今回、紹介する文献は成長期の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎についてです。
高原政利ら:成長期の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎について 骨・関節・靭帯18巻11号:985-990,2005.11
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)は少年野球の競技者に多く、その罹患率は約2%であると報告されています。対して、上腕骨内側顆裂離は約20%と内側に症状を訴えることが多い傾向にあるようです。しかし、OCDの発生頻度は高くないものの、損傷の程度によっては手術治療の対象となります。初期は自覚症状を訴えないことも多く、医療機関を受診した時点では病期の進行しているケースが多くあるようです。OCDは骨端の成長期に発症するとされていますが、発症時の病態については不明な点も多く、今回筆者らは小頭の骨端線が開存している症例を対象として、その病態を検討しています。
対象はOCDのうち骨端線閉鎖前の症例15例であり、全例男性で年齢は平均12歳3ヶ月でした。OCDのX線分類において透亮型が9例、分離型が6例。初期治療で保存が11例、手術が4例。経過観察期間は平均2.7年でした。検討項目としては①有症期間と発症年齢②内上顆裂離の合併の有無。その他3項目と合わせて5項目で調査しています。
結果は症状出現時の年齢は平均11歳7ヶ月であり、全例に内上顆の異常を認め、内上顆の裂離は14例、1例は変形治癒を認めたと報告しています。内上顆に裂離が生じると投球時の外反が増強する可能性があり、その結果、上腕骨小頭に圧迫力と剪断力が加わりOCDの発症に関わるのではないかと考察しています。
今回の報告から投球時に肘の外側部に疼痛を訴える患者さんに関しては、まず疼痛の病態として、軟部組織由来の疼痛なのか骨性の疼痛なのかを評価することはもちろんのこと、症状がなくても内側部の評価を行う重要性を学びました。どのような形で上腕骨小頭に機械的ストレスが生じるのかを念頭に外側部および内側部、また投球フォームについても指導するべき項目の1つでもあると思いますので、臨床現場で実践していきます。