今回は、膝窩部痛の発生機序を、膝窩筋の位置と機能から見た文献について紹介させて頂きます。
国中優治ら:膝窩筋の位置と機能からみた膝窩部痛の発生機序 第41回日本理学療法学術大会2006年4月29日
対象は、某大学院の研究分野の御遺体で、大腿骨・脛骨の可動性が充分保証されている右膝1関節を用いて行われており、検証内容は以下の通りとされていました。
1)脛骨に対し大腿骨を最大伸展位から最大屈曲位に可動し、その際の膝窩筋腱の動態及び筋が伸張し始める膝関節角度を計測した。
2)脛骨に対し大腿骨を内外旋し、膝窩筋腱の緊張を観察した。
3)膝窩筋腱の起始部を大腿骨外側顆部にて精査した。
結果は
1)0°から60°屈曲では後下方から上前方に斜走する膝窩筋腱が長軸方向に伸張された。60°から100°屈曲では膝窩筋腱は伸張されず、大腿骨外側顆部の転がりにて起始部が後方移動し、腱の長軸が垂直位となった。その後弛緩状態が120°まで続き、120°から最大屈曲位では、大腿骨外側顆部の回転軸を中心に膝窩筋腱起始部が上方に移動し垂直方向に伸張された。
2)膝窩筋は大腿骨の脛骨に対する内旋で緊張し、外旋にて弛緩した。
3)膝窩筋腱起始部は、大腿骨外側顆部膨隆部にある回転軸(LCL付着部)の下方であった。
と報告されています。
今回の研究から、膝窩部痛は膝窩筋が伸張されやすい初期屈曲時と最終屈曲時で生じやすいと示唆されています。
膝窩筋に関しての研究はこの他にも多数あり、今後もさらなる解剖の知識を身に付け、臨床現場で活かしていきたいと思います。
投稿者:高橋 蔵ノ助