今回は献体を用いた、膝関節後外側支持機構と後十字靭帯(以下PCL)の内反制御機能について検証された文献を紹介したいと思います。
須田 康文ら:膝関節後外側支持機構および後十字靭帯の内反制御機能について 日本臨床バイオメカニクス学会誌、Vol.21,2000.
この研究では新鮮凍結屍体膝12関節(男性8、女性4)を、各関節を自由度5の運動を許容する作者ら考案の実験装置に固定して使用しています。また、膝関節0°、15°、30°、60°および90°それぞれにおける前後方向、内外旋、内外反中間位を決定し、各屈曲角度ごとに重錘および滑車を用いて12Nmの内反トルクを負荷し、その際に生じた大腿骨の前額面に対する回旋量を膝関節内反量と定義して計測されています。内反制御機能を評価する組織としてはPCL、後外側支持機構を外側側副靭帯(以下LCL)とPLC(後外側複合体)の2つに分けて観察しています。
また、靭帯を切離する順番をLCL→PLC→PCL、PLC→PCL→LCL、PCL→LCL→PLCの3つのグループに分けて、観察しているとも報告されています。
結果は、LCLのみ全可動域で内反量の増加を認め、特に0°から60°での範囲で大きく内反量の増加を認めています。PCL、PLCのみの切離では大きく内反量は変化せず、PCL、PLCの両方を切離した時は屈曲90°で内反量の増加を認めたが、変化量は小さかったと報告しています。
また、LCLの切離が加わると全グループで内反量の有意な増加がみられ、LCL切離後のPCL、PLCの切離で有意に内反量が増加することも報告しています。
この結果から、膝関節屈曲60°までではLCLが内反制御因子として重要であることが考えられます。また、60°から90°の範囲においてもLCLの機能は重要ではありますが、PCLの切離で内反量が増加していることから、LCLに次いでPCLの内反制御機能が重要であることを示唆していると考えます。
臨床において、変形性膝関節症など内反変形がみられる症例は少なくありません。どの組織により外側の不安定性が出ているのか、評価し、考察していくことは重要であると思います。ストレステストなどを行うにあたって、どの肢位で何を評価しているのかを考えて実施することが重要だと改めて感じました。評価一つ一つの正確性を向上させていくことが病態を解釈する上で重要になるかと思います。
また、今回はPLCとまとめて観察していましたが、PLCのそれぞれの機能についても勉強していきたいと思います。
投稿者:天鷲翔太