本日紹介させていただく文献は、肩関節外旋可動域に烏口上腕靭帯が関連しているかを検討された文献です。
中野幸雄他:烏口上腕靭帯のMRIによる評価〜外旋拘縮との関連性について〜.肩関節25(2),2001:235-239
目的は臨床上肩関節の可動域制限の認められる症例に3DMRIを用いて烏口上腕靭帯を評価し、可動域制限おもに外旋制限とぼ関連性について検討することです。
対象は五十肩にて3DMRI検査を施行し、烏口上腕靭帯が明瞭に認められた43例43肩です。このうち11例11肩は有症状と症状軽快時に2回撮影し比較しています。
対照群として肩関節疾患を有しない8例9肩を正常群として比較検討しています。
MRIの水平面より烏口上腕靭帯の厚さと烏口突起−大結節前縁距離を計測しています。
MRI撮影時に測定した肩関節可動域(屈曲、外転、外旋)と烏口上腕靭帯の厚さ、烏口突起ー大結節前縁距離との関係について検討しています。
結果は正常群と疾患群と間で烏口上腕靭帯の厚さ、全可動域に有意差を認めました。疾患群において外旋可動域と烏口上腕靭帯の厚さとの間に相関関係を認めました。
2回撮影をした症例では症状軽快時には有症状期に比して可動域は増加し、烏口上腕靭帯の厚さは減少しました。
疾患群では正常と比較し有意に可動域制限を認め、烏口上腕靭帯の厚さも増加しており、烏口上腕靭帯の肥厚と外旋可動域に相関関係を認めました。このことから烏口上腕靭帯の肥厚が外旋可動域制限に関与していることが示唆されました。
2回撮影した群では症状軽快時には有症状期に比較して可動域は有意に増加し、烏口上腕靭帯の厚さは減少していました。過去の報告から烏口上腕靭帯は炎症を起こしうる組織であることが考えられており、今回の結果を合わせると烏口上腕靭帯は炎症により腫脹が生じ、炎症の鎮静により腫脹が軽減し、烏口上腕靭帯の厚さが軽減したと考えられたと述べています。今回の検討から五十肩の疼痛や可動域制限の増悪、軽快はこれらの可逆的変化が関与していることが推測されたと述べています
症状を有していた時期と比較し、症状軽快時に烏口上腕靭帯の厚さが減少してることは興味深い結果だと思いました。
画像所見ではとらえることのできない程度の炎症も存在するため、外旋拘縮を呈している症例に対してはCHLがどのような病態で疼痛や可動域制限に関与しているのか注意深く見ていく必要があると感じました。
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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
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