本日は、拘縮肩症例に対して行われる授動術の術前と術後の病態を比較されている論文を紹介します。
田畑四郎ら: 拘縮肩のマニプレーション-成績と成績影響因子, 肩関節18(2) :405-409, 1994.
拘縮肩症例に対して運動療法が著効しない場合、肩甲上腕関節の授動術が行われることがあります。授動術を行われる症例の肩関節の特徴を知ることは、授動術を回避する運動療法の立案につながると考えます。
本論文は、非観血的な授動術を行った症例の発症の原因や治療判定による手術成績の検討を行われています。その中で関節造影を用いて関節包の深さを測定されています。関節造影より、腋窩陥凹と前内側関節包は術前と比較して術後に有意に深さは増加していたと報告されています。
結果より、授動術が必要となる症例は腋窩陥凹や前内側関節包の拘縮が存在することがわかります。拘縮肩症例はこれらの部位に拘縮が存在する可能性を推測して運動療法を行う必要があるかと思います。深層にある組織ですので鑑別が難しいですが、表層の組織からひとつひとつ丁寧に評価することで鑑別ができるかと思います。どのような症例が運動療法に抵抗するのか、手術が必要なのか、などを把握することで効果的な運動療法が立案されると思いますので今後も役立てていきたいと思います。
投稿者:中井亮佑