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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2023年2月5日日曜日

【論文紹介】手指屈筋腱鞘の解剖学的知識

手指骨折の患者さんを担当する機会があり、手指の解剖について調べています。今回は2つの論文の解剖についての記載部分をまとめます。









Anatomy


指屈筋鞘滑車系は、屈筋腱の正常かつ効率的な機能を可能にする複雑な構造である。この鞘滑車系は、深部の滑膜成分と表層の網膜成分から構成されている。滑車は線維性組織であり、屈筋腱をほぼ取り囲み、線維と骨を連結して、腱を骨に隣接させるように機能する。これにより、筋-腱ユニットから発生する並進力を指骨にかかる回転モーメントに変換することができる。腱鞘は近位から遠位に向かって順に5つの環状滑車(A1~A5)と3つの十字滑車(C1~C3)がある

A2は基節骨に、A4は中節骨に直接付着し靭帯性腱鞘といわれる。A1、A3、A5は、より柔軟で膜性腱鞘のといわれ、主に掌側板に付着し、十字滑車とともに、それぞれ指の屈曲・伸展時にインピンジメントを回する役割をもつ。A1、A3、A5滑車はそれぞれ中手指節関節(MCP)、近位指節間関節(PIP)、遠位指節間関節(DIP)の上に位置している。十字滑車はC1、C2、C3からなり、それぞれA2とA3、A3とA4、A4とA5滑車の間に位置している。A1滑車の近位には掌側腱膜滑車があり,掌側腱膜の横靭帯がLegueuとJuvara膜に付着し,A1滑車の表層と近位の屈筋腱の上にアーチを形成している。A2は大きく重要であると考えられており、A2とA4の滑車は、指や性別に関係なく、同様の生体力学的特性を持つといわれている。

バイオメカニクスの観点では、指の屈曲量は腱の伸展量とモーメントアームに比例する。無傷のプーリーは屈筋腱を指関節の回転軸に近づけ、指の総屈曲量を最大にする。モーメントアームはプーリーの不全に伴って増加し、指の完全な屈曲が得られる前に腱の最大伸展に至る。



手指の屈筋腱損傷Zone 2には深指屈筋腱と浅指屈筋腱の交叉(Chiasma)部があるためその複雑な走行から縫合手術後に高率に癒着を生じ、術後成績が良くなかったことから、No man's landとしてよく知られています。chiasma以外にも、上記のような滑膜組織である腱鞘があれば炎症の波及、拘縮をきたしやすい部位と考えます。A2は大きく滑走幅も必要となる部位ですが、A1.3.5は掌側板と連続し、膜性腱鞘であるため重要と考えます。各レベルにおける腱の評価を見落とさずに臨床に望みます。


投稿者:尼野将誉


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