑いを高める必要があると述べられています。

画像所見にて不安定性の評価を行うことは重要と考えます。実際の臨床でも単純x線機能的撮影にて不安定性を生じる症例ではMRIT2強調画像で椎間関節に高輝度像を認め、臨床症状とマッチングする症例を多く経験します。
しかし不安定になる要因は様々です。そのため理学所見など機能的所見をあわせて病態を解釈する必要があると考えます。

例えば、本来可動すべき椎体が拘縮などにより不動の場合は、その上下椎体で過剰な運動が強いられ不安定性を伴いやすくなります。関節構成体や靭帯などの静的支持機構に問題があっても不安定となります。隣接関節の影響を大きく受けるため胸椎や股関節などその他様々な評価も重要と考えます。

つまり不安定性が生じる要因は様々であり病態も異なります。何故そこが不安定になっているのか、その要因を考えなくてはならないと思います。病態によって治療方針は異なるため、どうするかの前にどこを治すか決めていくための評価が重要と考えます。



投稿者:大渕篤樹

2019年3月14日木曜日

【文献紹介】腰椎前後方向への動揺性と臨床症状との関連

本日は椎体不安定性と腰痛との関連について報告されている論文を一部紹介させて頂きます。


             臨床整形外科 38巻 1号 (2003年1月) pp.23-30

この論文では、明らかな変性すべりがなく腰下肢症状を呈する810例の患者を対象にL4/5椎間におけるL4の前後方向への椎体動揺性をX線機能撮影を用いて調査され、動揺性の程度と臨床症状との関連について検討されています。
その結果、明らかなすべりのない椎間では4mm以上の椎体動揺性を呈するものは3%しか認めなかったと報告されています。臨床評価では、3mm以上の椎体動揺性を有する症例は、それ未満のものに比べて症状の改善が不良で日常生活の制限も強かったとのことです。また、3mm以上の椎体動揺性は、下肢症状のない場合には腰痛の増悪因子となり、下肢症状のある場合には臨床症状の回復阻害因子となっていたと報告されています。したがって,初診時に明らかなすべりが認められなくても、3mm以上の動揺性を有する症例には治療介入が必要ではないかと述べられています。


川原・富田らは腰椎変性すべり症の治療方針を明確にするために,腰椎変性すべり症の 病期を四肢の関節の病期分類と同様に進行性の変性関節疾患ととらえ「前期」「初期」「進行期」「末期」の 4 stageに分類されています。(図1)


すべりが3mm以下で椎間板が正常かわずかに変性のあるものを「前期」
すべりが5mm以下で椎間板の高さが2/3以上保たれているものを「初期」
すべり5mm以上10mm以下になり、椎間板の高さが1/3以上 2/3以下のものを「進行期」すべりが 10 mm以上、椎間板の高さが1/3以下になると 「末期」
というように分類されています。 




治療方針に関しては上記の病期分類を基本とし、さらに脊椎不安定性の要素を加えて決定していると述べられています。(表1)すべりの程度が極くわずかである「前期」の場合不安定性のないものには後方除圧のみ(non-fusion)の適応とし、不安定性の認められるものには PLFの 適応としていると報告されています。

手術をして構造を治す医師の立場で考えると、この分類は治療方針を決めていくうえできわめて重要と考えます。

しかし明らかなすべりが認められない「前期」の段階で強い腰痛を訴える症例は多く、私自身も経験することがあります。
このような症例は画像上明らかな異常を認めないため安静時痛やred flag signがなければ運動療法の指示がでる可能性があります。
ここで理学療法士が病態分類をして適切な治療がなされないと非特異的腰痛に分類されてしまい苦しむ症例も出てきてしまうと考えます。

画像上明らかな病変を認めなくても運動時痛があるということは何かしら
メカニカルストレスがかかる要因が必ずどこかに潜んでいると考えます。
椎体不安定性に関する研究のほとんどはレントゲン側面像で検討されています。
しかし腰椎の動きを3次元で考えた時には屈曲、伸展のみでなく側屈、回旋の要素も確認する必要があると思います。側面のレントゲン上で明らかな前後動揺を認めなくても、正面像での棘突起の変異や、斜位像で左右のjoint spaceに差を認める症例も多いです。そのような症例は片側椎間関節に何かしらのメカニカルストレスがかかっているかもしれません。

機能を改善していく理学療法士の目線で画像をみることも大切ではないかと最近は感じます。もちろん画像は一所見であり、その他の所見もあわせて病態を解釈することが大切と考えます。

投稿者:大渕篤樹

2019年3月13日水曜日

【文献紹介】胸郭出口症候群の病態について


本日は胸郭出口症候群の病態について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。





小路ら:胸郭出口症候群の病態について-屍体における観察- 整形外科と災害外科 第30巻 第2274-277 1981.


この文献では屍体22体を用いられ、鎖骨下筋、前中斜角筋とその付着部を観察されています。

筋線維の先天異常については22体の57%に認められており、Roosの分類でtype356が多く、type178は全く見られませんでした。

最小斜角筋の有無については12側に認め、起始部はC7横突起が最も多く、次いでC6に認めました。

腕神経叢との関連についてはほとんどがfibromuscular bandと前斜角筋、中斜角筋との間でC8Th1rootが挟み込まれており、C7が挟みこまれているものも認めました。
type9のみ第一肋骨頸部にて側方から持ち上げられるようにして圧迫されている様子が観察されています。

この文献から斜角筋周囲の解剖学的異常所見や腕神経叢の走行形態について分かりました。
2244側の観察でnormalであったのは19側、両側ともnormalであったのは6例とかなりの高い確率で異常所見を認めていることが分かります。
しかし異常所見があるすべての例で症状が認められる訳ではありません。
病態について理解を深められるように勉強していきたいと思います。



特別講演のご案内

平成30年度 整形外科リハビリテーション学会 特別講演が開催されます。

「肘関節の解剖と最近の知見~内側と外側~」について東京医科歯科大学運動機能形態学分野の二村昭元先生にご講演していただきます。

基礎講演として明舞中央病院の山本昌樹先生、名古屋スポーツクリニックの中川宏樹先生にご講演していただきます。

 日時:2019427日㈯
    1600受付開始
 会場:名古屋コンベンションホール
 参加費:会員2000
     非会員5000
     学生会員無料 学生非会員2000

事前登録は不要です。

職場でお誘い合わせの上、是非ご参加ください。






投稿者:天鷲翔太

【文献紹介】後根神経節に(dorsal root ganglion)の破格

本日は、腰部後根神経節の破格に関する報告を一部紹介させていただきます。




脊柱管には硬膜に囲まれたば馬尾が存在し、馬尾から各椎間孔に向かって神経根が走行します。椎間孔を出たふくらみを後根神経節(dorsal root ganglion 以下DRG)といい、ここには知覚受容器が豊富に存在しています。解部学の教科書で確認すると,DRGは正常では椎間孔の外に位置し,神経根が脊柱管内でうけるようなさまざまな圧迫から護られているのがわかります。



     プロメテウス解剖アトラスより引用


このような解剖学的構造から外側ヘルニアは一般的な椎間孔内ヘルニアと比べて疼痛がきわめて強く、オペになるケースも多いとされています。

しかし、DRGの位置は一定ではないという解剖学的研究が散見されます。
ご遺体でDRGの位置について調査された解剖学的研究では、L5神経根のDRGは内側に偏位し、その吻側端は脊柱管内に位置しており、また、S1神経根のDRGは脊柱管内に位置している例があったと報告されており末梢ほどDRG 頭側に偏位する傾向にあるものの、L5神経根では局在のバリエーシ ョンが著明であったとされています。

このような場合には脊柱管内ヘルニア, 脊柱管狭窄などによってもDRGが圧迫をうける可能性があります。

実際に腰椎椎間板ヘルニア症例の理学療法を担当する中で、椎間孔内ヘルニアや外側ヘルニアでも疼痛の程度は様々であり、一般的な教科書にあてはまらないケースを多く経験します。
MRI冠状断像はDRGの位置もとらえることができるので病態把握をする上で確認する必要があると思います。

本日はDRGの破格に関する論文を紹介しましたが破格に対して理学療法士が何かできるわけではありません。
しかし医師と共通認識をもって病態を把握しているということが大切だと考えます。病態を把握しているということは、理学療法でよくできるもの、できないものも明確になるため自ずと何をすべきか、何ができるのかを考えるようになります。
解剖について今後も勉強していきたいと思います。


投稿者:大渕篤樹

2019年3月12日火曜日

本日紹介させていただく文献はご遺体を用いて膝関節拘縮について検討された文献です。
井上隆之他:ヒト関節拘縮病態の解剖学的観察,解析方法の検討―解剖学実習体による検討―

研究目的は実際に拘縮を呈している解剖学習体から骨格筋やその周囲を肉眼的・組織学的に観察し、系統解剖学や組織学による報告と拘縮の無い対照群と比較することです。
対象は長期臥床により膝関節屈曲拘縮を呈した3解剖学実習体で、対照群として膝関節伸展角度が0°に近い解剖学実習体を用いています。
屈曲拘縮が強い症例には以下のようなものが観察されました。
肉眼的観察
・鵞足部の著明な線維化
・大腿二頭筋と腸脛靭帯間が不明瞭
・関節内が脂肪組織で満たされている
・膝窩靭帯を巻き込んだ癒着
・腓腹筋起始部の線維化
組織学的観察
・外側側副靭帯の密性組織への変化
・関節包の密性結合組織への変化
・関節包の弾性線維の長さおよび数の減少

これらの結果から拘縮しやすい部位が推察できると思います。
長期的に屈曲拘縮を呈している症例を臨床で経験することがあります。
今回の結果から上記にあげた箇所を注目していく必要があると思いました。


【文献紹介】掌側ロッキングプレートにおける抜釘後での可動域制限の原因

本日は橈骨遠位端掌側ロッキングプレート治療後に抜釘術を行い、どの術中操作が可動域の改善に関与したのかを報告している文献を紹介させていただきます。

・対象
男性7
女性29
平均327日で抜釘し,経過観察は平均428
・可動域:術中に手関節、前腕の可動域を測定
術中操作と可動域測定の時期
①尺骨側の抜釘時
②橈骨の抜釘での展開後に尺側手根屈筋腱を剥離時
③屈筋や屈筋腱剥離時
④遠位ロッキングスクリューを抜釘するためプレート遠位を周囲組織と剥離した時
⑤プレート近位部の剥離
⑥プレート抜去時

健側比を麻酔下かつ展開前の可動域と比較し評価

抜釘術により可動域の改善がみられることが報告されていますが、プレート抜去目的に筋腱の剥離操作も行われていることがプレート抜去以外の可動域改善に大きく関与していることが考えられるかと思います。
このことから術後早期から筋腱の滑走操作、癒着・拘縮予防を徹底することの大切さを改めて感じました。
手術によりどのような操作が加えられたのかを知り、術後の理学療法に活かしていくことの重要性を再確認しました。

2019年3月11日月曜日

北海道胆振地震チャリティ講演会の開催





今日は北海道で整形外科リハビリテーション学会京都支部主催のチャリティ講演会が行われました。
テーマは『下肢整形外科疾患における機能解剖学的運動療法に必要な評価と触診』です。

京都下鴨病院と烏丸御池整形外科クリニックから小野志操先生、為沢一弘先生、團野翼先生、服部隼人先生、中井亮佑先生と僕の6名で各テーマにそって講義をさせていただきました。講演会は札幌徳洲会病院、えにわ病院、羊ヶ丘病院の先生方と札幌医療リハビリ専門学校のご協力のもと参加者100人超えの盛大な会でした。


團野翼先生『大腿骨頸部骨折に対する機能解剖学的運動療法』

服部隼人先生『ACL損傷に対する機能解剖学的運動療法』


中井亮佑先生『足関節脱臼骨折に対する機能解剖学的運動療法』

 小野志操先生『機能解剖学的理学療法の考え方-腰痛症例の評価と治療を通して-』

為沢一弘先生『鼠径部痛症候群に対する機能解剖学的運動療法』

佐々木拓馬『膝OAに対する機能解剖学的運動療法』
 
  本講演会の利益は全て日本赤十字社に寄付させていただきました。僕たちが直接復興支援の力になることはなかなか難しく感じます。微力ながらですが復興のお役に立てましたら幸いです。

今回のチャリティ講演会では僕も講師をさせていただくという大変貴重な機会をいただき、多くのことを勉強させていただきました。知識の整理やアップデート、資料作成、話の展開、伝え方、声量や強弱のつけ方など、自分ができたこと、できなかったことを反省して、できなかったことは勉強し、もっと自分が成長できるように努力していきたいと思います。

投稿者:佐々木拓馬


2019年3月10日日曜日

第20回下鴨整形疾患フォーラム

第20回下鴨整形疾患フォーラムが行われました。




講演Ⅰ「ラグビーに生じる肩関節外傷:痛みと機能から考える診断と治療」 
聖路加国際病院 整形外科医長 田崎 篤 先生







講演Ⅱ 「痛みの原因を考えるための整形外科 基礎知識」
トヨタ記念病院 整形外科部長 名古屋グランパスエイト チームドクター 酒井 忠博 先生


田崎先生は肩関節、酒井先生は膝関節をテーマに講義をされました。
医師の講義を聞いていると病態に即して治療方針が決定されているため非常に理解しやすく考え方などとても勉強になりました。

医師が手術によって構造を治した後、機能を改善させるのは理学療法士の役割です。
手術のコンセプトを理解できれば理学療法士としてやるべきことが自ずとみえてくると思いました。 
理学療法士も医師と同じ治療者であるというを自覚を持たなくてはならないと強く思いました。
今回学んだことを明日からの臨床に活かしていきたいと思います。

投稿者:大渕篤樹

2019年3月6日水曜日

【文献紹介】腰痛と画像所見との関連性

本日は腰痛と画像所見との関連性について一部紹介します。





この論文では、2002年度福島県南会津郡舘岩村(現南会津町)の総合検診を受診した65歳以上の高齢者を対象に、問診により腰痛の有無、腰椎X線撮影により腰椎変性所見を評価し、それらの関連性を検討されています。
その結果、腰痛の有無との間に有意な関連が認められたのは腰椎前弯角とすべりの有無であったが、相関関係は低かったと報告されています。腰痛の有無に影響を及ぼす因子として腰椎変性の関与は小さく、この事実は器質的要因以外の因子が腰痛に関与している可能性を示唆していると述べられています。


腰痛と腰椎MRl所見との関係を明らかにすることを目的とした検討においても、MRI上で認めた形態学的異常は必ずしも症状に直結しないと報告されています。

岡大三朝分院研究報告 72, 66-70, 2002-02-01 腰痛症患者における腰椎MRI画像所見の検討


腰痛、坐骨神経痛、または神経性の間欠性跛行を経験したことがない67名の健常者に対して脊椎のMRI検査を行った研究では被験者の約3分の1が実質的な異常を有することが判明しています。60〜80歳の被験者のうちの1人を除く全員において、少なくとも1つの腰椎レベルの椎間板の変性または膨隆がみられたと報告されています。


J Bone Joint Surg Am. 1990 Sep;72(8):1178-84.
Abnormal magnetic-resonance scans of the cervical spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation.



このように無症候で腰椎の変性を認める症例は多く、画像所見と腰痛との関連に関する報告は様々であり一定の見解が得られていないのが現状だと思います。

私自身、腰痛症例に対する理学療法を行っていく中で画像所見上著名な変性を認めていても症状とマッチングしない症例を多く経験することがあります。
脊柱管の著名な狭窄を認めていても間欠性跛行症状がない症例、重度のすべり、大きなヘルニアや椎間板変性を認めていても下肢症状や腰痛を認めない症例なども多く経験します。また、腰椎の変性を認めていなくても強い腰痛を訴える症例も多く経験します。

腰痛症例を担当させていただく中で私自身感じていることは腰痛も他の関節と同様で、安定していればメカニカルストレスが少なく、不安定であれば正常な動きから逸脱するため何かしらのメカニカルストレスが生じ症状が出やすいと考えます。

変形膝関節症で考えるとKL分類グレードⅠでも強い膝痛を訴える症例もいれば、KLグレードⅣで変形が重度であっても痛みがない症例もいます。腰も特別なものとしてみるのではなく膝と考え方は一緒だと考えます。

変性が軽度で強い腰痛を訴える症例は構造上異常を認めていなくても何かしらのメカニカルストレスがかかる要因があるため痛みが出ていると考えます。このような症例ほど理学療法士がしっかりみていかないといけないと思います。

画像上異常を認めないため非特異的腰痛に分類されるのが現状ですが、機能を改善する理学療法士の目線で画像をみると画像所見の中に評価の一助となるヒントがたくさんあることに気づくことがあります。

投稿者:大渕篤樹

2019年3月3日日曜日

第7回整形外科リハビリテーション学会関西支部合同研修会


3月2日・3日の二日間、姫路で開催された第7回整形外科リハビリテーション学会関西支部合同研修会「膝関節周囲の機能解剖学的触診と治療」に参加してきました。







京都下鴨病院からは中井亮佑先生、永井教生先生、小野志操先生が講義をされました。



                                
              




                 

                     

               


2日間とも実技の時間を多くとっていただき丁寧に触れていくことができました。

治療をどうするかの前に、どこを治すのか決めていくための評価が大切であることを再確認できました。
病態が分かればおのずと治療方針は決まってきます。体表から病態を推察する私たち理学療法士にとっては触診技術がいかに重要であるということを改めて考える良い機会となりました。

この二日間で学んだ知識、技術を明日からの臨床活にかしていきたいと思います。


投稿者:大渕篤樹


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