本日は梨状筋症候群についての報告を一部紹介させていただきます。

梨状筋症候群は梨状筋によって坐骨神経が絞扼されて起こる症候群で坐骨神経の刺激症状と軽い麻痺症状を呈するとされています。
1928年にYeomanが仙腸関節の炎症に起因する坐骨神経痛を報告したのが最初で、1947年にRobinsonにより梨状筋症候群という名称が初めて用いられました。
このように病名は古くから知られ臀部から下肢にかけての坐骨神経症状が生じる症候群として認識されているものの診断法が確立されておらず欧米などにおいても積極的な治療が行われていないのが現状であると言われています。
この論文では、坐骨神経症状を訴え、診断が確定しなかったあるいは腰椎手術が無効であった患者239例中の162例(67.8%)が梨状筋症候群であったと報告されています。
尾鷲らの報告においても2003年以降の7年間の全下肢神経痛症状の患者3409例の最終診断を調査した結果、診断が確定した2661例中、腰椎椎間板ヘルニアが536例(20%)に対して梨状筋症候群は130例(5%)でその比は4:1であり、決してまれな病態ではないと報告されています。(鷲尾和也ら他:下肢神経痛症状を主訴とする患者の最終診断.日整会誌86.S435 2012)
私自身、実際の臨床においても腰椎MRIに異常はみられませんが坐骨神経症状を主訴とする患者を経験することはまれではないと感じています。
特異的な画像所見や診断基準も確立されていないため症状があっても診断がつかない患者もおられます。坐骨神経症状の原因は腰椎だけではないという認識を多くの理学療法士もっていれば、坐骨神経症状で苦しんでいる何百、何千という患者を少しでも改善できるのではないかと思いました。
投稿者:大渕篤樹