本日紹介させていただく文献は腱板断裂を伴う拘縮肩に対して鏡視下での所見より病態を検討した文献です。
小松田辰郎他:腱板断裂を伴う肩関節拘縮の病態.肩関節25(2):305-308,2001
腱板断裂に対して手術を施行された136例中、マニピュレーションによって拘縮を解除した後に腱板修復術を施行された26例26肩を対象としています。
マニピュレーション後の関節鏡所見は滑膜の発赤、増生、出血が見られたました。
マニピュレーションによって関節包が破綻したと考えられる部位はRI、AIGHLに接した腋窩関節包実質部です。出血を伴った関節包の破綻が見られ、その組み合わせから2つのタイプに分けられました。腋窩関節包のみ破綻したタイプと腋窩関節包腱板疎部が破綻したタイプに分けられました。
肉眼的所見では肩峰下滑液包と腱板の癒着が確認され、肩峰下滑液包が破綻したり、腱板との癒着が剥離した症例はいませんでした。また、小断裂1例と不完全断裂の3例では癒着は見られませんでした。
マニピュレーション後による観察では、ほぼ全症例で腋窩腔とRIの双方で破綻が見られました。主病変は関節包より腱板周辺および肩峰下滑液包にあるとしています。
肉眼的所見から肩峰下滑液包では癒着や炎症を認めた症例が多く見られたが、癒着のない小断裂や不完全断裂でも肩関節拘縮が生じるものもありました。
マニピュレーションにて肩峰下滑液包の破綻がなかったことから、肩峰下滑液包以外の部位に拘縮があると推察しています。
棘上筋前方繊維が破綻した症例で腱板疎部の破綻が少ない症例も存在しました。これは、腱板の5層構造のうち、1・4層はCHLであり、棘上筋前方線維と交差しているため、すでにCHLの損傷がすでに生じていたと筆者は考察しています。
本研究より腱板断裂を伴う拘縮症例における拘縮の要因は関節包内に存在することが明らかとなったと述べています。主たる要因はAIGHLに接する関節包実質部と腱板疎部であり、腱板断裂がすでに腱板疎部に及ぶものでは腱板疎部の関与は少ないものと考えられたと述べています。
拘縮肩において腱板疎部、とくにCHLの関与が報告されています。
今回紹介させていただいた文献から腱板疎部が破綻していても拘縮の強い症例がいることがわかりました。その症例は関節包由来の拘縮であることもわかりました。腱板疎部に対する運動療法と関節包に対する運動療法はアプローチ方法が違うため、腱板疎部由来なのか、関節包由来であるのか見極めることは拘縮肩症例の運動療法において非常に重要であると感じました。
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2018年9月30日日曜日
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