渡辺泰ら:膝関節後外側支持機構の機能解剖.整形外科バイオメカニクス,13:179-182,1991.
この文献では、冷凍保存されていた御屍体を用いて、膝窩筋の起始部・腱中央部・筋の付着部におけるそれぞれの前縁・後縁(計6点)をマーカーし、屈曲と伸展運動を行った際に、それぞれの点がどの程度移動し、伸張・弛緩されるのかを確認されています。
また、その際に外旋を加えた場合と、内旋を加えた場合における緊張の違いについても検討されています。
結果として、膝関節の屈曲に伴い膝窩筋腱の後縁は弛緩し、筋腹部は大きな変化がみられないのに対して、膝窩筋腱および筋腹の前縁は屈曲に伴い伸張し、外旋を加えるとより伸張されることがわかったと述べられています。また、opliteus muscle with origin from fibular head (OFH)(膝窩筋と腓骨頭を結ぶ線維)が94%のご検体で確認され、その線維は屈曲に伴い弛緩するとされています。
このことから、膝屈曲位では膝窩筋の前方線維が緊張し、伸展位では後方線維とOFHが緊張するため、膝窩筋の機能は総じて屈筋 or 伸筋というよりは、屈曲位・伸展位ともに、脛骨の外旋を制動し、内旋させる機能がメインとなるのではないかと考察されています。
膝窩筋は、動的な機能に加え、後外側支持機構に関与する重要な組織の一つであるとともに、PCLにかかるストレスを軽減させる機能をもつとも言われています。
それだけに膝関節の拘縮やPLRI、PCL損傷などに深く関与する可能性が高いと思われます。膝関節後面に存在する重要な筋であることを念頭に、今後も臨床で注意深く見ていきたいと思います。
投稿者:為沢一弘